中嶋常幸が、今年限りでの「日本ゴルフツアー選手権」からの撤退を表明。事実上、メジャーの舞台から身を引くということになった。「日本」と名のつくタイトルと深く関わった中嶋が、今の自分のゴルフ、そしてライバル・ジャンボ尾崎に対して思うことなどを語った。

「キャリーで250飛ばなくなり、予選が通らなくなったら引退」と決めていた

Q:メジャー最後ということになりましたけれど、中嶋さんにとって日本のメジャーとは?

中嶋:日本アマも含めたらこれまで相当関わってきたし、日本オープンは青木(功)さんとジャンボ(尾崎)さんと本当に熱い戦いを繰り広げて、その中で4回も勝つことができたし、日本プロも3回勝てたり、本当にメジャーに悔いがないって言っていいよね。本当にいい思い出をたくさん作れたと思う。選手としては何の後悔もないし悔いもない。自分のやってきたことはゴルフに関しては満足している。

画像: 「日本ゴルフツアー選手権」の卒業を表明した中嶋

「日本ゴルフツアー選手権」の卒業を表明した中嶋

Q:(今大会に)出る前に「今年ダメだったら……」というのは考えていた?

A:もう何年も前からキャリーで250ヤード飛ばなくなった。予選が一つも通らなくなった。それが重なったときには「卒業だ」ということは何年も前から言ってたし、自分の雑誌のコラムでも書いていた。5、6年前かな? 実際はまだ250ヤードはクリアできる。今週の火曜日に(弾道計測器の)トラックマンで測ったら「279(ヤード)」っていう数字が出たんでね。でもそれって練習場の「279」、それは一つの指針かもしれないけれど、自分の中ではもう結論は出たよね。こういう真剣勝負のメジャーは若い者に譲るべきだという決心が自分の中で出た。

それはなにが理由でとかではない。250と予選が一回も通らなくなったら、もう無理だなってことで卒業は決めていたけど、それは数字上の話であって心の話ではない。心の中で「自分はもういい」っていう気持ちになった。

画像: 中嶋は2日間を戦い抜き、11オーバー118位タイで予選落ちを喫した

中嶋は2日間を戦い抜き、11オーバー118位タイで予選落ちを喫した

「ひとつでも真剣勝負の枠を空けてあげたい」

Q:本当に悔いはない?

中嶋:ないない。そんな簡単に考えたことじゃないもん。自分で時間をかけてじっくり考えて出た答えだから、「先週こうだったけど、今週はこう」とかいう話ではない。去年くらいからもうそろそろだなとは感じていたし。

だから、時間が経って「もう一回出ればよかった」なんてことは思わない。逆にそういったことを言っちゃいけない。簡単な気持ちで「引退だ、卒業だ」ということは言っちゃいけない。やっぱり永久シードにはそれだけの重さがあると思うし、俺としてはひとつでも真剣勝負の枠を空けてあげたいし。これからまったくツアーに出ないわけじゃないし。(ダンロップ)福島オープンなんて毎年出させてもらっているし、メジャーの試合に関しては卒業しますということです。

画像: 「ひとつでも真剣勝負の枠を空けてあげたい」

Q:一方、(8歳年上の)ジャンボさんはまだまだ続けていますが。

中嶋:それはもう一人一人の価値観だから、どれが正解でどれが間違いとかいうものはない。それは彼がそう思う気持ちで、価値観でやっていくんだから、それは僕は応援したい。なんら恥ずかしがることはない。スコアが悪くて何か言う人がいたとしても、それは違うと思う。だって自分で勝ち取ってきた権利じゃない。これは挑戦し続けていくジャンボはジャンボでその価値観でやっていくわけだしいいんじゃない。俺はもうその道はいらない。

Q:今回に関しては青木さんやジャンボさんとは(事前に話した)?

中嶋:誰にも話していない。相談したのはうちの家内くらい。

Q:奥さんは何か言われてましたか?

中嶋:「もう十分やってきたと思う」って言ってました。まあ、事故・怪我の影響があるかもしれないけれど、十二分に試合で戦っていける体じゃなくなってきた。それが一番だな。トーナメントで戦うっていうのは、アスリートでなきゃいけない。やっぱり鍛え抜かれた体でないと、こういう試合は戦えないと。

そりゃあね、どうしても20代と一緒のトレーニングをしろと言ったって無理だし。20と28はそうは違わないんだけど、55と63はえらい違うよ。55までは思わなかったけれどね。これっぽっちも。俺まだまだ全然オッケーって。で、55を超えて「アレ? ちょっとヤバイな……。60超えたらガクっときて、さすがに63になったらもう無理だね」って思ったね。

画像: ホールアウト後、ギャラリーからのサインにも丁寧に応じた

ホールアウト後、ギャラリーからのサインにも丁寧に応じた

Q:やり残したことはない?

A:やり残したっていうのはとくに。悔いなしっていう言葉ひとつですね。それでまた新しいスタートを切ろうっていう気持ちだね。悔いがあったらもっとムカッとした顔しているよ(笑)。

写真/姉崎正

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