国内女子ツアー第5戦「ヤマハレディースオープン葛城」で4年ぶり通算4勝目を飾った穴井詩。昨オフから原点回帰したスウィングをみんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファーの中村修が解説。

葛城GCの最終日、上位陣でただ一人アンダーパーだった穴井詩

「ヤマハレディース葛城」の開催コース、葛城GCはツアー序盤の難コースの一つで、飛距離、方向性、ショートゲーム、メンタル、風やマネジメントといった、まさしく総合力が試されるコースです。特に最終日は、風も強くピン位置も難しい難コンディション中、穴井選手は上位陣でただ一人アンダーパー(2アンダー)でプレーし、ささきしょうこ選手とのプレーオフをバーディで退け勝利のガッツポーズを見せてくれました。

画像: 「ヤマハレディースオープン葛城」で4年ぶりの優勝を飾った穴井詩

「ヤマハレディースオープン葛城」で4年ぶりの優勝を飾った穴井詩

昨オフからコーチを務める石井雄二コーチと私は研修生時代を同じ地区で過ごした旧知の仲で、開幕戦で「久しぶりに穴井詩選手とタッグを組むことになった」と聞いていましたし、サポートする選手の帯同で男子ツアー開幕戦の練習日にも来ていたので顔を合わせていました。

昨年までは、勝負どころで強いフックボールのミスが出ていたことからオフには徹底して基礎を見直し、体のコアの動きを改善。オーバースウィングでシャフトクロスからシャフトをねじるようなクラブの動きを改善することと、パッティングの改善にも取り組んできたと石井コーチ。

穴井選手は、転戦するホテルに練習器具を持ち込み、黙々とストロークの改善にも取り組んできたことで、開幕戦で早くもその成果を実感していたと石井コーチは教えてくれまました。そのスウィングをじっくり見てみましょう。

改善したアドレスの姿勢。体のターンがスムーズになった

左手の甲が正面から見えるストロンググリップで握り、左腕とクラブが一直線になるように構えています。そこから左腕とクラブの直線を保ったまま、長くワイドにテークバックしていきます。トップでも手首を左手親指側に曲げるようなコックする動きはとても少ないです。

オフに石井コーチと取り組んだ「背中が丸まらないように改善したアドレスの姿勢のおかげで体のターンがスムーズできるようになった」ことで、力感が強くならずに安定したテンポで深いバックスウィングが取れるようになっています。そしてオーバースウィングも改善していますね。(画像A)

画像: 画像A 左手の甲が正面から見えるストロンググリップで握り左腕とクラブを一直線に構える。その直線をキープしたままトップまでバックスウィングする

画像A 左手の甲が正面から見えるストロンググリップで握り左腕とクラブを一直線に構える。その直線をキープしたままトップまでバックスウィングする

横方向の力、回転力、縦方向の力。"3つの力”のバランスが良くて飛ばせる!

テークバックから切り返しまでの左右の移動、切り返しからの回転力、インパクトにかけての地面反力というスウィングの3つのエネルギーのバランスが非常にいいですよね。動き出しの順番も整っていて、クラブをスムーズに加速できています。左わきがしっかり締まっていることで、下半身で作った回転力を逃がすことなく左腕からクラブへと伝えています。

画像: 画像B 横方向、回転力、縦方向の力を使うタイミングが完璧にそろっていることで大きな飛距離を出せる

画像B 横方向、回転力、縦方向の力を使うタイミングが完璧にそろっていることで大きな飛距離を出せる

開幕戦のプロアマ大会18番最終ホールでレーザー距離計を使い、ティーからほぼフラットなセカンド地点の穴井選手を計測すると、「297ヤード」。その飛距離には脱帽しかありません。

今大会でキャディを務めた田子元治さんは、ゴルフ5の選手をサポートする役目を長く務めているプロゴルファーで穴井選手が20歳の頃からサポートしてきていました。その田子プロが「今週は練習ラウンドから雰囲気がありました。プロ入りしてから一番バランスが良いよ」と話したといいます。

力感を含めたスウィングのバランス、距離とスピンコントロールが向上したことで、ショートゲームまでよくなっていたと教えてくれました。力感を落として方向性がアップしたというスウィングは今後も見逃せません。

画像: 左からキャディを務めた田子元治、穴井詩、石井雄二コーチ

左からキャディを務めた田子元治、穴井詩、石井雄二コーチ

優勝会見でベテランの域に入り原動力は?と聞かれると「もっと上手くなりたいという気持ちでしかないと思います。全然終わりが見えないという感じで、直したいところも、まだまだ上手くなりたいという気持ちがあるので」と答えました。出場した120名の中で1番上手かった穴井選手ですが、まだまだ、もっと上手くなりたいという気持ちを強く持ち続ける限り今季の快進撃は続くことでしょう。

上田桃子、藤田さいき、金田久美子選手などの若手の壁になるベテラン勢の活躍にも注目していきましょう。今週の「富士フイルム・スタジオアリスオープン」は現地からのレポートをお届けします。

写真/岡沢裕行

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