人生百年時代。ずっとゴルフを楽しみたい皆さん、"骨(こつ)トレ"を知ってますか? 「え、骨ってトレーニングできるの?」と思ったアナタ、骨は鍛えられるんです。スポーツ医学の専門家で「骨トレ」の著書を持つ藤澤孝志郎先生が教えてくれました。
画像: 「骨を健康に保つことが体全体の健康につながります」と藤澤孝志郎先生は語る

「骨を健康に保つことが体全体の健康につながります」と藤澤孝志郎先生は語る

骨といえば、体を支える縁の下の力持ち?

「もちろんそうですが、四六時中脳と連携して記憶力を向上させたり、全身の免疫細胞を活性化させたりして、外敵やガンから身を守る機能を持つ、体の重要パーツです」

と藤澤先生。

脳や体の活性化のみならず、美容からメンタル、長寿までおよそ体のすべてに影響を与えるスーパーパーツなのだという。だから

「骨を健康に保つことが体全体の健康につながります」

というわけ。私たちは日々、歩いたり仕事をしたりゴルフなどスポーツをしたりすることで無意識のうちに骨に衝撃や圧力を与えている。そして

「衝撃や圧力を感知すると、骨はマイナスの電気を発生させます。そして、骨の大事なパートナーと言えるカルシウムはプラスの性質を持っているため、骨から発せられるマイナスの電気に引き寄せられて骨に沈着し、結果、骨が強化されるのです」

という。

「そもそも生命は電気によって動いています。私たち人間もそうで、骨以外の内臓や皮膚、脳や心臓といった器官でも電気を作りますが、大変複雑。圧力や衝撃だけで自然に電気を発生させられる骨は、とても優秀な“発電機”なのです。生み出された電気は体を動かすエネルギーになるほか、骨そのものを新陳代謝して強化する効果をもたらします」

しかし、優秀な発電機・骨も圧力や衝撃がなければ電気を生み出せない。

最近、新しい宇宙飛行士候補が発表となって話題となったが、地球に帰還した宇宙飛行士の骨がとても弱くなっているという話を聞いたことがある人もいるだろう。

「無重力の宇宙空間に長くいたせいで、骨に刺激が与えられないのが主な原因だと考えられています。宇宙飛行士たちは、衰えた骨を回復させるため、地球に帰還するとすぐに骨のリハビリをするんです」

骨のリハビリ? 

つまり、衰えた骨、例えば骨粗しょう症になったとしても回復は見込めるということ?

「はい、骨粗しょう症は数年前までは根治が難しいとされていましたが、最近では“改善できる疾患”になりました。薬も使用しますが、メインは食事療法と骨に良い運動です」

具体的にまず運動については「地に足のついたやり方が大事です」。

どういうことかというと、

「例えばスポーツサイクルは一見ハードに見えますし、大腿四頭筋を鍛える筋トレにはぴったりなのですが、骨トレには向きません。常に体重の大半がサドルにかかるため、脚に圧力がかからず、脚の骨はなかなか育たないんです。私は競輪選手の骨折を診たことがあるのですが、筋肉はほぼ無傷なのに脚の骨がポキリと折れていました。

骨折が治った後、その選手の骨密度検査をしたところ、一般の方と同程度。筋肉隆々でとんでもない脚力を持った競輪選手なら骨も強いだろうと思うものですが、骨と筋肉のバランスがいびつになっていたんです」

前述の「地に足のついたやり方」というのは

「ジョギングやウォーキング、縄跳びなど、体がダイレクトに衝撃を受けるもの」

という意味。ジムに通っているという人もフィットネスバイクばかりに乗っていては筋肉は強化されるものの、骨の強化はできない。

ジムでも屋外でも「地に足のついたトレーニング」を心がけよう。

そのほか、誰でも簡単にできる骨トレを紹介すると……。

骨トレ①手足ぐるぐる回し。

両手の指を浅く組み、手首からスナップを利かせるイメージで10秒、足首は立ったまま片足ずつぐるぐる、これも10秒で両足やる。

骨トレ②その場リズム取り。

椅子に座った状態でかかとを上げ、リズムを取るようにストンとかかとを落として足に衝撃を与えるこれも1日10回程度、靴を履いたままでOKなので、デスクワーク中にもできる。

骨トレ③セルフ力比べ。

両手を胸の前で組み合わせ、全力で5秒間両側から押し合う。1日1回でOKだ。

骨トレ④ウミガメ式腕立てもどき。

ウミガメのように腹ばいになり、両わきに腕を置き、床に手を押し込む運動。グッと押し込んで力を抜いてというセットで10回ほど。腕立て伏せと違って腕の力で体を浮かせる必要はなく、女性や高齢者でも実践しやすい。そのほか、日常生活がそのまま骨トレになることも。

