今季は前半戦の出場資格で出場する河本結。ツアー2勝目へ弟・力と取り組んだ沖縄合宿や米ツアー再挑戦への想いなどを語った。
画像: 弟・力は310Y以上の飛距離を誇る男子ツアーきっての飛ばし屋。オフは沖縄で兄弟仲良く合宿を行った

弟・力は310Y以上の飛距離を誇る男子ツアーきっての飛ばし屋。オフは沖縄で兄弟仲良く合宿を行った

河本結にはプロゴルファーの弟・力(りき)がいる。

誰もが知る仲良し姉弟だ。力の活躍も励みになった。

「弟が優勝することが自分のこと以上にすごく嬉しくて、そこにも幸せを感じるようになって。だんだん自分の気持ちも変わっていき、ゴルフにやる気が向いてきたし、奥嶋さんにも出会って、こうやっていい状態でいられるようになった。そういう感じです」 

コーチを代えるのも怖かったというが、自分で選ぶ選択肢には責任を持つ。それが河本結だ。

「それに今、私が他の人生を歩むことになっても、その仕事に対してのプロじゃないから。メーカーで働いていたり、眼科で受付をしたりしている友達を見ると、やっぱり、自分の長けているものは、ゴルフしかないと。ここを究めないといけないと思った。それですごく頑張れるようになりました」 

多くのプロたち、いや世界中が暗中模索の状態になったコロナ禍が河本の歯車を狂わせたのではないかと聞くと「コロナは運命だった」ときっぱり。 

神様は耐えられる苦悩しか与えないという。

「でも、この3年、本当にいい経験だったと思えるんです。もう少し笑い話にできるくらい成績を出したいなという感じですけど」 

河本は今、「自信」というもののすごさを感じているという。

「一昨年から自分が勝てるというイメージが湧かなくて。それって私にとって、アスリートにとって一番必要なんです。上位で戦っている選手って、どんなスウィングしていてもパッティングしていても、自信に満ち溢れていますよね」 

この「自信」が取り戻せたとき、河本結らしい「攻めのゴルフ」が見られるはずだ。

「攻めるイコール自信があると思っています。私がいいときはピンにしか興味がなく(笑)、センターなんて考えてなかった。マネジメント的には間違っているかもしれないけど、そうしないと私らしくないし気持ちよくないんです。だから、自信が必要。できると思う自分がいて、それを裏付ける努力があって……そういうなかでプレーしているのを見てもらえたら嬉しいですね」 

弟の力は、姉のことをよく話す。昨夏も、

「今は調子が悪いけど、絶対によくなる」

と言っていた。自慢の姉なのだ。

「私のことめちゃ好きですよ。私も大好きなんで(笑)。オフも力と一緒に沖縄で1カ月くらい合宿しました。私はアプローチとショットの練習が中心。ゴルフの話はもちろんします。『コーチはこう言うけど、私の感覚はこう』『だったらこういうことが言いたいんじゃない』とか。姉弟って言葉ではわからない感覚みたいなものがある。それを聞くと、すごく腑に落ちるから、助かっています」

“黄金世代”として日本の女子ゴルフを引っ張ってきたが、今、さらに若い選手が躍動している。

「人と比べることはしないんです。本当に興味はない。なんで自分がここまで悪いほうに陥ったんだろうということばかりに頭が行っていましたし。“つらい”時期って誰しも通る道なんですよ。アスリートでも、仮に経営者の方でも、ずっと右肩上がりじゃない。でもそれは成長できる一つのターニングポイントかなと思っています」 

画像: 「自信を取り戻せば、私らしさが出ます」と河本結は語る

「自信を取り戻せば、私らしさが出ます」と河本結は語る

自分の性格を「完璧主義」だという河本。

「負けず嫌いというよりは完璧を求めちゃう。自分に対してのプライドが高いんでしょうか。自分に対してすごく期待している感じです。人に頼ることも得意ではないですし。母には、家と外では人格が変わるって言われる。家族には甘えられますからね」 

