45インチという長さに対しては、構えたときの視覚的な不安感を取り除くためにヘッドのサイズアップが絶対条件となる。

アドレス時の目とヘッドとの間の距離、つまり「視覚距離」が長くなるので、ヘッドサイズを大きくして補正しなければならない。ここで重要なのは、サイズを大きくしても重量が重くならないことだ。サイズとともに重量も大きくなってしまったら、クラブとしては使いものにならない。

次の問題として、ヘッドを大きくすればそれに伴って空気抵抗が増すという問題がある。これはヘッドスピードには明らかにマイナス要因だ。たとえば45インチモデル(μ240ie)は旧モデルに比べてヘッド体積で約20パーセント、フェース投影面積で約15パーセント増加している。

ドライバーのコンセプトである「もっと遠くへ、もっとヘッドスピードを・・・」ということから考えると、なんとしても空気抵抗を少なくしなければならない。

そこでプロギアは10タイプのプロトモデルを作り、東海大学の風洞実験装置を使って実験を繰り返した。

画像: いくつものサンプルを作り、東海大学で徹底した風洞実験が行われた。

いくつものサンプルを作り、東海大学で徹底した風洞実験が行われた。

空気抵抗を減少させるためには、その物体の後方に生じる気圧の低い「負圧」部分を作らないことが大きなポイントになる。空気が途中で剥離しないようなデザインが望ましく、空気がクラブヘッドの表面に沿ってスムーズに流れるようにしなければならない。

画像: 空力特性を計算せずに単にラージ化したヘッド。ミュー240iに比べ、ヘッド後方に大きな空気の乱れ(負圧部分)ができ、ヘッドスピード減少の原因となっている。

空力特性を計算せずに単にラージ化したヘッド。ミュー240iに比べ、ヘッド後方に大きな空気の乱れ(負圧部分)ができ、ヘッドスピード減少の原因となっている。

東海大学の風洞実験設備は幸いにも、データ取得と同時に「火花追跡法」によって空気の流れを映像化できるシステムを持っていた。つまり、映像を見ながら形状を検討できることが大きかった。

風洞実験によって得られた成果はヘッドスピードに換算すると0.2~0.5m/秒ほどだが、これは大変大きい。革命的な素材の出現でもないかぎり、開発は小さなポイントの積み重ね。

空気抵抗を表す基準としてはCD値が用いられるが、従来のμ240は0.45だった。これに対してμ240ieはヘッドが大きくなっているにも関わらずCD値は0.42と、空気抵抗はむしろ少なくなった。

画像: 空力特性を徹底して追求した結果、ミュー240iはラージヘッドながら上面、下面ともに空気がスムーズに流れるようになった

空力特性を徹底して追求した結果、ミュー240iはラージヘッドながら上面、下面ともに空気がスムーズに流れるようになった

この数値をヘッドスピードに換算すると0.2~0.5m/秒のアップとなるわけだが、それにしてもゴルフクラブの開発は、今やミクロの領域に入りつつある。

(1989年チョイスVol.49)

①の記事はこちら↓↓
進化のキーワード「長尺と空力」。27年前に描かれていた未来図!①

②の記事はこちら↓↓
27年前に描かれていた飛びの未来図!その②予想的中!1990年代には45インチが「標準」になる

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