昨年の全米女子アマを制した馬場咲希さんを、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久(さかづめかずひさ)、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す! 今回は坂詰コーチのティーチングの基になっている「TPIメソッド」がテーマだ。
画像: 85年当時のJ・ニクラス。右わきの開くフライングエルボーのトップは、クラブの軌道が安定しないのでマネをするな、といわれた

85年当時のJ・ニクラス。右わきの開くフライングエルボーのトップは、クラブの軌道が安定しないのでマネをするな、といわれた

「100人いたら、100通りのスウィングがあっていい」。それがTPIメソッド

O編 今回は、TPIについて聞いてみようと思うんだ。ほら、その名前とか存在は知っていても、詳しくはわからないって人も多いでしょ?

坂詰 なるほど。まず、TPIというのはTitleist Performance Institute の略です。和訳すると『タイトリストパフォーマンス研究所』ですね。簡単に説明すると、スウィングメカニズム、クラブフィッティング、身体の構造や機能など、あらゆる面から、どうしたら効率のよいスウィングができるのか。そのためにはどんなエクササイズやトレーニングをしたらいいのか、などを研究する施設ということになります。

O編 わきゅうは、そのインストラクターの資格を取って、そのメソッドを基にティーチングをしてるんだよね?

坂詰 そうですね。ボクは、レベル3 という資格を持っています。最近は日本でもTPIのインストラクターは増えてきましたけど、USPGAやUSLPGAのティーチングプロは、ほぼ全員がTPIの理論を学んで、資格を取っているんですよ。

O編 そうらしいね。ところで、わきゅうは、いつ頃TPIに出合ったの?

坂詰 2010年ですね。その頃、TPIのリードインストラクターの山口英裕さんに会う機会があって。で、話を伺ったら腑に落ちることばかりだったので、ちゃんと学んでみようと思ったんです。

O編 腑に落ちるって?

坂詰 当時は、まだ手探りでやっていたので、迷ったり、わからなかったりすることがたくさんあったんです。そういう疑問に対する答え合わせができたんですよ。

O編 TPIのメソッドの特徴は、どんなところにあると思う?

坂詰 それはもう、100人いたら、100通りのスウィングがあっていい、というところじゃないでしょうか。効率のよい体の使い方さえできていれば、デザイン=形は気にする必要はないって考え方なんです。

O編 それはいいよね。誰も形を考えて走ったり、モノを投げたりしないのに、ゴルフは型にはめようとすることが多いもん。

坂詰 だって、いくらタイガー・ウッズのスウィングがカッコいいからって、それをマネしても誰ひとり同じスウィングはできないわけです。そんなデザイン=形にこだわっても仕方ないんですよ。

効率のよい体の使い方ができるスウィングを目指す

O編 効率のよい体の使い方ができていれば、って言ってたけど、それってどんな使い方?

坂詰 エネルギーを下半身、上半身、腕、クラブの順で伝えていく使い方です。それができているなら、形は人それぞれでいいんですよ。

O編 形はそれぞれでいいって、具体的には?

坂詰 たとえば、トップで右わきが開いてフライングエルボーになるのはいけないって言われてますよね? でも、肩周りの柔軟性がない人に、「もっと右わきを締めなさい」って言ってもできないわけです。

O編 肩周りの硬い人は、トップでフライングエルボーになってもいいってこと?

坂詰 いいんです。効率のよい体の使い方ができていれば、フライングエルボーでも、ボールを狙ったところに運ぶ方法はありますから。人はみんな、骨格も違えば、筋力も、柔軟性も、可動域も全部違います。だから、人によってできる動きとできない動きがあるわけです。それなら、できる動きでスウィングすればいいんですよ。

O編 ま、確かに、ジャック・ニクラスだって、フライングエルボーだったんだから、それだけで悪いと決めつけるのはおかしいよね。

坂詰 でも、もし、そういう気になる動きを直したいなら、TPIには、そのためのトレーニング法やエクササイズもあります。動きを直したいなら、トレーニングやエクササイズで直す。そういうことをしたくないのであれば、動きを変えずにスウィングを作ればいい。TPIは、どちらの方法も提案できるんですよ。

O編 トレーニングやエクササイズで動きを直すのは時間がかかるよね。プロならともかく、一般のゴルファーは、自分ができる動きでやるのが現実的な気がするな。

坂詰 そこは個々のプレーヤーが好みで選べばいいんじゃないでしょうか。あと、伝えておきたいのは、TPIって、今までの研究結果や、トレーニング法などを、すべてホームページで公開してるんです。そういうことって〝企業秘密〟にすることが多いじゃないですか。でも、誰でも、すぐに、全部見られる。そこもいいんですよ。

O編 それは素晴らしいことだね。興味のある人は、ぜひ覗いてみてほしいですね。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月23日号「ひょっこり わきゅう。第16話」より

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