世界ランク1位のダスティン・ジョンソンの勢いが止まらない。2013年のWGC HSBC チャンピオンズ、2015年のWGC キャデラック選手権(現WGC メキシコ選手権)、2016年のWGC ブリヂストン招待、2017年のWGC メキシコ選手権に続き、今回WGC デル・マッチプレーに勝利。史上初のWGCの4大会制覇を達成したこととなった。そんなダスティンは圧倒的な飛距離が特徴だが、彼はいかにしてその飛距離を叩き出しているのだろうか? プロ資格を持つ「みんなのゴルフダイジェスト」編集部員・中村修が解説!

ダスティン・ジョンソン(以下DJ)のスウィングの特徴はふたつあります。ひとつはスウィング中にフェースを開かない「シャットフェース」であること。もうひとつは、腕を使わずカラダの回転だけで打つ「スピナー」であることです。

DJが圧倒的な飛距離で世界を制したことにより、「シャットスピナー」が今後スウィングの主流となっていく可能性も否定はできないと思います。まずは、そのスウィングをじっくりと見ていきましょう。

【アドレス〜始動】いきなりヘッドが動きだす!

画像: 【アドレス〜始動】いきなりヘッドが動きだす!

「特徴だらけ」と言っていいDJのスウィングですが、それは始動から表れます。手元の位置にぜひ注目してください。左手グローブの位置を見ると、手元が右足方向に動くどころか、逆に左足方向に動いているのがわかります。

DJの場合、非常に早い段階でフェースを開かないようにコックを使い始めているのがポイントです。左手を手のひら側、右手を手首側に使うコック。

後ほど詳しく解説しますが、驚くべきことにDJはこの段階でのフェースの向きをインパクトまで保ち続けることになるのです。ともかく、始動からコックを入れることで、まずはヘッド「だけ」を動かしてDJのスウィングはスタートします。

【バックスウィング】左手首が完全に手のひら側に折り込まれている!

画像: 【バックスウィング】左手首が完全に手のひら側に折り込まれている!

左手首が完全に手のひら側に折り込まれているのがわかります。このようにコックをするとどうなるか。簡単に言うと、フェースが「閉じる」動きになります。普通のゴルフスウィングには、フェースをバックスウィングで開いて、ダウンスウィングで閉じる動きが入りますが、DJのスウィングにはそれが一切ありません。

ハーフウェイバックのこの時点でコックは完了し、DJはこの後手首を含む腕を一切動かさないのです。究極の「シャット」すなわちフェースを閉じたまま使うスウィング。それがDJのスウィングの大きな特徴のひとつです。

ちなみに、左手首を手のひら側に折ると、自然と右わきが締まります。

【トップ】フェースが空を向いたシャットフェース

画像: 【トップ】フェースが空を向いたシャットフェース

正面から撮られたスウィング写真で、フェース向きを判断する方法をご存知でしょうか。フェースがカメラ側を向いていれば「オープンフェース」です。このDJのトップ写真は、見ての通りフェースがまったく見えません。

正面から撮った写真でフェースが空を向いている。完全なる「シャットフェース」の証明写真のような一枚と言えます。体重をしっかりと右股関節で受け止めている点も素晴らしいですね。

それにしても驚かされるのはDJの捻転量。一般に、トップでは右肩が90度回っていれば深いトップとされますが、彼の場合110度は回っています。言わずもがな、これも爆発的な飛距離の理由のひとつです。

【ダウンスウィング】リリースせずにカラダだけを回す“スピナー”の動き

画像: 【ダウンスウィング】リリースせずにカラダだけを回す“スピナー”の動き

多くのゴルファーは、インパクトの前にクラブをリリースする動きが入ります。この「リリースする」という感覚を言葉で説明するのは非常に難しいのですが、人によってそれは手首のコックをほどく動きだったり、腕のローテーションだったりします。DJにはそれが一切ありません。

なぜDJはリリースを行わないのか? 一言でいえば、必要ないからです。バックスウィングで開いたフェースを閉じるためにリリースは行う場合が多いのですが、DJはバックスウィングからダウンスウィングまでフェースを一切開かずにフェースはボールを向いたまま。なので、トップからだカラダを回すだけで、スクェアなインパクトが得られるんです。

このようにカラダの回転だけで打つタイプの選手のことを「スピナー」と呼びますが、DJはまさにスピナーでありインパクトで左足を伸ばす「ジャンパー」でもあります。

【インパクト】体の正面より”ひとコマ先”のインパクト

画像: 【インパクト】体の正面より”ひとコマ先”のインパクト

普通、インパクトはカラダの正面で行うのが理想とされていますが、DJのスウィングはふたつの点でセオリーから外れています。まず、フックグリップで握っているプレーヤーはインパクトでも左手の甲が見えます。しかし、左手首を甲側に折りながら使うDJの場合、インパクトでは左手の甲はターゲットを向いています。通常、フックグリップで握ってインパクトで左手の甲がターゲットを向くとフェースは閉じて当たり左にしか飛びません。

しかし、バックスウィングでフェースを閉じたまま使うDJにとってはこれがスクェア。このとき、左ひざがピーンと伸び切っていることにも注目してください。これにより左へカラダが流れることなく、回転スピードがさらにアップしています。

それらの結果として、体の回転量と”ひとコマ分先”のハンドファーストのインパクトをすることによって、手の位置はカラダの正面よりやや左に外れていますがインパクトはスクェア。これは、カラダの正面で打つのに比べてより多くの回転エネルギーをボールに伝えるためのDJ独自のインパクトなのです。

【フォロー〜フィニッシュ】エネルギーを使い切ったコンパクトフィニッシュ

画像: 【フォロー〜フィニッシュ】エネルギーを使い切ったコンパクトフィニッシュ

始動でコックを使い、インパクト直後に手首が再度「コック」されます。結果、フィニッシュは意外とコンパクト。スウィングのエネルギーをインパクトで使い切っていることがわかります。

連続写真

昨今の大型ヘッドのドライバーは、フェースを開いて閉じるという動きが「やりにくい」構造になっています。ならば、フェースの開閉をしなければいいじゃないか、というのがDJのスウィング。フェースをシャットにすることで、フェースの向きをインパクトまで一定に保ち、その上でカラダのスピンのエネルギーで遠くに飛ばす。

もちろん、193センチという高身長、柔軟で強靭な筋肉、極端に強くて柔らかい手首など、肉体的条件も揃っているからこその飛距離ということは大いに言えますが、それでもこのスウィングは次世代のスタンダードになりえます。

アマチュアゴルファーのみなさんも、「俺には関係ないや」と思わず、まずは左手を手のひら側に折りながらコックする動きから取り入れてみてはいかがでしょうか。スライスに悩んでいる方なら、それだけでスライスが収まり、飛距離が伸びる可能性は大いにありますよ。

This article is a sponsored article by
''.