プロからアマチュアまで数々のゴルファーを指導してきた飛距離アップのスペシャリスト・吉田一尊。ドラコン大会に出場した経験などを活かした独自のスウィング論を提唱している。その理論を書き記した「セカンドショットは、ウェッジで。」から、飛ばしに対する意識を180度変えられる要素をご紹介しよう。

「左軸」が飛ばしの絶対条件だ!

どうすればもっと飛ばせるか。ゴルファーだったら、絶対に頭を離れないテーマですよね。僕も同じです。ニック・ファルドに憧れた高校時代から、もっと飛ばすためにはどうしたらいいか考えて、今でも考え続けています。

レッスン書を読みふけり、ファルドのビデオを見て、それこそミリ単位でファルドと同じスウィングプレーンをなぞれるように努力したりもしました。実際、ツアープロとして活動していた時期には、ほぼ完璧なオンプレーンスウィングができていました。

見た目には、ダウンスウィングで強烈なタメができて、いかにも飛びそうなスウィング。でも、当時のヘッドスピードは50m/sあるかどうか。飛距離もプロの中では「並」の域を出ませんでした。

当時の僕が考えていたのは、スウィングプレーンを筆頭に、リリースのタイミングやトップの位置、フェース面の向きなど、スウィングの「パーツ」ばかりでした。形ばかりを気にして、クラブを手で上げ、手で下ろすスウィングだったわけです。

タメを作り、それをリリースすることで飛ばす。それを突き詰めていた頃、僕は振り遅れのミスに悩んでいました。そして、振り遅れないためにリリースのタイミングを早くできるよう努力していました。その結果、努力すればするほど球はヒールに当たり、気がついたらプッシュスライスしか打てなくなっていました。

どうすれば直せるのか。試行錯誤の末、その答えが見つからないままに、僕はツアーをリタイアしました。

世間で絶対的に正しいとされるオンプレーンスウィングができていたのに、飛ばない。曲がる。いったいなぜなのか? そこから僕のスウィング研究がはじまったのです。そして、考えて考え抜いてたどり着いたのが、今現在のスウィング理論です。

画像: オンプレーンが絶対正しいのか? から始まったスウィング理論構築

オンプレーンが絶対正しいのか? から始まったスウィング理論構築

では、そのスウィング理論とはどのようなものか? それを詳しくする前に、突然ですが「弓矢」をイメージしてみてください。鉄砲が発明されるまでは、人類最強の武器だったといいます。では、なぜ、弓は矢を遠くに、正確に飛ばすことができるのか?

実は、これを考えると、ゴルフで遠くに飛ばすことを考えることに共通するキーワードが見出せるんです。

ひとつは、ゴムの動き。ひとつは、支点の維持。

詳しく解説する前に、ちょっと考えてください。もしも、木や竹で出来た弓幹部分、そしてそこに張られた弦にゴムのような弾力性がなかったら――考えるまでもなく、モノを遠くに飛ばせませんよね。

無論、弓矢が発明された当時にゴム素材は存在していませんでした。しかし、人々はなるべく弾力のある木や竹などを探し、素材とすることで、弓を大きくしならせて、より遠くまで矢を飛ばせるように工夫してきました。それは、ゴムが引き伸ばされ、戻る力に極めて似ています。このような「引き伸ばされたものが戻る力」を利用するのが、弓矢の飛ばしの秘密その1なのです。

もうひとつは、支点を維持すること。弓で実際に矢を飛ばすときのことを考えてみましょう。右利きの人なら、左手で弓幹を持ち、右手で弦を引きますよね。その際、弦を引っ張るのにつられて、支点となる左手まで同じ方向に動いてしまったらどうでしょうか。……弦は引き伸ばされず、エネルギーは発生しません。遠くに飛ばそうと思えば、右手の引っ張りに負けないよう、左手はしっかりと固定し、支点を維持しておくはずです。この「支点の維持」が、弓矢の飛ばしの秘密その2、です。

少し整理して、弓矢の飛ばしの原理をゴムに例えて説明しましょう。それは、基本的に以下の2点で説明ができます。

1.ゴムが伸びて、その反動で縮む動き(弦を引き絞り、それが戻る力で矢を飛ばす)

2.ゴムを伸ばすために必要な、支点の維持(右利きの場合、左手で支点を維持する)

