『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイや『名探偵コナン』の安室透など多くの人気キャラクターの声でおなじみのレジェンド声優・古谷徹さんと人気ゴルフ漫画『オーイ! とんぼ』の漫画家・古沢優さんが対談。ゴルフの魅力や仕事について、"人気キャラ"の声で盛り上がった。
画像: ゴルフを始めたのが12年前という古谷徹さん(左)と中学ぐらいのとき父と練習場に行って始めたという古沢さん(右)

ゴルフを始めたのが12年前という古谷徹さん(左)と中学ぐらいのとき父と練習場に行って始めたという古沢さん(右)

古沢 僕、『巨人の星』の頃から、古谷さんの大ファンなんです。星飛雄馬的に言うと、「今日は猛烈に感動」しております(笑)。

古谷 ははは、ありがとうございます。『オーイ! とんぼ』は、川崎のぼる先生の息子さん(かわさき健氏)が原作を書かれているんですよね。

古沢 はい。でも偶然なんです。

古谷 なぜ主人公は「とんぼ」なんですか?

古沢 かわさきさんが言うには、名前を考えていたときに、お母さんに「あなたは極楽とんぼみたい」と言われたそうで。この一言で、「これだ!」と思ったみたいです。

古谷 なるほど! 自分を形容されたものにしたんですね(笑)。

古沢 ところで、ゴルフを始められたのはいつですか?

古谷 12年前、57歳のときです。それまではゴルフなんてオヤジの接待スポーツだと思っていました。当時はウィンドサーフィン、テニス、スキーもやっていて、これ以上遊びの時間を増やしたら仕事をする時間がないと思っていました(笑)。

ただとりあえず、限定販売したガンダム仕様のエナメルのキャディバッグは持っていたんです。あるときゴルフ好きな出版社の役員さんと僕のマネジャーが画策して、クラブのフルセットを送ってきたんです。やらざるを得なくなって、そこから毎週打ちっ放しに通いました。

古沢 すぐにハマりましたか?

古谷 練習場で2回に一度はレッスンプロに習っていましたが、たまにでもジャストミートすると気持ちいいじゃないですか。3カ月後に朝霧ジャンボリーGCでコースデビューして、2、3年の間は年間50回以上行きましたね。特に最初はどんどんスコアがよくなるのが楽しいんですよね。

古沢 わかります。僕が最初にクラブを握ったのは中学くらい。父がゴルフ好きで打ちっ放しに一緒に行っていたんです。あるとき3番ウッドを1本買ってくれて。それで練習していました。とんぼみたいに3番アイアンだったら、もっと上手くなったかもしれません。

古谷 最初にスプーンって、一番難しいクラブですよね!

古沢 アイアンは子どもには重いから、レディース用の軽い3番ウッドを。本格的に始めたのは28歳くらい。漫画の仕事に少し余裕が出てきたので。近くの打ちっ放しのシニアのレッスンプロに教わりました。もう30年になります。

古谷 キャリアが長いですね。僕は30代半ば。ウィンドサーフィンにハマっていましたが、今はやっても年に1、2回に減って、ゴルフとテニス、冬はスノーボードなんです。

古沢 僕は草野球がずっと好きでやっていたんです。今はやめましたけれど。もともと体を動かすことがお好きなんですか?

古谷 僕は5歳の頃に児童劇団に入ってからずっとこの業界にいます。ほとんど友だちと遊ぶ機会がなくて、スポーツもしていなかった。この世界しか知らなくて。『巨人の星』を担当したのは中3のときですが、野球をしたこともなかったんです。

大学卒業後プロダクションに入り、俳優ではなくアニメの声優の仕事に絞っていった頃から、子どもの頃に遊べなかった反動でいろいろとスポーツを始めました。

古沢 リラックスのためでもあるんでしょうね。

画像: 「僕(のベストスコア)は94です。今年のゴルフの目標は、コンスタントに90台を出したいです」by古谷さん(撮影/小林司)

「僕(のベストスコア)は94です。今年のゴルフの目標は、コンスタントに90台を出したいです」by古谷さん(撮影/小林司)

古谷 そうですね。もともとアウトドアが好きなのかな。横浜生まれの横浜育ちなので、海も好きだし。それにやはりこの仕事は暗いスタジオでマイクの前から動けない。その意味で体にストレスがたまる仕事です。

キャラクターが全力疾走しているお芝居でも、一切動いてはいけないわけだから。オフのときはアウトドアで意識的に体を動かすようになりました。リフレッシュしてストレス発散して。

古沢 僕も本当に趣味が多いのでわかります。それでストレスをためないようにしていますから。

古谷 まあ、僕の仕事は人ではなくて自分との闘いです。過去の自分のヒットキャラクターをいかに乗り越えるか、スコアアップさせるかという感じは、ゴルフと通じるかもしれませんね。

