マスターズが行われるオーガスタは長年、ドローヒッターが有利とされてきた。左ドッグや右に傾斜したフェアウェイが多いからだが、今年はみんなフェードだった。なぜ、世界のトップの主流はフェードなのか? わかりやすいレッスンが人気の横田英治プロが教えてくれた。
画像: オーガスタをフェードで攻略したジョン・ラーム。世界ランクトップに君臨する

オーガスタをフェードで攻略したジョン・ラーム。世界ランクトップに君臨する

「フェードは1Wでもピンポイントでボールを止められる」(横田プロ)

今年のマスターズはジョン・ラームの初制覇で幕を閉じた。ラームといえばフェードヒッターだが、オーガスタナショナルGCはドローヒッターが有利と言われてきた。

「上位選手はみんなフェードでしたね。昨年優勝のスコッティ・シェフラーもそうですし、松山英樹も勝負どころはフェードで攻めていました。ドローだったローリー・マキロイもフェードに変えています。マスターズがドローじゃないと勝てない時代は終わったのでしょう」 

そう語るのはスウィング理論に精通する横田英治プロだ。 

オーガスタは2番、5番、9番、10番、13番と左ドッグレッグがあり、右に傾斜したフェアウェイも多い。それがドロー有利とされた主な理由だ。

では、なぜフェードが選ばれるようになったのか? 横田プロはこう説明する。

「かつてオーガスタは距離の長いコースでしたが、クラブやボールの進化、選手のアスリート化により、今の選手にとっては決して長くはありません。コース改造も行われていますが、選手のレベルアップが上回っているのです」 

確かに昨季の米ツアーのドライバー平均飛距離を見ると上位99人が300Yを超えている。

「トップ選手たちはいかに“飛ばさないか”を考えています。そこで求められたのが止まるボールです。オーガスタは最適なルートが決まっています。1打目はここ、2打目はあそこというようにピンポイントで攻めることで、バーディが獲得できる。そうなるとドライバーでもボールを止めることの重要性が高まっているのです」 

1Yでも遠くに飛べば喜ぶのがアマチュアだが、世界のトップ選手は違う。ドライバーであっても狙ったところに止めたい。だからこそ、フェードを選ぶのだ。

フェードは高弾道が打ちやすく、スピンもかかるため、ボールを止めやすい。だが、ドロー神話が崩壊というわけではないと横田プロ。

「打ち下ろしの10番は多くの選手が3Wでドローを打っていました。ドライバーでフェード、3Wでドローというのが、新たなオーガスタの攻め方なのかもしれません」

「曲がり幅をコントロールしやすく、高弾道で止められるのが最大の魅力」(横田プロ)

画像: 優勝争いでは必ずカットで打つタイガー。すべてが計算された球筋はフェアウェイをキープ。このカット打ち(フェード)がスコアを崩さない、安定したプレーを生んでいる

優勝争いでは必ずカットで打つタイガー。すべてが計算された球筋はフェアウェイをキープ。このカット打ち(フェード)がスコアを崩さない、安定したプレーを生んでいる

マスターズを5勝したタイガー・ウッズ。その武器もフェードだ。とくにタイガーは最終日や優勝争いなど、大事な場面では必ずカット打ちのフェード多用する。

となるとフェードこそが最強といえそうだが、その理由はどこにあるのか? 横田プロは、 

「ドローはファーストバウンドが跳ねやすくランが出ます。どこまで転がるかわからないのはプロにとって不確定要素でしかありません。逆にフェードはボールが止まりやすいので計算できます。だからプロは確実性の高いものを選ぶのです」 

横田プロによれば、ボールを止められる要素は弾道の高さ(落下の角度)とスピン量しかなく、フェードはこの2つを同時に手に入れられるという。その理由はドローと違い、ロフトがあまり立たずにインパクトするため、高弾道になりやすく、またスピンがかかりやすいためだという。スピンが多く入ることで弾道も安定し、曲がり幅がコントロールしやすくなる、というメリットもあるのだ。

「ドローは体の一部を止め、タメを作ってボールをつかまえる動きが求められます。それだけ複雑で難しいのです。一方、フェードは切り返しから体を回し続ければいいので技術的にも難しくありません。動きがシンプルなので、一定のリズムが保ちやすく、再現性も高くなります。緊張した場面、勝負どころでもいつも通り振り抜けるのはプロが選ぶ理由になるはずです」 

横田プロは、フェードはミスが出にくいボールだとも語る。プロでもアマチュアでもここ一番では力が入ってしまう。そうした場面でいくら強く打ってもミスが出にくいのがフェードだというのだ。

「これは力のベクトルの関係なのですが、フェードは振り抜く方向とボールが曲がる方向が逆になります。そのため力を入れ過ぎてもミスになりにくいのです。ドローは2つのベクトルが同方向ですから、ちょっとした力加減で飛び過ぎたり、曲がり過ぎたりというミスが出てしまうわけです」 

タイガーがカット打ちを多用する理由もそこにあるのだろう。 

まとめ・フェードが最強といえる4つの理由

画像: 「ティーショットがドロー、2打目がフェードだと動きが変わり、ミスしやすくなります。2打目はフェードが主流ですから(写真のラームのように)フェードの動きで統一できれば、ミスも大幅に減らせます」(横田プロ)

「ティーショットがドロー、2打目がフェードだと動きが変わり、ミスしやすくなります。2打目はフェードが主流ですから(写真のラームのように)フェードの動きで統一できれば、ミスも大幅に減らせます」(横田プロ)

フェードのメリット① ロフトが立たずにインパクトすることで弾道が高くなる

ドローはロフトが立ちながらインパクトするため、高弾道を打つには高い技術が必要になる。一方、ロフトがあまり立たずにインパクトするフェードは高弾道が打ちやすい。ハイフェードはプロには難しくない技術なのだ。

フェードのメリット② 適正なスピン量を確保できるからボールを止めやすい

インパクトロフトの影響でドローに比べ、フェードはスピンがかかりやすい。

「ボールを止めるには落下角度(高弾道)とスピン量が不可欠です。この2つを同時に得られるのがフェードの魅力なんです」(横田プロ)

フェードのメリット③ 強く叩いても突発的なボールが出にくい

フェードの強みは強く叩いても突発的なボールが出にくいことだ。これはクラブの動きとボールのスピン軸のベクトルが違うためだが、ドローはクラブの動きとスピン軸が同方向になるため、力加減がダイレクトに伝わりやすい。

フェードのメリット④ 緊張した場面でもリズムが一定なので同じ動きができる

ドローは体の一部を止める(タメを作る)、ブレーキングという動きが求められる。それだけ複雑で難しい。逆にフェードは体を回し続ければいい。緊張した場面でもリズムを保ちやすく、再現性が高くなるのだ。

TEXT/Kenji Oba PHOTO/Blue Sky Photos THANKS/クラブハウス

※世界ランクは4月26日現在のデータ

※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月23日「世界のトップ選手はみんなフェードだ!」より

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