ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、4月の日欧共催大会で優勝したオーストラリア人選手、ルーカス・ハーバートについて語ってくれた。
画像: 「飛距離はもちろん、昨シーズンのSGパットはPGAで1位。現時点で欧州ツアーでもトップを走るパット上手。マッチプレーに強いのもこれが要因でしょう」by佐藤信人(Photo/Hiroaki Arihara)

「飛距離はもちろん、昨シーズンのSGパットはPGAで1位。現時点で欧州ツアーでもトップを走るパット上手。マッチプレーに強いのもこれが要因でしょう」by佐藤信人(Photo/Hiroaki Arihara)

日本とも馴染みの深いルーカス・ハーバート

4月に石岡GCで開催された日欧共催、ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント! で、欧州ツアー3勝目を挙げたルーカス・ハーバート。大会開催時点での世界ランキングは出場選手中最高位で、その優勝は「さすが」と感じさせました。

日本とも馴染みの深い選手です。14年に軽井沢72で行われた世界アマで来日。個人戦では優勝したジョン・ラームに次ぐ2位でした。15年にはダイヤモンドカップと日本オープンにアマチュアとして出場。その年にプロ転向し、17年のダイヤモンドカップにはプロとして参戦しました。3日目が終わってドライビングディスタンストップ、その話題の飛距離を見ようと、ボクも練習場に足を運んだものです。

プロ入り後、どのツアーにも属さないイメージだったハーバート。欧州で18年に初シードを取りましたが、翌19年は成績も出ずにどん底。ホームシックに悩まされたようです。スコティッシュオープンではオーストラリアから親友が仕事を休んで駆けつけたほど。一旦帰国し、引退も考えたそうです。その気持ちはボクにもよくわかります。

24歳、成績が出ない、しかも慣れないヨーロッパで気が滅入る感じ……母国でクラブをまったく触らない時期もあったとか。しかし、「今さら履歴書を出して新たな仕事に就けるか?」と冷静に考え、ゴルフを続ける選択をした。その後、欧州ツアーで2勝を挙げると入れ替え戦からPGAに参戦し、21年にはバミューダ選手権で初優勝を果たします。

米ツアーをメインに世界のツアーを渡り歩く

現在はPGAツアーが主戦場ですが、今でも世界のツアーを渡り歩く印象のハーバート。ボクはLIVゴルフに移籍するのかと思っていました。今年は欧州ツアーのドバイに出場し、翌週はアジアンツアーのサウジアラビアへ。こちらはPGAにペブルビーチのプロアマ大会の欠場申請書を提出しての出場です。G・ノーマンやC・スミスというオーストラリア人脈もあり、LIVゴルフ移籍の可能性はまだあるのではないかと。

結局この転戦は、世界ランク50位以内、つまり2度目のマスターズ出場が目的だったようです。ドバイは20年に初優勝した大会で、そこから米本土に戻るより近く、ペブルビーチよりポイントが効率的なサウジを選んだと。結果も、ドバイで3位、サウジでも3位に入り世界ランクは46位に。その後、PGAツアーのWGCマッチプレーで予選を勝ち上がれば世界ランク50位以内に入る計算で、実際勝ち上がったものの結局世界ランクは51位で、マスターズ出場は果たせませんでした。悔しさは残ったはずです。

それにしても、自国ではない世界で戦うのは本当に大変です。それは日本人選手だけではなく、ハーバート含め欧州、豪州出身者も同じ。アメリカ生活に合わない選手も多く、家族にもなかなか会えません。以前、尾崎直道さんが、「海外挑戦で必要なのは、退屈に耐える、孤独に耐えることだ」と。
ハーバートが今回、優勝インタビューで「この優勝は、闘病中の母に捧げます。このあとオーストラリアに帰ります」と言ったとき、しみじみそんなことを考えました。

 

※週刊ゴルフダイジェスト2023年6月6日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

This article is a sponsored article by
''.