ゴルフが上手な人とそうでない人には決定的な差がある。それは技術や経験値、マネジメントではなく、実は「考える」か、「考えないか」の違い。「考えて」打つ方法を、メンタルやマネジメントに精通している北野正之プロに教えてもらった。
画像: 「プロとアマチュアでは考える"量"がまったく違うと思います」(北野正之プロ)

「プロとアマチュアでは考える"量"がまったく違うと思います」(北野正之プロ)

「ラウンドレッスンをしているとさまざまな発見があります。そのひとつが考えるか、考えないかです。思うようにスコアが伸ばせないアマチュアは例外なく、何も考えずにボールを打っています」

そう語るのはスウィング理論やマネジメントに詳しい、北野正之プロだ。そんなことを言われると「俺たちだって考えている!」と反論の声が聞こえてきそうだが、

「そもそもプロとアマチュアでは考える“量”がまったく違います。アマチュアはせいぜいフェアウェイに置きたい、ピンに近づけたい、右のOBはダメ、程度ではないでしょか。これではまったく考えていないのと同じで、スコアメイクも難しいのです」

北野プロによれば、プロや上級者のように上達が早い人ほど、距離、風の強さや方向、ハザードの位置、地面の硬さ、球の高低、左右に曲げたケース、このホールは何打で上がれるか、そして自分のショットの調子などを瞬時に考え、決断しているという。

「ゴルフはプレーファストですから永遠に考え続けることはできません。そのなかで考えるべき優先順位を設定しながら、どこを狙い、どんな球を打つのかを決断しているのです」これをルーティンとして持っており、瞬時に考え整理できるのが、スコアメイクの上手いプロや上級者なのです」

アマチュアのなかにはヤーデージさえもわかっていない人がいると北野プロ。距離どころか、OBエリアがわからない、プレー中のホールがパー4かパー5かも知らないアマチュアもいるという。

目の前の一打に集中していると言えば、聞こえはいいが、打つことに一生懸命過ぎて、何も考えていないのだ。

「ミスをした瞬間、大声を出すアマチュアは少なくありません。これも考えていない証しです。というのもプロはあらゆることを考えているので、ミスも想定内ですから大騒ぎすることはないのです」

考え抜くことでやるべきことは見えてくる。そうすれば迷いは消え、覚悟が生まれるのだと北野プロ。それが目の前の一打に集中できるカギとなる。その結果、スコアがまとまる、というわけだ。ゴルフは耳と耳の間、頭で考えるスポーツなのだ。

料理と同じでどれだけ下準備できるか、が大切

「考えて打つ」イメージを説明するとき、北野プロはよく料理のたとえ話をするという。

「プロの料理人は味や温度、皿への盛り付け方などをイメージしつつ、食材の切り方から味つけまで、さまざまな下ごしらえをして料理を仕上げていきます。手間をかけた料理が美味しいのは、その下準備があるからです。料理の下ごしらえこそ、ゴルフに求められる“考え方”に近いのです」

アマチュアは食材を焼いたり、煮たりするだけの簡単な料理しかしていないのだと北野プロは語る。

ただ注意すべきなのが“考え抜く”ではない“考え過ぎ”だ。北野プロによれば、自分のやるべきことを見つけ出せるのが前者なら、考えたことで迷いばかりが生まれてしまうのが後者だという。

「アマチュアはダメなことばかりを考えがちです。OBはダメ、バンカーは入れたくない、ダフリは厳禁といった具合です。リスクを考えることは大切ですが、どうすればOBやバンカーが避けられるのかを考えるべきです。そのために距離は何ヤード必要なのか、どこに打つのがいいのか、そうやって考えを整理していくのです」

ダメなことに意識が向くと心も体も萎縮してしまい、本来のゴルフができなくなるのだ。重要なのは考える順番だという北野プロは、この順番をルーティン化するといい、とアドバイス。

「1打でも少ないスコアを出すのがゴルフですから、まずはハザードをすべて確認します。そしてこのホールは何ヤードなのか、自分の飛距離やその日の調子を考慮し、何打で上がることができるか……といった流れで考えていきます」

さらに考えるべきは風やライの状況だ。風は打つ場所より弾道の先、ボールの勢いが落ちていく、着弾エリアで考えるのがセオリー。インパクト直後は初速が速く、風の影響を受けにくいのだ。

また2打目、3打目のライも重要。どんなに飛んでもつま先下がりの難しいライではリスクが高い。フラットな場所に刻んだほうがスコアはまとめやすくなる。最後にその日の調子を踏まえ、1打のストーリーを描くのだ。

「プロは天候やコース状況、自分の技量などをベースに1打のストーリーを考えます。これこそ、準備して打つ=考えて打つ、そのものです。何も考えず、適当に打っているだけでは、スコアを伸ばせません。ですが、考えて打つルーティンができれば、間違いなくスコアアップするはずです」

"左右前後"の4分割ターゲット。"ナイスミス"になるルートを考える

では、実際のラウンドでは、どう考えて打てばいいのか。北野プロは大前提として「ナイスショットより"ナイスミス"を考えましょう」と語る。その真意は?

「ラウンドでナイスショットは必要ありません。プロでさえ、ナイスショットはほとんど出ないのですから。1打でもスコアを良くするためには、ミスをミスにしない、考え方が大事です」

その基本がすべてのショット(ドライバーからパターまで)を左右、前後の4分割で考えることだという。どこが危険なエリアで、どこが安全なエリアかを考えることで、ターゲットが自然と絞られていくのだ。

「ティーショットは、左や右といったターゲットが決まれば、自ずとクラブも決まります。手前がベストなら何もドライバーである必要はありません。セカンド以降はライの見極めが重要です。

地面から打つショットはティーアップしたボールより、ヘッドの入射角がシビアになるからです。ボールの浮き具合、芝の密度など、状況をしっかり見極めましょう。

そしてアプローチは、まずグリーンに乗せることです。そのうえで、どこからパットを打つのがベストかを考えます。この場合、上りか曲がりが少ないラインを意識しましょう。

考えて打つゴルフの原点は自分のプレーをラクにすることです。無理なプレーではスコアメイクはできません。ボールがどこにあれば、次打が打ちやすいのか、その情報を集め、考え抜いた1打を打ってほしいのです。ナイスミスの積み重ねが、スコアアップに直結しますから」

クラブの頭(ヘッド)だけでなく、自分の頭も使い切ろう。

TEXT/Kenji Oba  Photo/Yasuo Masuda  THANKS/サザンヤードCC

※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月28日号「考えずに打つか 考えて打つか」より

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