ジュニア時代から仲良しのキム・ハヌルとチェ・ナヨン。輝かしい実績を残した引退後もゴルフと関わっていくのだろうか。対談の後編では、2人の「これから」を詳しく聞いていこう。
画像: 88年生まれ、イ・ボミと"同級生"で仲良しのキム・ハヌルとチェ・ナヨン

88年生まれ、イ・ボミと"同級生"で仲良しのキム・ハヌルとチェ・ナヨン

ハヌル 今後の活動だけど、私は今、芸能事務所(YG・Kプラス)に所属しているから、ゴルフチャンネルだけでなく、テレビ局の企画で活動している。これからもスポーツとエンターテイメントの分野でレッスン解説や芸能活動をやりたいと思う。レッスンは、ジュニア相手は考えていないの。必ず親が出てくるでしょう。

親は子どもを「国家代表」や「常備軍」にさせたい、将来プロ入りさせたいという欲があるから、必ずといっていいほど、コーチに圧力をかけてくるはず。そうすると、ジュニアを教えていても、試合に勝つためのレッスンという方向に行ってしまう。選手時代の自分を思い出して楽しくなくなると思う。現役時代は勝つためのゴルフだったし、試合の緊張感がよみがえってくるのがイヤだなあって。

ナヨン 私もロビン・サイムスコーチやレッドベターに15年以上教えてもらったけど、引退後は私のスタイル、つまり「ナヨン・スタイル」のゴルフを教えたいと思っている。

ハヌル そうね。教えるのは趣味で習いたいという一般ゴルファーに限るかな。もう試合でゴルフするのはコリゴリ(笑)。趣味でのゴルフならばときどきやりたい。ファンとのミーティングやチャリティゴルフは大丈夫。今後日本でのチャリティゴルフがあれば一緒に行きましょう。美味しいものを食べて、ファンの人たちと交流ができれば最高! 日本のファンは最高よ。どんなに成績が落ちても諦めずに応援してくれる。

ナヨン うらやましい。ハヌルは日本で大人気ね。でも私だって負けていないよ(笑)。全米女子オープンで優勝した2012年頃は台湾のヤニ・ツェンと仲良しだったんだけど、台湾開催の「スウィンギングスカーツLPGA」に出場するため、台北の空港に到着すると、数百人のファンが集まってくれたんだよ。台湾では私の後援会を作ってくれて、メンバーは2000人以上。20代から30代の若い女性が多かったのよ。“韓流ブーム”だったのかな(笑)。

ハヌル それにしても(イ・)ボミの人気もすごいよね。5、6年前に、キム・キョンテプロが知人から「同じ故郷出身(江原道)の後輩のイ・ボミのサインをもらってきてほしい」と頼まれたといって苦笑いしたというエピソードを聞いたことがある。

画像: 韓国ソウルにある仏教寺院の奉恩寺でグータッチするハヌルとナヨン

韓国ソウルにある仏教寺院の奉恩寺でグータッチするハヌルとナヨン

ナヨン 私たちが集まる会、「V157の会」には、イ・ボミ、キム・ハヌル、チェ・ナヨン、パク・インビ、申ジエ、イ・ジョンウン5、ユ・ソヨンのほぼ同世代の7人が参加しているでしょ。7人の優勝回数を合計すると「157回」ということで結成されたけど、つい先日も4月出産予定のインビのためにベビーシャワーの会があって皆集まったよね。

ハヌル ナヨンの引退試合(22年10月、韓国での「BMW女子選手権」)では驚いた。3日目( 12 番・パー3)にホールインワンしたでしょう。副賞にBMW(約1億5000万ウオン/ 約1600万円相当)を受け取った。あれを見て、「本当に引退するの?」と思ったファンも多かったよね(笑)。

ナヨン 私自身が驚いたよ。引退試合だというのに、ショットが日を追ってよくなって、パットの感覚も全盛期を思い出したくらい。スコアも初日75、2日目74、3日目が69、4日目も68で尻上がりによくなってきた。最終日では泣いてばかりいたのね。最終ホールでティーショットを打った後、一緒に回っていた後輩のエイミー・ヤン(89年生まれ。米ツアー4勝)から「オンニ(お姉さん)! グッドジョブ!」と声をかけられて涙が止まらなかった。

それからはフェアウェイを歩きながら、涙、涙。最終グリーンの脇では「V157の会」のメンバーが準備した「ナヨン!お疲れ様。これからは好きなことだけをしなさい!」と書かれた横断幕を見て、また涙、涙。最終パットも涙でよく見えなかったくらい。ユ・ソヨン(90年生まれ。11年全米女子オープン、18年日本女子オープン優勝)が花束を渡してくれたときには嬉しくて、また涙だった。

ハヌル そういえば、ナヨンのニックネームは「泣き虫」(韓国語でウルボ)だったね。ナヨンは自分のゴルフ人生に点数をつけるとどのくらいになる?

