今平周吾ら契約プロの活躍もあり、この秋の最注目モデルとなっているヤマハの「RMX118」。すでに発売から数週間が過ぎ、順調な売れ行きを見せているというが……実はひとつ疑問がある。近年、2モデル同時発売を常としていた兄弟モデル「RMX218」がまだ発売されていないのだ。「RMX218」の発売日は、「118」の発売から28日後の11月3日。この“空白の28日”が意味するものはなんなのか。その真相は、衝撃的なものだった!

製造ラインに乗せる直前に発覚したのは……「このクラブ、飛びすぎる!」

「実は、RMX218もRMX118と同じく、2017年10月6日に発売する予定だったんです」

そう語るのは、ヤマハ株式会社ゴルフHS事業推進部藤﨑康司さんだ。やはり、従来通り発売日は2モデル同日のはずだった。では、RMX218だけ発売を28日延期したのにはどんな理由があるのだろうか。

「飛び過ぎてしまったんです。ドライバーも、アイアンも。反発性能をギリギリまで高めた結果、もちろんほとんどの製品は基準値内で収まっていたのですが、製造誤差の範囲で基準値を超えるものが出る可能性が生じてしまった。そのため、発売を約ひと月“後ろ倒し”したというのが真相です」(藤崎さん、以下同)

画像: ヤマハの藤﨑康司さん。「空白の28日」の理由はなにか。RMX218の発売“後ろ倒し”の真相を語ってもらった

ヤマハの藤﨑康司さん。「空白の28日」の理由はなにか。RMX218の発売“後ろ倒し”の真相を語ってもらった

ここで、クラブの認可について、簡単に説明しておこう。今をさかのぼること約10年前の2008年、「SLEルール」と呼ばれる、フェースの反発係数が一定値を超えるものはルール不適合とするというルールが施行された。

メーカーは自社が開発したヘッドを英国ゴルフ協会に送り、審査を受ける必要がある。その際、万が一基準を上回る反発性能を示したならば、容赦なく“不適合”の烙印を押されてしまうというわけだ。

「正直、今回の218に関しては、スウィートエリアの反発性能ももちろん大切なのですが、スウィートエリアの拡大のほうに力を入れていました。結果的に、過去のモデルを見渡してももっとも芯の広いドライバーにすることができたのですが……」

と藤崎さんは苦笑いする。オフセンターヒット時でも飛距離が落ちないように芯を広げる。アマチュアゴルファーにとってありがたい性能を追求した結果、ある種の副産物としてフェース全域の反発性能がアップ。その反発性能は規制値スレスレにまで高まり、製造誤差での“万が一”が懸念されるレベルにまで到達してしまったのだという。

画像: 3万通り以上の組み合わせから生まれたというRMX218に採用された「アルティメットフェース」。反発エリアがこれにより最大化……のみならず、想定を超える超・反発性能も獲得してしまった

3万通り以上の組み合わせから生まれたというRMX218に採用された「アルティメットフェース」。反発エリアがこれにより最大化……のみならず、想定を超える超・反発性能も獲得してしまった

一方のアイアンは、マレージング鋼一体鋳造という新しい製法を採用。溶接という工程の入らないこの製法もまた、「ここまでの反発性能が出るとは思っていなかった」(藤崎さん)というように、驚異的な反発性能を示して“しまった”。

「ヤマハには、インプレスUD+2という、プラス2番手の飛びを謳ったアイアンがあります。UD+2では、反発性能を最大化するため、“新L UNITフェース”という技術を採用しているのですが、フェースの反発だけを言えば、今回のRMX218は、それを上回ってしまったんです」(藤崎さん)

フェース面を微調整。ついに発売の時を迎える

全社総力を挙げて世に送り出す体制に入っていた、RMX218に生じた、まさかの“飛びすぎ問題”。ヤマハの対応は、潔いものだった。“万が一”が起こることを避けての発売日の後ろ倒し。当然ながら営業の現場はショップへのお詫びや説明に大わらわとなり、開発チームは“ルール超え”を起こさないための対応、具体的にはフェースの肉厚に再設計を加える作業を求められた。

反発性能は落とさずに、ルールを超える可能性だけを削ぎ落とすという、難しい作業。それを、ヤマハの開発チームは、わずかな期間でやり遂げた。結果、すべてのクラブがルール適合内に収まり、かつルール限界まで迫る反発性能を持つという絶妙なバランスが実現されたという。

画像: RMX218のドライバーとアイアン。“飛びすぎる”という想定外の事態により、かえって飛び性能が証明された

RMX218のドライバーとアイアン。“飛びすぎる”という想定外の事態により、かえって飛び性能が証明された

ヤマハの本社の所在地は、かつて遠州と呼ばれた静岡県浜松市。そして、遠州人の気質は“やらまいか精神”という言葉で表現される。それは、「あれこれ考えるよりも、行動しよう」という意味。ヤマハの開発チームはまさしくこの“やらまいか精神”によって危機を乗り越えたというわけだ。

「RMXは主力商品ですから、本当は118、218、同時に発売したかったです。218の発売延期は、当然ながら想定外、痛手です。しかし、ギリギリで“飛びすぎ”が発覚したことで、安心してお客様に買っていただけますし、どこにも負けない“飛び性能”があることも改めて確信できました。発売日はもうすぐそこ。これから忙しくなりますよ」(藤崎さん)

画像: 発売前から波乱万丈の物語の主役となったRMX218は、様々な人の手を経て、それぞれの思いを乗せて、間もなく晴れて店頭に並ぶ

発売前から波乱万丈の物語の主役となったRMX218は、様々な人の手を経て、それぞれの思いを乗せて、間もなく晴れて店頭に並ぶ

災い転じて福となす。“空白の28日間”があったことにより、より研ぎ澄まされた状態で世に出るRMX218ドライバー、そしてアイアンの飛び性能を、早くたしかめたくなってしまった。

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