藤田が求めた機能、それは「直進安定性」

ヤマハのRMX118。藤田が求めた「勝つための機能」が詰まっている
男子ツアーの関係者に、「人柄の良いプロといえば誰?」というアンケートを取ったとしよう。きっと、藤田寛之は上位にランクインしてくる。誰に対しても分け隔てなく丁寧に対応する穏やかな人柄は、まさに男子ツアー屈指の人格者と言える。
その穏やかな人柄とは裏腹に、藤田寛之ほど厳しく勝利を希求しているプロも少ない。48歳の今も、勝利だけを目指するのはもちろん、今よりもっと上手くなることを一瞬たりとも諦めない。そんな藤田がゴルフクラブに求めることは単純だ。「勝てること」ただそれだけ。

プロトタイプを繰り返し試打し「勝てるドライバー」を追求した
では「勝てるクラブ」とはなんだろうか。20代で1勝、30代で5勝、40代で12勝と、年齢を重ねるごとに凄みを増し、しかしここ2年は勝利から見放されている藤田にとって、その答えはシンプルだ。
「(求めてきたのは)直進安定性が高く、飛距離が伸びるクラブです。そうしないと、今のツアーでは戦えません」(藤田)
そこには、藤田ならではの世界基準の考えがある。現在、世界のツアーでは300ヤードを超える飛距離は当たり前で、もはや前提と呼ぶべきレベルとなっている。日本ツアーにおいても、460CCのチタンヘッドドライバーでゴルフを覚えた若手選手たちが、以前ではほんの一握りの飛ばし屋しか出せなかった飛距離を、軽々と出している(たとえば、藤田と同じヤマハの契約プロ、今平周吾がまさにその一人だ)。
「ドライバーは、今や真っすぐドカンと直進力で飛ばす性能が最優先になっています」という藤田。かつてプロたちが最重視した“ボールを上下左右に操れること”ではなく、“思い切り振っても曲がらず真っすぐ飛ばせること”が、ドライバーには求められる時代となっているのだ。
だからこそ、藤田が求めるのは“真っすぐ、遠くに飛ばせる”という、まるでアマチュアゴルファーが求めるような機能。それが、勝つために必要なのだ。そして、そんな藤田の思いにヤマハが応えたのが、新しく登場したヤマハの「RMX118」ドライバーなのである。

藤田が手にしているのは製品版とはカラーリングが異なるプロトタイプ。こちらにはプロ用の微調整が施されているが、性能は製品版も同じだ
「(2017年)7月にプロトタイプができあがり、試打を重ね、改良を加え、コンセプトどおりの真っすぐどーんと伸びていく性能を熟成させてきました。打って感じるのは、ヘッドの大きな慣性モーメントがもたらす弾道直進力の高さです。打点がぶれても当たり負けせず真っすぐ飛ぶわけですから、そのぶん前に飛んでいきます」(藤田)
実際、弾道測定器・トラックマンの数値では、キャリーで7ヤードの飛距離アップに成功したという。藤田は2017年9月15日現在の平均飛距離が約286ヤードで、ランキング66位。正直、飛ぶほうではない。しかし、そこに単純に7ヤードという数字を足せば、その飛距離は293ヤードとなり、ランキング30位に相当する飛距離となる。奇しくも30位には今シーズン関西オープンで勝利を収めた今平周吾がいる。言葉は悪いが、藤田はRMX118により、“若い奴に負けない飛び”を取り戻したということになる。
アイアンに求めたのは究極の“抜けの良さ”

RMX018ツアーモデル。至極の打感も大きな魅力だ
そしてもうひとつ、忘れてはいけないのがRMX018ツアーモデルアイアンの存在だ。「初めて打った瞬間、思わず“これ、このまま(ツアーに)持って行っていいですか?”と言ってしまいました」と藤田はこのアイアンに一目惚れ。
早速その週の男子ツアー「セガサミー」に投入し、なんといきなりホールインワンを記録してしまう。未発表のアイアンがニュースで取り上げられてしまったことでヤマハの新製品情報公開スケジュールに誤算が生じるという笑い話も生まれたが、これは藤田とRMX018ツアーモデルの相性の良さを物語るエピソードだ。藤田によれば、直進安定性と飛距離を求めたドライバーに対し、アイアンに求めたのは“抜けの良さ”だったという。
「ソールを見るとわかりますが、前側と後ろ側の両方にラウンドが付いているでしょう。前側の面がインパクトの“入り”をスムーズにし、後ろ側のラウンドがヘッドの“抜け具合”を良くするんです」(藤田)

アイアンには「抜けの良さ」を求める
この藤田のコメントに、ホッと安心のため息を漏らした人物がいる。ヤマハのツアー担当・大西裕士氏だ。
「前作から形状が大きく(ハーフキャビティからマッスルバックへ)変わったので、プロにどう評価されるか、正直心配だったのですが、藤田プロから抜けがいいし、薄いソールなのに刺さらずにソールで受けてくれるという言葉をもらい、報われた気持ちです。横で打っているのを見ていても、気持ち良さそうに抜けていくし、インンパクトの打音もいい。プロが手ごたえを感じてくれているようなのが、なにより嬉しいです」(大西氏)
大西氏が安堵するには理由がある。実は今回のRMXの開発“裏コンセプト”は「超・藤田」というものだったという。今までのように、「藤田の求めるものを形にする」というクラブ作りではなく、「藤田の想像を超えるようなクラブをゼロベースで作る」という意気込みを込めたコンセプト。
だからこそ、できあがったものに対し、藤田が辛辣な意見を寄せる可能性も大いにあった。しかし、結果はドライバーも、アイアンも、藤田を満足させるに足る仕上がりだったというわけだ。

前後にラウンドがつけられたソールにより、抜けの良さが抜群。それにより縦の距離感を揃えることが可能となる。ちなみに“BIKKE(ビッケ)”は藤田の愛称
直進安定性が高く、ドカンと真っすぐ飛ばせるドライバー。そして、抜群の抜けの良さを持ち、どんなライからでも狙っていける機能を持つアイアン。ツアー後半戦に向け、藤田寛之の“勝つ準備”は整ったと言えそうだ。