ナヨン そうね。70点、いや80点くらい? 引退試合には100点満点をあげたい。第2の人生は100点満点でいきたいよね。引退を決意したときにはショットも上手くいかず、ボールがどこへ飛んでいくのか不安な状態でもあったでしょう。精神的な起伏が激しくなったのを感じて、「もうやめどきかな」と。ホテルに戻って涙を流す生活が続くようになって。プロゴルファーはいつか引退の時期を迎える。だから後悔せずに引退することを決めたのよ。

ハヌル 私も引退時期に関しては悩んだな。21年秋に引退宣言をしたとき、母親からは「もう1年、早くするものと思っていた」と言われた。あの頃はコロナ禍で日韓往来が思うようにできなくなったでしょう。合計1カ月間隔離されるから大変な負担になった。ゴルフに対するモチベーションの維持ができなくなったのも引退の理由のひとつ。でも私にとってもベストなタイミングだったから、引退に関してはまったく後悔していないのはあなたと同じよ。

ナヨン そうね。今から第2の人生が待っているしね。私自身、ゴルフを教えるのが好き。これからは自分のありのままの姿を見せていきたい。ユーチューブでゴルフレッスンをしたり、今取り組んでいる「ボディ・プロフィール」(体を引き締めたあと、その姿を写真に収める。韓国で大流行)作りと同時に、実は本を書きたい気持ちもある。本のなかで私のゴルフ人生を語りたいと思っている。

ハヌル いろんな人に結婚についても聞かれるけど、もちろん私も結婚したい。でもいつ結婚できるかわからない。現役時代には忙しいスケジュールのなかで、恋愛も結婚も考えること自体が難しかったでしょう。ときどき会う男友達はいないといったらウソになるけど。昔は長身のイケメンがタイプ、なんて言っていたけど(笑)、今は内面がキレイな人がいいな。ほかの人に配慮してくれる人がいい。でも私自身を振り返って、相手に好かれる魅力的な人間になるのがまず大事だと思っている。

ナヨン 自分に磨きをかけることが大事だよね。現役時代はゴルフ漬けだったから、社会人としての生活がおろそかになった部分があった。ほかの女性のようにショッピングをしたり、映画を見たりする時間をあえて我慢した時期もあったから、引退後の今はいろんなことをしたいので時間が足りないくらい。ところで、7月6日からの全米女子オープンは招待されているので、一緒に行って1週間、楽しみましょう。

ハヌル そうだね。これもナヨンのおかげ。カリフォルニアのぺブルビーチGLで開催される全米女子オープンには歴代優勝者が招待されているけど、一人だけゲストの同行が許されている。そのゲストとして私を指名してくれたのが、とても嬉しかった。

ナヨン 名門コースのサイプレスポイントでゴルフを楽しむことができるかも。これまでのような競争のためのゴルフではなくて、純粋にゴルフを楽しむことができそう。実は私、左利き用のゴルフクラブを買って、ビギナー(初心者)の気持ちになってゴルフを味わってみたいと思っているのよ。これまでゴルフを愛したり、憎んだりしたけど、これからは満足いく人生を生きたい。

ハヌル そうだね。とりあえず、5月に公開予定の「ボディ・プロフィール」作りのために頑張らなくちゃ。プログラムのなかには「スモーキー・メイクアップ法」という独特のメイク法もあるから日本の女性にも参考になると思う。ユーチューブも25 万人を突破したからやりがいがある。ゴルフを始めたとき感じていたトキメキを、引退後の今も感じているの。私たち、第2の人生が幕を開けたばかり。楽しんでいきましょう(笑)。

TEXT/MasakiTachikawa PHOTO/TadashiAnezaki

※週刊ゴルフダイジェスト2023年4月4日号「ハヌルとナヨン 仲良し対談後編」より

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