これをゴルフに置き換えてみましょう。

「ゴム」に当たるのはズバリ、筋肉です。人間の筋肉にはゴムと同じような、引き伸ばされた分だけ縮むという性質があります。弓矢の例でもわかる通り、これはスピードを出すために必須の動作です。

しかし同時に、ほとんどの人はスウィングするとき、この筋肉の性質を生かしきれていません。なぜか。その理由こそ、「支点が維持されていないから」なんです。

左脚がスウィングの“支点”

よく、テークバックで極端に右にスウェイしてしまう人がいますが、これはまさに弓を固定しておくべき左手が、右手方向に動いてしまうのと同じこと。これでは飛ばせません。

では、ゴルフにおける支点とはどこにあるのか。答えは、「左脚」です。弓矢の例でいえば、左脚が弓幹部分、体の右サイドが弦に当たります。

左脚を支点にして筋肉(=ゴム)を引き伸ばす。そして、伸びた反動を利用してダウンスウィングする。この動作ができたとき、引き伸ばされた弓の弦が勢いよく戻るように体がターンし、矢が遠くに放たれるように、ボールが勢いよく飛んでいく、というわけです。

これは、剣術の「居合い切り」にも似ています。

僕は剣術に関してはまるっきりの素人ですが、詳しい人の話によると、剣術の流派の中でも、居合い切りは数百キロで飛んでくるボールを真っ二つにするほどのスピードを持つそうです。

ではなぜ速いのか、です。居合い切りって、ドラマや映画でも見かけますが、達人は必ず鞘の中に刀を納めていますよね。あれ、何故だかわかりますか? あのとき刀の柄を持つ右手は、ただ刀を持っているだけではなく、左手で固定した鞘の中で思い切り刀を引っ張っているんだそうです。普通に引っ張ったら鞘から刀が飛び出してしまいますが、鞘の中で刀の角度をほんのわずかに変えて、固定した鞘をストッパーにすることで、力を溜めているんですね。

これを、先に挙げた弓矢の例に当てはめて考えてみると、左手で支点を固定し、右手で最大限に弦を引っ張っている状態と同じ。専門用語でいうと「前緊張」という状態です。

この状態から鞘をちょっとズラせば、ストッパーが外れ、鞘の中で力を受け止めた分だけ勢いが増し、ものすごいスピードで剣先が走るのだというのです。

ゴルフスウィングに置き換えて考えてみましょう。スウィングの支点となる左脚は、居合いにおける「鞘」と同じです。居合い切りで鞘の位置を固定しておくように、左脚はスウィング中、つねに固定しておきます。それにより、体の筋肉をゴムのように伸ばすことが可能になるからです。そして、鞘をズラすのと同じように、ちょっとしたきっかけを与えてやることで、伸びた筋肉が勢いよく縮み、体を自分から能動的に動かす以上のスピードで、回転がはじまるわけです。

もう少しわかりやすく解説すると、左脚と両手首に硬いゴムが結びつけられている状態をイメージしてもらうといいかもしれません。左脚を支点に、体を右方向に回転させていくと、左脚と両手首に結ばれたゴムはどんどん伸ばされていきます。支点を維持したまま伸ばし続けていくと、どこかのタイミングでゴムが元に戻る作用が働き、体が左方向へ高速回転する、というわけです。

画像: 左脚を支点にしてスウィングすることが飛ばしの根幹だった

左脚を支点にしてスウィングすることが飛ばしの根幹だった

ゴルフではOBやチョロを打っても命まではとられませんが、剣術の世界は一手間違えば相手に命をとられてしまいます。いわば、剣の技は生死の境で編み出された技術。そんな剣術の世界にも、「支点の維持」と「ゴムの動き」のエッセンスが取り入れられている。そして、「支点」となるのは弓矢の例でも、居合い切りの例でも「左」サイドです。ならば、ゴルフでも「左軸」でスウィングするのが正しいと考えるのが自然だと僕は思っています。

そう、本書を通じて僕がみなさんにお伝えしたいと思っている「正しいスウィング」とは、「左軸スウィング」のことなんです。

写真/姉崎正、亀山修

吉田一尊(よしだ・かずたか)著書:「セカンドショットは、ウェッジで。」(ゴルフダイジェスト社)より※刊行当時の名前の表記は吉田一誉

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