海の向こうの米女子ツアーではかつて天才少女の名をほしいままにしたミッシェル・ウィが久しぶりに優勝。国内ツアーに目を向けると、8歳で「世界ジュニア選手権」を制した元祖・天才少女のキンクミこと金田久美子がビッグチェンジをしているようだ。国内女子ツアー第2戦「ヨコハマタイヤゴルフトーナメント PRGRレディスカップ」開幕を前に、バージョンアップした天才少女の今をプロゴルファー・中村修がレポート。

ライン出しショットを繰り返すことでスウィングに変化が……!?

昨シーズン、金田久美子選手は賞金ランキング62位と賞金シード獲得に失敗しましたが、今季の出場権をかけたファイナルQT(最終予選会)では5位に入りました。鈴木愛選手を育て、現在は成田美寿々選手のパッティングコーチを務めるなど、女子選手を多数サポートする南秀樹プロと契約した成果が、年末になって出てきたことを感じさせました。

さて、そんな金田選手の“変化”を開幕戦の練習場でチェックしてみました。一言で言って、その変化は思わず“二度見”するほどのものでした。

練習場で金田選手が繰り返していたのは、スピン量をコントロールしながら低い弾道でピンポイントで狙う「ライン出し」ショット。タイガー・ウッズの放つ超低空ショット、スティンガーが有名ですが、どちらかといえば男子プロが得意とする技術です。

金田選手といえば、スウィング中にフェースを開かないシャットフェースが特徴で、球筋はフック系。ライン出しのようなショットが得意なタイプには、失礼ながら見えませんでした。

その金田選手が、風の強い沖縄の練習場で、同じ距離、同じ高さの球を何度も再現性高く打っていました。フィニッシュでクラブが胸の前に収まるコンパクトなフィニッシュ。フック回転は少なくなり、きれいにバックスピンの入ったボールが、ターゲット目がけて一直線に飛んでいきます。明らかに“バージョンアップ”しています。

画像: コンパクトなフィニッシュのライン出しショットを繰り返していた金田

コンパクトなフィニッシュのライン出しショットを繰り返していた金田

アイアンショットだけでなく、ドライバーにもその効果は表れているようで、昨年まではスタンスの真ん中に近い位置にボールをセットしていましたが、やや左に置き気持ちよく振れていました。ボール位置が変わるというのは、プロにとって非常に大きいことです。

金田選手のスウィング改造を導いた南秀樹コーチに話を聞いてみました。

「金田プロは、独特のインパクトのフィーリングを持っている選手です。その感覚は壊さないようにしながら、どういうふうにボールをとらえるかといったことを話し合いながら(改造を)進めています。そういったフィーリングの修正が、結果的に形の変化として表れているのだと思います」(南)

南秀樹コーチの指導法は、選手個々の持つフィーリングを生かしながら、ボールをコントロールする方法を導いていくタイプで、型にはめるタイプではありません。独特のフィーリングを持ち、天性のボールストライカーである金田選手との相性は抜群だったのでしょう。

金田選手本人にスウィングの変化について聞いてみたところ意外な答えが返ってきました。

「スウィングを大きく変えてるという意識はないんです。オフの間にライン出しショットを数多く練習してきたことで、ボールをとらえる感覚が良くなってきたのかな。球のばらつきが減りコントロールが効くようになってきたと思っています」(金田久美子)

つまり、スウィングを変えようと思って変えたのではなく、ライン出しショットを繰り返し練習し、球のとらえ方に関してコーチとディスカッションを繰り返すことで、自然にスウィングが変化し、球筋も変わってきたというわけです。

現在世界ランク1位のダスティン・ジョンソンが、名コーチであるブッチ・ハーモンに指導を受けはじめるに際し、自身の特徴であるトップで左手首が手の平側に折れる動きを直したほうがいいかと聞いたところ「直さなくていい」という答えがかえってきたと言います。

そのことに関して、ブッチ・ハーモンについて直接訪ねたことがあります。すると、「スウィングはナチュラルなのが一番大事なんです。今じゃDJは世界ランク1位でしょ?」という答えが返ってきました。今回の金田選手と南コーチへの取材を通じて、そのことをふと思い返しました。

天才とうたわれた感覚はそのままに、正確なスウィングのメカニックも手に入れた金田選手。今シーズンは、7年ぶりのツアー2勝目を大いに期待したいと思います。

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