国内女子ツアーで、岩井ツインズの存在感が増している。昨季2勝の妹・千怜に続き、姉の明愛がバンテリンで優勝し、史上初の双子によるレギュラーツアーVを果たした。そんな姉妹は伸び盛りの実力もさることながら、ツアー関係者の間で「人としても素晴らしい」と評価されている。やはり、両親から受けた教育が大きかったようだ。
画像: 17年、中学3年でゴルフダイジェストジャパンジュニアカップに出場した岩井姉妹。千怜(右)は高校になって大会3連覇を達成した

17年、中学3年でゴルフダイジェストジャパンジュニアカップに出場した岩井姉妹。千怜(右)は高校になって大会3連覇を達成した

「私はこのまま『2人とも頑張れ』と両方を応援していきます」(母)

KKT杯バンテリンレディス最終日18番パー5。明愛が短いウイニングパットを決めると、グリーン脇で千怜が先に頬を濡らした。明愛は同組で優勝を争った申ジエから「おめでとう」と声を掛けられ、感極まった。そして、千怜が駆け寄ってハグ。2人がともに涙したシーンは、ギャラリー、視聴者の胸を打った。

明愛は初優勝の会見で、率直な思いを語った。

「ホッとしているのとうれしいのと…。千怜の初優勝もああいう感じだったので。千怜が優勝して『自分も勝てるかな』と思っていましたが、今日はスタートから終わりまで、気の抜けない緊張感の中にいました」

昨年8月、千怜がNEC軽井沢72ゴルフトーナメントに初優勝を飾った際、明愛は大粒の涙を流した。
理由は「一番身近にいる人が優勝して感動したので」。

ただ、関係者は「先を越された悔しさ、自分も優勝できるのかという不安もあっての涙に感じた」と話していた。

翌週、千怜がCATレディースで史上3人目の初優勝からの2連勝を史上最年少で飾ると、明愛は「見ていて緊張しました。すごいメンタル」と感心しきりになった。複雑な思いはあったことだろう。

表彰式には明愛も呼ばれた。「私も頑張ります」と言い、ギャラリーからは「次はお姉ちゃんだ」と声を掛けられた。周囲は「明愛が重圧を受けるのでは」と心配したが、母・恵美子さんは「私は明愛に気を使いません。普段通りにします」と言った。理由は明確だった。

「勝負の世界ですから。1人がいいのなら、もう1人は背中を追うか、抜かすしかない。あとはどれだけ本人が努力できるかですし、私はこのまま『2人とも頑張れ』と両方を応援していきます」(母)

幼少期から、負けず嫌いで切磋琢磨してきた姉妹

画像: バンテリンで初優勝した姉を前に涙する妹。ライバルでありながら励まし合ってきた2人の姿が感動を呼んだ(撮影/姉崎正)

バンテリンで初優勝した姉を前に涙する妹。ライバルでありながら励まし合ってきた2人の姿が感動を呼んだ(撮影/姉崎正)

2人は幼少期から競い合ってきた。小学校の持久走大会では、必ず姉妹がスタートから抜け出し、小1では明愛1位、千怜2位だったという。その順位が毎年繰り返されたが、5、6年は千怜が1位。

ゴルフでは、小学、中学と緊張もプラスに転換できる千怜の方が好成績を残していた。

ゴルフダイジェストジャパンジュニアカップでも、千怜が高校時代に大会3連覇(2018~20年)を達成しているが、明愛も高校から急成長。2020年の日本女子オープンでは、ロ―アマを獲得した。

顔は似ているが二卵性双生児で、性格とゴルフスタイルは違っている。

明愛は繊細で感情豊か。それでいて、ゴルフになると「イケイケ」で、パー5の2オン狙い、池からのショットもいとわない。

一方、千怜は外国人プロにも話しかけるなど社交的。ゴルフになると、「慎重に組み立てたいタイプ」というが、昨季は明愛の積極果敢なプレーを見習うようになり、それが生きた場面が多くあった。明愛も千怜の勝負強いパットを目の当たりにし、オフはコーチとパットの改善に取り組んでいた。

それでも、そろって負けず嫌いで、切磋琢磨してきた2人。側で見て来た父・雄士さんは「ゴルフについては、スコアが悪かったほうに『気にするな』と声を掛けていました」と振り返る。互いが精いっぱいの努力をしていることを分かっているからだ。

そんな2人の目標は「一緒に最終日最終組で回って、優勝争いをする」だ。プレーオフもイメージしながら、「そうなっても、最後まで応援しながらプレーをしたい」と声をそろえている。両親から「正々堂々」のスポーツマンシップ、「人に優しく」を教え込まれてきた姉妹。

ゴルフファンは2人が早期に目標を達成し、最後に「おめでとう」「お疲れ」と声を掛け合うシーンを心待ちにしている。

This article is a sponsored article by
''.