古沢 なるほど。漫画家は狭い部屋にこもって描く。ゴルフは思い切り広大な敷地で遊べるので、まるきり逆なのがいいんですよね。通じるものがあるとすれば、漫画は締め切りがあり、ゴルフはハーフ2時間半で回らないといけない。時間の整理が必要なことです。

古谷 そういえば昨年始まった『バーディウィング』というゴルフアニメで元プロゴルファーの役をやらせていただいていますけど、プロデューサーからのオファーがゴルフ場ででした。すると断れない(笑)。

考えてみればゴルフ場でいただいたオファー、2つ3つあるなあ。でも、ゴルフのことを理解しているから役に生かせました。全然知らなかったら、いちいち用語を聞いて調べて理解しないといけないですから。

古沢 やっていないことを表現するのは難しいですよね。

古谷 はい。自分の経験から出てくるもののほうがリアリティがある。『巨人の星』は僕が中3から高3のときまで演じましたが、途中で日高美奈という看護師さんと恋愛関係になります。

僕は体験していなかったし、しかも相手が亡くなってしまう……あのシーンに関しては想像と演出家との話し合いでやるしかないから難しかった。自分の年齢をどんどん超えていっちゃうんですから。

古沢 そうですよね。

古谷 中3のときの星飛雄馬は、自分の体験があるから、それをトレースして演じられる。でもいつの間にか青雲高校に入って、巨人軍に入ってと成長していく。自分より年上を演じるのはやっぱり難しいです。

古沢 聞いている側は全然違和感がなかったからすごいです。でも確かに、漫画を描くうえでも体験したことがないものは難しい。

古谷 とんぼは、ゴルフ上達の参考になる描写がとても多いですよね。「そうか、低い球を打つときは、スタンスを狭くするんだ」なんて。試してみようと思えます。僕はとんぼみたいに球を曲げるのは得意ではないですけど。曲げようとして曲がるんじゃないから(笑)。

古沢 はい、真っすぐ打ちたくても曲がってしまう。原作のかわさきさんはずっとプロを目指して研修生もされていたので、本当に細かいところまで書くんです。その意図をいかに伝えられるかというのを一番のテーマにしています。レッスン的な場面も多いので。

古谷 でもゴルフって、明らかに数字で上達がわかる。絶対自分は上手くなっているんだとわかるからすごく嬉しい。ほかにこういうスポーツはないですよ。

古沢 そうですよね。データはかなり意識するんですか?

古谷 練習場でトップトレーサーをチェックしますし、データは携帯に入っています。それを見てがっかりしたりもするんですけどね。お恥ずかしいんですけど、最近ドライバーで160~180ヤードしか飛ばなくて、むしろスプーンのほうが飛んでいたり。

ドライバーは使って6年になるので昨夏に替えました。ネットの評価で高齢の方でも20ヤード伸びたとあったので、シム2マックスに。最初は戸惑いましたけど確かに飛ぶようになってきた。

でも実は、新しいクラブを使いこなすために本を読んだりして一生懸命練習したことで効果が出たのかも(笑)。バックスウィングで左足が上がるくらいまで体重移動をするようにしたのがよかったんだと思います。

古沢 スキーなんかで体幹がしっかりされているから、まだまだ伸びていくんじゃないでしょうか。

古谷 そうだったらいいですね。でも冬はあまりゴルフしないので、春になってのリハビリが大変。特にアプローチ系の距離感がわからなくなりますね。

古沢 よくわかります。僕は、週1回はラウンドしています。ベストスコアは81ですけど、ゴルフを始めた頃の数字を更新できない。

古谷 僕は94です。今年のゴルフの目標は、コンスタントに90台を出したい。昨年も2、3回出ましたけど、古沢さんと同じでベストスコアが7年前ですから。そういえば還暦の年にスコッティキャメロンのグリップが赤のパターを自分にプレゼントしました。いまだに使っています。

古沢 では僕は今年70台を出すことを目標にします。ラウンド数はどのくらいですか?

古谷 (携帯を調べる)昨年は29回。ちゃんとデータがあります。12年で240回です。

古沢 管理されているのがすごいですね! でもゴルフって飽きないですよね。ひどいスコアを叩いて、やめたいなと思ったりしますけど、一晩寝るとまたやりたくなる。

古谷 悔しいじゃないですか、この前できたことが今日できないとなるとねえ。一進一退だからいい。すごく上手くて思い通りに飛ばせる人はつまらないのではないかとも思うんですよ。

古沢 はははは。

古谷 僕はパソコンが好きでプログラミングもしていたんですけど、バグが出ないとつまらないんです。何が悪いんだろうと悩むのが楽しい。それと同じかもしれません。

古沢 すごい! でもやはり分析なんかがお好きなんですね。(後編へ続く)

※週刊ゴルフダイジェスト2023年1月31日号「新春スペシャル対談 古谷徹×古沢優」より

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