“最新”ドライバー「RS 2017」を迎え撃つ「TR」「TR DUO」の“最強”高反発
反発規制の施行が発表された2003年以前、知る限りすべてのメーカーのすべてのモデルが「高反発」を売り文句にしていた。フェースの反発力の高さはイコールでドライバーの飛び性能の証であり、各社はその性能にのみシノギを削っていたと言っても過言ではない。
そんな中、存在感を発揮していたメーカーがPRGRだ。強力な外ブラを向こうに回し、高い技術力で高反発ドライバーを次から次へとヒットさせ、「PRGRのドライバーは飛ぶ」という口コミを広げていった。
中でも忘れられないのが「スピードチタンTR」、そして「TR DUO」の2モデル。スピードチタンTRはとにかくフェースの反発性能が高く、一発の飛びならば世代最強クラスの実力を誇った。その後継器である「TR DUO」は、クラウン部をたわませるという(今では常識だが)当時では極めて斬新な設計思想と、カーボンコンポジットという革命的製法、そしてなにより前作をも上回る飛びで、これまた大きな話題となったクラブだ。

試打したのはこの4モデル。左からRS-F 2017、RS 2017、高反発のTR DUO(2003年発売)、そしてスピードチタンTR(2001年発売)。すべて10.5度のM-43シャフトで統一した
正直に言うと、筆者は「この頃」のドライバーが歴代で一番飛ぶと思っていた。無論、のちにヘッドは大型化し、重心設計が研ぎ澄まされることでミスヒットへの強さは格段にアップしているとは思う。しかし、いわゆる“激芯”を喰った一発の飛びでは、やはりフェースの反発性能という物理的条件の違いは超えられないだろうというのがその根拠だ。
PRGRのクラブで言えば、TRか、TR DUO。いずれも後のルール上限を大きくはみ出す反発係数0.83超のこの2モデルのいずれかが「史上最強」なのではないだろうか……?
という話をポロリとしたら、PRGRサイドから挑戦状とも思えるような企画が飛び込んできた。「かつての高反発ドライバーと、最新のRS 2017を打ち比べてほしい」というものだ。やるからにはガチンコでやるが、それでもいいかと念を押して、今回の企画はスタートしたという経緯を最初にお伝えしておきたい。

試打は曇り、気温20度という条件のもと、東名カントリークラブの練習場で行った。ボールを統一し、弾道計測器フライトスコープで、各クラブ3球ずつを試打した。
最大で約30ヤード差がついた。“最新”と“最強”勝ったのはどっち?
試打者はみんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファーの中村修と、同じく編集部員で「みんゴル用具班」の編集Oが担当した。中村はドローヒッター。Oは平均スコア95のスライサーだ。プロはともかく下手の試打など参考にならないと思われるかもしれないが、下手が打ってこそわかる違いもある。

最強高反発を迎え撃つPRGRの最新ドライバー「RS 2017」(写真右)と「RS-F 2017」(写真左)。“超ギリギリ”の反発性能の実力やいかに(撮影:三木崇徳)
まずはプロが打ってみた結果からみていこう。まずは3球の平均値での比較から。

結果は一目瞭然。高反発よりも「RS 2017」のほうが飛んでいる。中村は、この結果をこう分析する。
「これは予想通りですね。上の表を見れば、ヘッドスピードが上昇しているのは明らか。これは、シャフトがTR、TR DUOが44.5インチなのに対し、RS 2017、RS-F 2017が45.5インチと1インチ長くなっている上、総重量は15グラム前後も軽量化されていることから、クラブとしての振りやすさが圧倒的に向上しているからでしょう」

TRとTR DUO(写真左、左から2番目)に比べ、RS 2017とRS-F 2017(写真左から3番目、写真右)は1インチ長く、15グラム前後も軽い。その差がヘッドスピードとなって現れた。余談だが最新のほうがシャフトのデザインもオシャレ
一般に、ヘッドスピードが1m/s上がれば飛距離は約4ヤード伸びると言われる。だが実際は、ヘッドスピードの差以上に飛距離の差が出ている。それはなぜか? アマチュアの試打結果を見ながら考えてみよう。
平均値の争いでは“最新”ドライバーの直進安定性が「圧勝」

