コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」は、スウィング動画をAIによる3D解析技術でデータ化することができる。今回はザ・プレーヤーズ選手権を制したスコッティ・シェフラーのスウィングをゴルフコーチ・北野達郎がAIを使って分析した!

みなさんこんにちは。SPORTSBOX AI・3Dスタッフコーチの北野 達郎です。

今回は、ザ・プレーヤーズ選手権で圧倒的な優勝を果たして世界ランク1位に返り咲いたスコッティ シェフラ―のスウィングをスポーツボックスAIで解析してみましょう。シェフラーは、7歳の頃からテキサス州の実力派コーチのランディ スミスの指導を受けており、その体格や特徴を活かしたスウィングは実に個性豊かです。それでは早速チェックしていきましょう。

画像: 3月16日時点で世界ランク1位のスコッティ・シェフラー(写真は2022年の全英オープン 撮影/姉崎正)

3月16日時点で世界ランク1位のスコッティ・シェフラー(写真は2022年の全英オープン 撮影/姉崎正)

まずグリップは、左右共にスクエアグリップで両手は左足寄りにセットして、インパクトの形をそのまま再現しているポジションです。スタンスは肩幅よりやや広め。ボールポジションは左足内側にセットしています。

画像: 自身のスウィングの特徴に合わせて、ボールポジションを左足寄りにセットしている

自身のスウィングの特徴に合わせて、ボールポジションを左足寄りにセットしている

後述しますが、彼のスウィングの特徴の1つに左足方向への大きなスウェイ(移動)があります。左への移動が多いタイプのプレーヤーは、ドライバーのボール位置は左足寄りがマッチします。逆にこのタイプがボール位置をセンター寄りにしてしまうと、入射角がダウンブローのままボールに当たってしまいますので、フェースの上に当たるテンプラや、スピン量が多く飛ばない現象に繋がりますので、そのような悩みを抱えている方は彼のようにボール位置を左足寄りにセットすると効果があります。

続いてトップを見てみましょう。シェフラーのトップは190センチの身長を活かした非常に高いトップが特徴的です。トップでの両手の高さを計測できる「MID-HANDS LIFT(両手の高さ・アドレスの位置を0とする)」を見ると、48.5インチ(約123センチ)と非常に高く、PGAツアープロの範囲(約90.1~約104.6センチ)と比べてもかなり高いトップですが、CHEST TURN(胸の回転)は100.3度と大きく深い胸の回転が入っていることも分かります。ただ腕だけを高く持ち上げたトップでは、この大きな胸の回転は得られませんので、高く大きなトップはシェフラーの恵まれた体格と柔軟性から生まれていると言えます。

画像: トップポジションは非常に高い。胸が大きく回転しており、右サイドに体重が乗り切らないリバースピポットとなっている

トップポジションは非常に高い。胸が大きく回転しており、右サイドに体重が乗り切らないリバースピポットとなっている

そしてもう1つトップでの特徴は、「胸が骨盤より左にある」という点です。SWAY(左右の移動・アドレスを0とする)のデータを見ると、PELVIS(骨盤)は-0.6インチ(約1.5センチ)右に動いているのに対して、CHEST(胸)は1.2インチ(約3センチ)左に動いています。これは通常「リバースピポット」と言って、右足に体重が乗り切っていない現象として、通常レッスンでは修正されることが多いポイントですが、シェフラーはあえて修正していません。この理由は、おそらく彼が「フロントポスト(利き足が左足)」のタイプであることが考えられます。スウィングタイプには、利き足が左足・両足・右足の計3タイプの選手がいますが、彼は典型的な左足利きのタイプです。このことからも彼がスミスコーチと自分の特徴を理解してスウィングを作り上げていったことが分かります。

続いて切り返し~インパクトを見てみましょう。シェフラーと言えばインパクトにかけて右足を背中側に蹴りながら下半身が左に移動していくのが特徴ですが、切り返しでは胸・骨盤ともに左方向へ移動して、インパクトでは骨盤は7.1インチ(約18センチ)アドレスより左に動いているのに対して、胸やFOREHEAD(頭)はアドレスとほぼ同じポジションか僅かに右に戻っていることが分かります。これはインパクトにかけて下半身だけが左へ動くことで上半身が右に傾くので、左足寄りにセットしたボールへのヘッドの入射角をレベル~ややアッパー気味にする効果があります。

画像: 切り返し(上)では胸・骨盤が左へ移動しているが、インパクトにかけて胸や頭の位置は右に戻り、下半身だけが左に動いている

切り返し(上)では胸・骨盤が左へ移動しているが、インパクトにかけて胸や頭の位置は右に戻り、下半身だけが左に動いている

あまりに右に上半身が傾き過ぎると身体の左サイドが起き上がり、クラブもプレーンより下から寝て下りてしまうのですが、彼は頭と胸がアドレスの位置からあまり右へズレないので、過剰に右に傾いてしまうこともなくレベルに近いアッパーブローで打てています。なので彼はフェードボールが持ち球です。胸の傾きのデータは、CHEST SIDE BEND(胸の左右の側屈)で確認できます。インパクトでの彼の右への胸の側屈は33.3度で、PGAツアープロの範囲(25.3~37.3度)の中に収まっています。

そしてココからはコーチとしての私の見解ですが、「下半身が左へ流れてはいけない」と誤解して、そもそも左足に乗れないアマチュアの方は非常に多いです。普段スポーツボックスAIを使ってゴルファーのデータをチェックすると、インパクトで骨盤の左への移動量はツアープロに比べると、総じて足りないケースがほとんどです。この場合、アイアンではヘッドの最下点がボールの手前になりやすいのでダフリやトップに悩み、下手するとドライバーでもダフるケースがあります。

「下半身が左へ流れてはいけない」ケースは、先述のように上半身が右に傾き過ぎてクラブが寝て下りることで、過度なインサイドアウトの軌道からプッシュスライスやチーピンなどのミスに悩むゴルファーの場合です。ですので、そもそも左足に乗れないタイプのゴルファーは、シェフラーのように右足を蹴って下半身を積極的に左へ移動していく動きを取り入れても良いでしょう。そのほうが軌道もインサイドから下りやすくなりますし、ヘッドの最下点も適正になる効果が期待できます。下半身の左への移動を覚えた後で「過度なスウェイから身体が右に傾き過ぎてないか?」を右への側屈の度合いなどでチェックしていくという流れでスウィングを構築したほうがインパクトの変化が期待できます。なのでシェフラーの左への大きな移動は一見個性的ですが、実はアマチュアの方に大いに参考にして頂きたいポイントです。

今回はスコッティ シェフラーのスウィングについて解説させて頂きました。彼のように自分の体格や特徴、そして打ちたい球筋から逆算してスウィングを構築していくスタイルは、スウィングの形にとらわれず、ゴルフの「上がってナンボ」というスコアメイクの重要性を教えてくれる良い参考モデルだと思います。シェフラーのマスターズ連覇はあるのか? 今から大いに楽しみです!

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