いよいよ幕を開ける2017年の男子ツアー。“四桁万円”の賞金に、大ギャラリー。優勝副賞は高級車。テレビに映る派手な世界の裏側には、予選通過にしのぎを削るプロたちの暗闘がある。そんな、僕らが知らないプロツアーの裏側を、開幕戦に出場するプロゴルファー・中井学に教えてもらった。

試合の練習ラウンドだって、キャディフィもプレーフィも「実費」

プロゴルファーの中井学です。2017年の開幕戦、東建ホームメイトカップに出場するため、東建多度CC名古屋にいます。さて、今日は火曜日。本戦は木曜日からですが、多くのプロゴルファーがこの日コースにやってきます。

なにをするかといえば、練習。練習ラウンドを行ってコースを確認したり、ドライビングレンジやパッティンググリーンで調整を行うんです。雑誌メディアも多く集まり、手の空いたプロが取材対応する姿も多く見られます。クラブを調整してくれるツアーバンも列をなし、ギャラリーは多くの場合いないものの、雰囲気は賑やか。もっとも、2017年4月11日の今日は朝から生憎の雨で、コースに姿を見せないプロもいます。

画像: 早めにコース入りし、月曜日に練習ラウンドを行う中井。普通のラウンドとは異なり、とくにグリーン上では試合で予想されるピンポジションに対し、練習を繰り返す

早めにコース入りし、月曜日に練習ラウンドを行う中井。普通のラウンドとは異なり、とくにグリーン上では試合で予想されるピンポジションに対し、練習を繰り返す

コースに着いたらまずレジストレーション。このとき、エントリフィの1万800円を支払います。次いでコースやグリーンの情報が仔細に書かれたヤーデージブックを3000円で購入します。帯同キャディの分(今週はプロゴルファーの“すし石垣”がキャディをしてくれる予定)も買うので、計6000円。プロの試合はなにかとお金がかかります。

火曜日に行うのは練習と「情報収集」

さて、ロッカーに行って支度をしたら、いよいよコースに向かいます(ちなみにロッカーは一週間同じ場所を使います)。多くのトーナメントは開催コースが決まっていますが、コースは年々変化します。去年と比べてどうか、とくにグリーンの状態を中心にできる限り情報収集を行います。

この時頼りになるのがクラブ所属のいわゆるハウスキャディさん。「このホールはティグラウンドはフォローの風だけどグリーン周りはアゲンストだよ」とか「このホールのグリーンは“目”があるから気をつけて」といった、ローカルな情報を教えてくれるからです。帯同キャディと年間で契約している選手でも、「火曜日は来なくていいよ」という人もいます。逆に、キャディだけが前乗りしてグリーン上でボールを転がし、コースの情報収集をすることもあります。

画像: ヤーデージブックにはグリーンやコースの詳細な情報が記載されている。実際にラウンドしながら、これに書き込みを加えていく

ヤーデージブックにはグリーンやコースの詳細な情報が記載されている。実際にラウンドしながら、これに書き込みを加えていく

プロキャディの話になったのでちょっと補足すると、キャディのギャラは宿泊費や食費などの経費別で1日1万円か、一週間の経費込みで10万円というのがだいたいの相場。意外と安い!? と思われるかもしれませんが、選手が活躍すると順位に応じたボーナスがもらえるというのが一般的。

優勝ボーナスはだいたい10%くらい(選手による)なので、強い選手の専属キャディははっきり言ってそこらの選手より稼いでたりもします。また、キャディさん自身も企業とスポンサー契約を結び、キャップなどにロゴを入れていたりもします。いずれにせよ、年間契約で帯同キャディを雇えるのは裕福な選手といえますね。一人の人間を一年間雇用するわけですから。

画像: キャディにとっても、練習日は貴重な情報収集の機会となる。キャディ同士での情報交換も

キャディにとっても、練習日は貴重な情報収集の機会となる。キャディ同士での情報交換も

予選落ちしたら賞金ゼロ……どころか経費分だけ「持ち出し」になる

お金の話が続きますが、練習ラウンドとはいえ僕らはプレーフィを払ってプレーします。また、前述したようにキャディにもついてもらう必要があるので、キャディフィも当然かかります。みなさんがゴルフするのと、基本的には変わりません。もちろん食費に移動費、宿泊費もかかります。

だいたい僕の場合、1試合にかかる経費が約30万円といったところ。男子ツアーの場合、予選通過して仮に最下位だった場合、賞金が26万円とかそれくらいなので、予選さえ通れば「最悪でもトントン」という計算になります。

ただ、それだと儲けはゼロ。初めから優勝だけを狙うプロもいますが、僕のようにシード権を持たない、スポット参戦のプロは、まず予選通過を目指し、その目標が達成されたら、今度はひとつでも上の順位を狙っていくのです。

なにしろ、予選落ちしたら一週間で数十万円の損で、それはすべて自分の懐から払うわけですから。サラリーマンの方、仕事でミスをしたら数十万円を失う、という方はいないと思いますが、僕らの場合、それが日常なんです。

画像: コース攻略に必須なヤーデージブックに、ツアー出場者の証・ツアーバッジ。中井の場合は主催者推薦なので、一時貸与されたものを身につけ、選手であることを証明する

コース攻略に必須なヤーデージブックに、ツアー出場者の証・ツアーバッジ。中井の場合は主催者推薦なので、一時貸与されたものを身につけ、選手であることを証明する

グリーンの「硬さ」がスコアに大きく影響する

話は戻って、だからこそ火曜日の練習ラウンドでの情報収集が重要になってくるんです。とくにスコアに影響するのがグリーンの硬さです。グリーンが硬くて止まりにくいか、軟らかくて止まりやすいか。それ次第でスコアは大きく変わります。全米オープンや全英オープンで世界のトップ選手が四苦八苦するのは、ラフの長さもさることながら、グリーンの硬さが大きく影響しています。

グリーンの硬さや速さ、コース自体の難易度が把握できるとなにがわかるかというと、「予選通過の目安」です。実際に練習ラウンドを行ってみたところ、もちろん天候次第、風次第ではありますが、開幕戦の予選通過スコアはだいたいイーブンパーくらいではないかと予想しています。木曜日、金曜日の予選ラウンドでは、このイーブンパーの予選通過ラインを目指して、ゴルフすることになると思いますが、それについては、また機会を改めてお話ししたいと思います。

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.