完璧主義の顔は、話の端々にのぞく。

「私、選手としては自分の目標を全部かなえたいんですけど、たとえば理想の結婚生活は、旦那さんに対する気遣い、周りへの気配りをし、その男性が自分を好きでいて恥ずかしくないと思う女性になりたいんです。それに将来的には会社経営など自分で動かしてもみたい。そして社会に貢献したいんです」 

もう25歳。まだ25歳だ。

「あっという間でした。もっと勉強しないといけないなと思います。プロアマで超一流の方々と回ることも多いんですけど、お話しする内容が、ゴルフのことはもちろん、経済のことなど何もわかってないのは申し訳なくて。

前日に一応、会社のことなど調べて会話ができるようにします。ライバル社のことを言ったりしたら失礼でしょう。完璧に楽しんで帰ってもらいたいんです」 

完璧を求めるがゆえのストレスはたまらないのだろうか?

「けっこう抜いてるつもりですけど……家ではやっぱりダラダラしていますしね。でもお父さんには心配かけないようにきちんとしてるかな。リラックス法は、模索中。ショッピングはすごく好きだけど、自分に対してケチだからなかなかお金を使えない。

力の服ならすぐに買っちゃうんですけどね。ジュニアにも見られる存在になったのできちんとしたものを着てほしい。私好みの服装になってます(笑)」

と言いながら、最近自分のために買った高額なものを聞くと、

「フライトスコープかな。でも力が今使っています」

と笑う。 

NETFLIXで見る番組も『フルスイング』というPGAツアーの選手のドキュメンタリーを挙げる河本。

リラックスのためではなく、自分のゴルフの糧にしているのだろう。 

再びアメリカに挑戦する気はあるのかと聞くと、すぐに嬉しい答えが返ってきた。

「行きたいなと思いますよ。特にメジャーには絶対行きたい。全米女子はもちろん、全英は前に予選落ちしたので。でも今やるべきことは、とにかく自信をつけるというか、自分を信じたい。信じる力をつけてあげるということが大事なのかと思います」

―― 今年の目標は?

「まずは2勝目です。これは絶対にやらないといけない。あとは予選落ちしないこと。常に上位にいる選手になりたい。安定したゴルフを目指したい。上位にいたら、優勝のチャンスは来ますしね」 

昨年12月末から毎日、日記をつけるようにもなった。

「その日考えたことや感じたこと、明日の自分はどうありたい、どう過ごしたい、これだけは成し遂げたいということを書くようにすると、意外にできるものですよ」 

見直すのは今年の冬だ。

「昨年の自分がどう過ごしてきたのか確認できます。書くことで自分に注目を向ける感じです。SNSなんかをしていると、誰がどこで合宿している、どういうスウィングになった、どのコーチになった。友達は今ここにいる、この服かわいいな、などの情報がたくさん入ってくる。自分だけに集中できる時間は必要です。これも完璧でありたいからかなあ(笑)」 

しかし、この3年の経験は、河本の完璧主義をやわらかに進化させている。

「試合に負けるのが怖いのではなくて……試合に出るのが怖い、思うような球が打てない自分を、弱い自分を見るのが怖い感じでした。自分は勝負にめちゃくちゃ強いと思っていたから。でも、そういう弱い自分もいることを知れたのはよかったです」 

完璧を求めるからこそ、奇跡では勝ちたくない。でも、最後の〝ひと転がし〟は自分の力だけではないこともわかってきた。

「勝つのは絶対神様が決めるから。常に上位にいればいつか勝てるだろうという感じです。それで、毎週賞金をもらって、欲しいものを買いたいかな」 

賞金で買ったプレゼントを喜ぶ相手の顔を見て喜ぶ河本の姿を想像しながら、今シーズンの活躍を応援したい。

THANKS/フェニックスCC、フェニックスゴルフアカデミー PHOTO/Shinji Osawa

※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月21日号「河本結 特別インタビュー~復活の狼煙をあげる」より

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