「クラウンのたわみ」で高打ち出し・低スピン化
初代モデルから“やさしくつかまる、よく飛ぶ”との評判で一気に人気ブランドとなった「GR」シリーズ。そのドライバーの特長は、クラウン(ヘッド上部)をたわませて、“高打ち出し”と“スピン量の低減”を両立して、ビッグキャリーを生み出せることだ。
これが新しい「TOUR B JGR」。前作モデルまでの特徴を、今回も踏襲し進化させている
前作は、パワーリブを設けてソールの剛性を高め、よりクラウンのたわみを大きくすることに成功。キャリーも一段と伸びた。
そして今回、ブリヂストンのスタッフがインパクトでの衝突現象を可視化して解析したところ、クラウンのフェースよりが盛り上がると同時に、ヘッド後方寄りはへこむというウェーブ状の“S字”に変形することがわかった。その“S字”を強調できれば、より高打ち出しと高初速を得られる。

つかまるうえに低スピンで高初速。飛びの要素が満載だ
そこで、新たに「ウェーブパワースリット」をクラウン後方にプラス。このクラウンのたわみ効果は、ヘッド速度の高低に関わらず、確実にプラスに働くという。

クラウン後方のスリットはなんと0.3ミリの薄肉設計! たわみ効果で初速がアップする。また、ヒールのウェートでつかまり度が向上
歴代「GR」ドライバー同様、つかまり性能は申し分なし。それでいて、アップライト設計ながら、クラウンのデザインで前作よりも見た目のアップライト感は抑えられている。フックフェースも弱め、上級者でも違和感なく構えられる“いい顔”に仕上がっている。打球音も絶妙な伸び具合で、心地良さを感じられるドライバーだ。
なかなか落ちてこない「プロ弾道」が打ててしまう
試打を担当したのは、ステディなプレーを身上とし、ポカリスウェットよみうりオープンでツアー優勝経験もある福永和宏プロ。試打をしてみると、ロフト数値以上の高打ち出しが得られ、それでいてスピン量が抑えられていることから、コンスタントに290ヤード台を連発。その飛距離はどこからくるのか、ポイントを挙げてもらった。
高弾道なのに低スピンの「重い球」が打てる
「打ち出しから高いのに、向かい風に負けない。スピン量が抑えられているのがわかります」(福永、以下同)

「高打ち出し&低スピンの重い球」
クラウンがたわむことで、ボールがフェースに乗る
「ヘッドで一旦吸収してから弾くイメージ。フェースに乗る感覚で、つかまり感もあるし、高初速で飛び出す感覚も気持ちいい。大きなハイドローが打てます」

クラウンが大きくたわんで弾き出す
シャフトのしなり戻りのタイミングが絶妙
「シャフトのしなり戻りが強いので、手元をアドレスの位置にポンと戻すだけで飛んでいく。クラウンのたわみと合致すると、ものすごく飛びます」

「高打ち出しにひと役買っている」
前モデルの良いところを正常進化させている
では、福永プロの好印象はどのような機能に裏打ちされているのだろうか。福永プロも試打で感じたクラウンのたわみは、ソール剛性を高める「ブーストパワーリブ」と、クラウンのフェース寄りにある「パワースリット」に加え、クラウン後方に「ウェーブパワースリット」を新設したのが大きい。
“細かすぎるミーリング”が無駄なスピンを減らす
ただ、それだけではない。実はフェース面にも秘密が隠されていて、フェース全面に細かいミーリングが施されている。しかも、4本ごとに1本の割合で深く刻むことで低スピン性能がアップし、弾道の安定感もアップする。

フェース全面に配された「4本に1本深い」ミーリング。これが無駄なスピンを減らしてくれる
手元しなって先しっかり。新開発シャフトで“当たり負け”を防ぐ
新開発のオリジナルシャフトは、手元は少ししなりやすく、先端剛性は高めの設計。軽量ながら当たり負けしない。重心は先寄りで、インパクトで一直線にしなり戻りつつ、ヘッド速度とミート率アップに貢献する。

先を硬めにすることで当たり負けを防ぎ、手元をゆるめにすることでしなりを感じられる
ネック調整機能はあえて「なし」! 余剰重量は最適に配分してつかまりUP
ネック調節機能を搭載しないことで生まれた余剰重量を効果的に配分し、よりつかまりの良い重心設計を目指した。
JGRといえば、とにかくつかまりの良さが評価されてきたクラブ。新しいJGRは、まさにその歴代モデルを“正常進化”させたクラブという印象だ。「つかまって飛ばせる」という、アマチュアゴルファーの大多数が求める機能を突き詰めたドライバーは、今回も大人気になりそう。
JGRアイアンはこの見た目と打感でやさしく飛ばせる
さて、新しい「JGR」はドライバーだけでなく、アイアンもラインアップされている。アイアンは「TOUR B JGR HF1」「TOUR B JGR HF2」の2モデルが新たに登場。
「HF1」はUT的なやさしさと抜群の飛距離が魅力だが、逆に「HF2」は上級者にも好まれる顔立ち。宮里藍が愛用した「JGRフォージド」とそっくりの形状だ。軟鉄ではない高反発素材のフェースながら、振動吸収ポリマーを内蔵することで、高い飛距離性能と軟鉄にも負けないマイルドな打感が味わえる。こちらも、ドライバー同様福永プロに試打してもらった。

”激飛び系”の「TOUR B JGR HF1」はハンパじゃない弾き感(左)。「TOUR B JGR HF2」は優れた飛距離性能とマイルドな打感を両立(右)
「まず、HF1の飛びはアイアンとは思えませんね。7番で200ヤードを超えちゃいました。スペック的には7番で通常の5番に匹敵しますが、ソールが広くて打球が上がりやすく、打ちやすい。シャフトも軽いけどしっかりしています」
と、まずはHF1の飛距離を評価。HF2に関しては、打感や構えたときの顔の良さが印象に残ったようだ。
「一方のHF2は、明らかに低重心設計で、上から打ち込まなきゃという雰囲気がありません。少しロフトが立っているけど、フェースの下側に当たってもラクに上がります。構えた顔はフェースのヒール側が低く、セミグースネックと相まってやさしくつかまる印象が強く、安心感があります。高強度素材のフェースですが、振動吸収ポリマーのおかげで打感がマイルドなのもいいですね」(福永プロ)
つかまって飛ばせるJGRドライバーに合わせるべきは、ブッ飛びアイアンの「HF1」か、はたまた顔の良さと飛距離性能を併せ持つ「HF2」か。どちらを選んでも、“正解”になりそうな気配だ。
写真/有原裕晶(スタジオ)、増田保雄(ロケ)