「階段の上り下りは、足の骨の強化に効果てきめん。一段飛ばしなどせず、一段一段しっかり踏むようにしましょう。衝撃の強さより、衝撃を受けた回数が重要なので」

とのこと。

「電車に乗ったらつり革の外側をつかんで5秒力を込めてつかみ続けると、手の骨が強くなります」

日常生活での心がけがトレーニングになるのだが

「骨を鍛えることを常に意識し、1日5秒でもいいので、毎日コツコツ実践することを意識してください」

骨トレだけにコツコツと積み重ねよう。

画像: 骨トレのひとつ「ウミガメ式腕立てもどき」。日常生活でも簡単にできるトレーニングだ

骨トレのひとつ「ウミガメ式腕立てもどき」。日常生活でも簡単にできるトレーニングだ

次に骨トレの効果を高める食材や食事法について。

「骨を作る栄養素には、カルシウム、ビタミンK、ビタミンDなどがあり“骨のゴールデントライアングル”と呼ばれています。なかでもカルシウムは有名ですが、単純にカルシウムを取っていれば骨が強くなるというわけでもありません。カルシウムが骨に吸着されるのを助けるホルモン『カルシトニン』が大切で、その分泌を助けるのが魚です。おすすめはイワシやサバ、サンマなど、骨まで食べられる魚。

特にイワシは“泳ぐカルシウム”と言われるほどで、おすすめです。そのほか、干しエビやサバなどの水煮缶も手軽でいいですね。魚が苦手という人には大豆製品、特に木綿豆腐をおすすめします。絹ごしよりも木綿のほうがカルシウムが多いですよ。イソフラボンの効果で骨からカルシウムが逃げていくのを予防することもできます」

ほかにも骨にいい食材がある。

「同じくカルシウムとイソフラボンを多く含む納豆もおすすめ。木綿豆腐の上に納豆をトッピングしてはどうでしょう。もちろん、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品もいいですね。ときどき“アンチ乳製品”の人が、乳製品を多く摂取するヨーロッパの人は骨粗しょう症率が高いという話をしますが、乳製品偏重にある欧米の食生活と日本の食生活の違いが見過ごされているからだと思います」

しかし、注意したいのは「カルシウムが足りていない」とサプリに頼り切ること。

「カルシウムが足りないからとサプリをたくさん飲んで不整脈を起こした方もいます。骨に吸着できる量を超えたサプリを飲んで血液中にカルシウムが余り、高カルシウム血症になっていたのです。サプリを飲む場合は1日の摂取量を超えないようにしてください。ただ、普通の食事で高カルシウム血症にはなりませんから安心してください」

そしてカルシウムとともに重要な栄養素はビタミンDとK。Dはカルシウムの吸収を助ける。Kは、骨から出るホルモン「オステオカルシン」を突き動かす"エンジン”の働きをする。

オステオカルシンは、血液にのって全身を駆け巡り、脳に働きかけ記憶力をアップさせるほか、筋力、生殖機能などの向上も促すとされる、通称“若返りホルモン”だが、ビタミンKが体内にあってはじめてオステオカルシンが活性化する。ビタミンDを多く含む食品としては

「サケが代表格。それに続くとなるとアジ、ウナギ、カワハギ、ニシンなど。あとはシイタケ。しかもシイタケを日に当てることでビタミンDの含有率がグングン伸びるので、ぜひ生シイタケを日光に15分ほど当てた“日光浴シイタケ”を作ってみてください。市販の乾燥シイタケは機械の熱風で乾燥させているものが多いので、ぜひ自宅で作ってみて」

肉ならレバーがビタミンDを多く含んでおりおすすめという。ビタミンKは、納豆、ホウレンソウ、ブロッコリー、小松菜、ひじきなど。ビタミンKは脂溶性なので「オイル」と絡めるのがいい。特に

「オリーブオイルやごま油がいいですね」

ちなみに前述のビタミンDも脂溶性なので、やはりオイルと一緒だと吸収率がアップする。手軽にできるのがうれしい骨トレだが、最後にNG事項をひとつ。

「ズバリ、タバコです。血管がボロボロになり、血液循環がうまくいかず全身の機能に支障を来します。もちろん、骨にも、です」

男性の場合、筋肉や骨、血液、精力、活力などさまざまな面に影響を及ぼす男性ホルモン「テストステロン」と、骨から分泌される若返りホルモン「オステオカルシン」と関係が深い。

オステオカルシンが減ればテストステロンも減り、特に意欲や気力などのメンタルに影響大。

「40代あたりから悩む人の増える男性更年期障害や、うつ病、肥満(メタボ)、高血圧症などさまざまな弊害が生じます」

骨が弱くなるのは女性というイメージがあるが、テストステロンの分泌を促すオステオカルシンを生み出し、骨を鍛えることのできる骨トレは男性にも重要。「一生ゴルフ」を願う人にも欠かせない。

5秒でできる運動、日常生活、食生活の工夫……“骨太ライフ”を目指し、ぜひチャレンジを!

ILLUST/MasayaYasugahira

※週刊ゴルフダイジェスト2023年4月4日号「ラクラク骨トレ講座」より

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