ボビー・ジョーンズが生誕してから、約113年。史上初のグランドスラマーであり、ゴルフの祭典マスターズ・トーナメントの創設者であるジョーンズは、弁護士活動の傍ら、文筆家としても高い評価を得ていた。彼が残した珠玉のレッスン書は、今も我々ゴルファーの心に強く響いている。

画像: ボビー・ジョーンズ 「球聖」と呼ばれたゴルフ史を代表するゴルファー

ボビー・ジョーンズ
「球聖」と呼ばれたゴルフ史を代表するゴルファー

今週の週末コラムでは、2回にわたり、球聖・ジョーンズの名著「Bobby Jones on Golf 」の中からバンカーショット、ラフの打ち方を記した文章を紹介する。

バンカーからのテクニック

わたしはかねてから、1980年の全米オープンの勝者フレディ・マクラウドこそ、史上最もめざましいバンカープレーヤーだと思っている。しかしフレディとわたしは、彼がいつもおこなっているショットについていつも議論を続けてきた。

グリーンに近いバンカーでクリーンなライからプレーするとき、フレディはニブリックのフェースを寝かせて、のびのびとスウィングする。ボールの下の砂をごく薄くしか取らないので、ショットのスピン量がとてつもなく多くなる。ボールはたいていホールを過ぎたところに落ちてバックスピンで戻り、ホールのすぐそばに止まるのだ。

しかし、アベレージゴルファーはそうはいかない。一打でバンカーを脱出することを第一目標にするべきである。そのため第一には「ボールが上がるくらい充分下にクラブを入れてやること」、第二には、「ボールがバンカーから飛び出すほどに強くヒットすること」を心がけなければならない。

フェースを寝かせることは充分な保険となる。なぜならボールをクリーンに打ってもグリーンの外まで飛ばないことが分かっているので、より強くヒットできるからだ。しかし強い砂の爆発は、ボールとクラブフェースの間に厚い砂のクッションを生み、結果バックスピンがかかりにくくなる。バンカーショットが上手な多くのプレーヤーは、バックスウィングはどちらかといえば大きいが、クラブはボールの後ろの砂を打ち込むだけ。“砂のクッション”は比較的薄いため、ある程度のバックスピンがかかる。

バンカーを含むあらゆるトラブルからのリカバリーショットの達人になるためには、高度に発達したクラブ・コントロールの感覚に加えて、ある程度の創意工夫が必要となる。トラブルショットはそれまで一度も試みたことがないクラブ操作の行為なので、インスピレーションやひらめきがあって、初めて(奇跡的に)成功する。昔トミー・アーマーから、生涯最高のショットを聞かれたことがあったが、そのときわたしは、1926年の全英オープンで、17番ホールのバンカーショットを挙げた。

画像: トミー・アーマー

トミー・アーマー

「わたしもあのショットを挙げると思っていたよ」と、トミーは言った。それは他のバンカー群や砂丘を越えていく約175ヤードのショットで、アイアンでボールをヒットする前にわずかにでも砂を噛んでいたら大きく結果が変わっていた、スリル満点のショットだったのだ。続けてトミーは言った、「ヘーゲンにも同じ質問をしたんだけど、彼もバンカーショットを挙げたんだ」。

ヘーゲンが挙げた自身最高のショットは、サンドイッチの15番クロスバンカーからのショットだった。最終ラウンド、セカンドショットをそのバンカーに入れてそこから3打で上がり、残りホールを全てパーで上がらないと優勝できない場面だった。ボールはバンカーの真ん中のクリーンなライにあり、ピンまで約30ヤードだった。そのバンカーはさほど大きくも、深くもなかったが、グリーン側の縁が岩壁のように突き出ていて、簡単にはボールが出そうもない状況にあった。

ウォルター・ヘーゲン

ヘーゲンには、安全に出して5で上がり、残り3ホールをパーで上がるか、危険を承知で4を狙い、一打の余裕を持って臨むかの選択があった。彼は細心の注意を払ってボールのライを調べ、二度クラブをとりかえたうえで、完璧なチップショットをやってのけた。ボールはホールから1フィートのところに止まり、沈めてパー。優勝を決めたのだ。

それは大きな賭けであり、彼ほどの技術を持ってしても難しいショットだった。ヘーゲンはそれでも危険を冒す価値があると判断した。そこで一打の余裕を生めば、後り3ホールが楽になる。結果的にその判断は正解で、この日すばらしいラウンドをしていたジョージ・ダンカンがもしボギーした最終ホールをパーで上がっていれば彼とタイになるところだったからである。

ヘーゲンの場合のような、バンカーのなかのクリーンなライからの短いショットはあらゆるゴルフショットの中で最も危険である。わたしの場合のようなロングショットはさほど難しくはない。肝心なのは、フェアウェイと同じようにダウンブローで打つことだし、多少ダフッたとしても充分強く打っているから少なくともバンカーからは脱出できる。

しかしデリケートなストロークは、失敗すれば100%失敗であり、その上ボールがほとんど脱出不可能なバンカーの壁にくっついてしまうことも少なくない。つまり失敗した場合一打では済まないということだ。

アベレージゴルファーはグリーン周りのバンカーではクリーンなライに恵まれないことを望むべきである。なぜならライがよいと誘惑が大きすぎるからである。むしろボールが少し砂に潜っているくらいが望ましい。そうすれば意志の力で誘惑に勝ったからではなく、必要に迫られてバンカーショットを行うことができるから、結果ロフトのあるクラブのエクスプロージョンで脱出することができる。

「第十章 バンカーからのテクニック」 完

※月刊ゴルフダイジェスト2002年3月号より

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