見ての通り、プロ以上に高反発と「ギリギリ」の飛距離差が出るという結果となっている。ヘッドスピードが約2〜3m/sアップしているのだけでは説明できない、その違いはどこから来るのだろうか。
「今度は上の表の『曲がり幅』の項目に注目してください。編集Oはスライサーなので、すべて右に飛び出していますが、曲がり幅が約半分に収まっています。ヘッドが300cc台から460ccのフルサイズへと大型化したことで、曲がり幅が劇的に改善されているんです。これは、ヘッドの進化以外の何物でもありません」(中村)
試打した実感としても、構えやすさとミスへの強さは明らか。プロの試打結果にも言えることだが、過去の高反発クラブは、右へのプッシュアウトのミスが非常に出やすい。小さいヘッドはターンしやすく、つかまりがいいなどというが、今回のテストに限って言えば、小さいヘッドほど右へのミスが出た。
肝心の「一発の飛び」はどうか? 3球のうちもっとも飛んだ1球を比較した!
プロの試打では平均約15ヤード、アマチュアの試打では平均約20ヤード以上飛距離が伸びるという結果になった。しかし、それはある意味当たり前のこと。ヘッドが大型化すればミスヒットに強くなるのは当然だし、シャフトが長くなって振りやすくなっているのもこの10数年の素材の進化を考えれば当然。
“高反発”と“超ギリギリ”真に比較すべきは「一発の飛び」だ。
3球打ったうち、もっとも手応えのあった一発の比較。芯を食った打球同士で比較した場合、最強の高反発ドライバーと、最新ドライバーではどちらが飛んだのか。確認となるが、「TR」と「TR DUO」はルール違反の高反発。「RS 2017」と「RS-F 2017」はルール“超ギリギリ”の反発性能だ。まずはプロの試打結果から見ていこう。

結論を言えば圧勝だ。平均で比べた場合に15ヤードあった差は、一発の飛び比較では約10ヤードの差とはなるが、誰がどう見ても“超ギリギリ”に軍配が上がっている。
「やはりここでも鍵を握ったのはヘッドスピードの差です。シャフトの性能差もありますが、今のクラブは曲がらないので思い切り叩ける。その結果、より速く振ることができ、飛ぶというわけです。とくに『RS−F』は、プロや上級者が嫌う左へのミスが出ないクラブ。それだけに、しっかり叩いて飛ばすことができました」(中村)
アマチュアテストでも“超ギリギリ”が圧勝だった
アマチュアの試打結果も見てみよう。やはりプロ試打結果同様、15ヤード前後“超ギリギリ”の最新ドライバーのほうが飛んでいる。

「最新ドライバーのやさしさは、プロ以上にアマチュアに恩恵があるのがよくわかりますね。正直、TRの打球は飛んではいますが右に50ヤードずれていて、コースだったらOB。つかまりのいい『RS 2017』がスライス幅を抑え、最長不倒を記録しています。気持ち良く振れて、曲がらない。ボールスピードの差からは、反発性能の差も見当たりません」(中村)

“超ギリギリ”の最新ドライバーの性能は、プロよりも、アマチュアにより恩恵があった
このテストには厳密に言えば瑕疵がある。本当の意味で“高反発”と“超ギリギリ”の反発性能を比べようと思ったら、ヘッドスピードを揃えて行わなければならないし、もしかしたらそのためには同じシャフトを同じ長さに揃えて試打をする必要があるかもしれない。
しかし、それには意味がないと我々は判断した。今ではルール違反となってしまった過去のクラブに、わざわざ最新シャフトをつけて使う人はおそらくいないし、意味がないと思うからだ。最新ドライバーは、ルールを遵守しつつ過去のクラブより圧倒的に飛ぶことが実証されたのだから。

戦い終わった4ドライバー。TRとTR DUOはかつては最強だった。しかし、現在の最強は「RS2017」であり「RS-F2017」だ
率直な感想として「RS 2017」の曲がりの少なさ、つかまりの良さ、ボールの強さは特筆ものだ。そして「RS-F 2017」は、プロが打った場合に左に行かない安定感があり、しっかりしたシャフトはハードヒッターが打ってこそ真価を発揮する、無限のポテンシャルを秘めている印象を受けた。
2017年はもしかしたら2010年代でもっとも激しいドライバーの覇権争いが繰り広げられた一年として、後の世に語り継がれることになるかもしれない。「RS 2017」と「RS-F 2017」が、その台風の目となることは間違いがなさそうだ。
「RS 2017」と「RS-F 2017」は2017年6月9日発売予定。価格は8万円+税。このドライバーは過去に発売された高反発の名器よりも、明らかに飛ぶ!