今年の国内女子ツアーに、新たな気持ちで参戦している “黄金世代”のひとり、河本結。シード落ちや米ツアー挑戦など、プロ入りして5年間の頂点やスランプを振り返る。
画像: "準シード"の河本結は、今季はまだ前半戦の出場権のみ。前半の活躍で、復活シードを目指す

"準シード"の河本結は、今季はまだ前半戦の出場権のみ。前半の活躍で、復活シードを目指す

「本当に大変でした。何とかすべり込みました」 

河本結が昨シーズンを振り返って出た偽らざる第一声だ。 

河本は昨年前半、予選落ちを繰り返していた。

「昨年の前半どころか、この3年くらい本当にきつかった。持ち味の攻めのゴルフなんか考えられなかった。そもそも球が思うところに飛ばない。飛距離が落ちたというよりは、曲がるから振れない。一緒に回った人にはわかると思います。どんどん曲がって、振れなくなって……つらかったです」 

しかし、昨年10月のマスターズGCレディースでは優勝争いに絡み、2位タイ。

「あの2位は自分でもよくやったと思います。スウィングを変えながらプレーしていたし、とにかく、ここに上げて、ここに下ろして、ということしか考えてなくて、優勝争いの気持ちではなかったですから」 

それでもこの結果で“準シード”。今年の前半戦の出場権を得た。

「そもそも私の場合は、よかったものを、よりよくしようとスウィングを変えた結果、おかしくなりました。もう総取り替えしたから。だから、『変えない』という勇気も必要なんだなと思いました」 

河本は昨年、いやここ3年で、ゴルフの難しさ、プロの厳しさをいやというほど感じてきた。

「プロは調子が悪くても結果を残さないといけない。ゴルフから離れたくても離れられないというのが現実です。みんな『もういいや』と一瞬思っても結局『練習しないとなあ』となる。でもコーチも難しいと思います。いい選手をよりよくしたいと思って、スウィングを修正するわけですから」 

河本は昨年12月から奥嶋誠昭コーチにアドバイスを受けている。旧知の仲だったが、秋頃に

「ゆいぴー、スウィングやばいかも」

と声をかけられ、ときどき助言を得るようになって今に至る。

「奥嶋さんは、いろいろなプロに鍛えられて、私たちの1ショット1ショットを見逃さないのがすごいんですよ(笑)。それにすごく勉強していて、基本から教わっています」

と自分のスウィング動画を見せてくれた。

「わかります? このヒョイッって手で上げてる感じ。目線がボールからまったく動かないでしょう。体がねじれずに手で上げる。自信のなさから来ています。『当たらないのでは』と怖くてボールから目が離せなくなるし、横目が使えない。当てにいくから安定しなくて散らばる。フィニッシュでも腰が引けていて。

でもほら、最近の動画は、顔が横を向くようになったでしょう。背中、体を回している証拠。腰から動いて、体を使って打っています。今も怖さとの勝負ではあるんですけれど……」 

画像: 昨年4月、河本が予選落ちを繰り返していたころのスウィング

昨年4月、河本が予選落ちを繰り返していたころのスウィング

コーチが新しくなり、ゴルフに対しての熱量や考える量が大きくなったのだという。

「どのコーチも間違ったことは言わない。でも同じことでも伝え方は違うから、私が『これで合っている、こうしよう!』と思えればいい。コーチが何をさせたくてこの言葉を言うのかを私は考えるほうです。

やり取りしながらコーチとの関係を築いていくなかで、もっと自分のことを見るようになる。それがいい方向に行っていると思います。確信はないですけど、感覚はいいし、すごく時間はかかりましたけど、昨年より下がることはないと思っています」 

自分のことを「病んでいた」と笑う河本。

「でも今は話せるようになりました」

それだけ心の整理がついて、戦う準備ができてきたのだろう。 

2019年までの河本結は順風満帆だったように思える。

初めてのQTはサード落ちだったが、「やってやるぞ!」の思い通りステップ・アップ・ツアーで賞金女王に。

プロテストも一発合格し、翌年のレギュラーツアーで初優勝。常に上位で戦っていた。その調子を武器に、夢のアメリカツアーに挑戦することは自然な流れだった。 

しかし河本は「今考えると……」と冷静に分析する。

「行く時期が早かったと思います。もっと地盤を作って自信をつけてからでもよかった。一瞬にして自信が崩れたから……シンプルに自分の技量とメンタル力が足りなかった。でも正直、技術は通用している日本人選手もいますから、引けは取っていないと思いたい。

私がメンタルで片付けたら安直かもしれませんが……環境に対する慣れと周りのサポートというか、そうしてくれるチームを作れずに行きましたから……」 

通訳と2人での参戦も含め、準備不足の面が否めなかった。

「それにQTを通って『どうしよう』と思った時点で気づくべきでした。『通ってしまった』という感じでした」 

心の準備も不足していたのだ。 ここから河本の苦悩は始まる。

「2020シーズンはアメリカに行ってメンタルをやられて自信がなくなって。何もやる気が起きず、6キロくらい瘦せちゃって……すごくきつくて。それで日本に戻ることになったので、頑張らなきゃいけないなと、コーチとも相談をしてとにかく練習をしたんです。

『このスウィングを身に付けたらいける!』と思っていたから。20-21が統合シーズンになって“準シード”の制度もできたので、22年は頑張りたいと思って、オフになったら、さらに練習して」 

コロナ禍もあり、時間もできたのでとにかく練習したという。

「ただそれが、不安を消すだけのもので、全然身になっていなくて。そして2022年を迎え、相変わらず思うようにゴルフができない。やる気がないというより、何をやってもダメ。半分自分を捨てたみたいに思っていました」 

前から本が好きな河本は、自己啓発本を読んだりもした。そして、周りの存在の大きさにも気づいた。

「ゴルフがすべてじゃないと考え始めたんです。人生あっという間。ゴルフをしているときは一瞬だし、今ここで学んでいることは、この先ゴルフが終わったあとの人生に生きるんだろうなと。

私だけ何でこんなに最悪なんだろうと思っていたのが、こんなどん底でも応援してくれるファンや支えてくれる家族やマネジャーさんやトレーナーさんたちがいて、本当に恵まれているな、幸せ者だなと思えるようになった。ゴルフ以外の幸せを考えるようにもなりました」(後編へ続く)

THANKS/フェニックスCC、フェニックスゴルフアカデミー PHOTO/Shinji Osawa

※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月21日号「河本結 特別インタビュー~復活の狼煙をあげる」より

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