「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」のプロアマ戦で、片山晋呉と一緒にプレーしたアマチュアが不愉快な思いをし、プレーを中断したという問題が波紋を広げている。そもそもプロアマとはどのような場なのか、そして、プロにはどのような態度が求められるのか。日米を比較しつつ、プロの意見を聞いた。

「プロアマというのは、プロゴルファーがゲストをおもてなしする場であり、自分の練習の時間ではないというのは当然のこと。ただ、片山選手に限らず、多くの選手が慣例的にプロアマで練習を行っているのも事実です。もちろん、ホスピタリティを持ってプロアマに臨んでいる選手も多くいますが、男子ツアー全体の感覚が、どこかマヒしている部分もあったのだと思います。今回のことは、ツアー全体の問題としてとらえなければいけません」(中井)

そう語るのは、プロゴルファーの中井学。プロアマとは大会のスポンサーがゲストを招く場であり、スポンサーはプロに、自分たちのゲストをもてなすことを期待するのは当然。

しかし、かつてはプロアマ戦ではプロとアマが異なるティグラウンドからプレーし、プレー中にほとんど口を聞かないということもあった。それではゲストの満足度も高まらず、スポンサーメリットにつながらない。そこで、今年に入り新選手会長となった石川遼がプロアマを重要視し、“ゲストファースト”という指針を打ち出している。

「僕自身は、スポンサーからの推薦でツアーに出させていただく身。もしプロアマに呼ばれれば、練習は一切せずにゲストのラインを読んだり、技術指導を行うと決めています。それがスポンサーに対する責務だと思うからです。そのような態度は“賞金稼ぎ”のプロとしては甘いと言われることもあります。しかし、スポンサーがいなければ試合が存在せず、試合がなければファンにプレーを見せることもできません」(中井)

プロアマは、多くの場合大会初日の前日に開催される。それだけに、とくにグリーン上の状態を把握しておきたいというのはツアープロならば誰もが思うこと。しかし、男子ツアー界全体のことを考えれば、自分のボールの転がりよりも、目の前にいるゲストのボールの行方を真剣に追うほうが重要であることを、男子プロ全員で再度認識する必要があると中井は言う。

画像: 日本プロのプロアマで、同伴者と笑顔でハイタッチを交わす元選手会長・池田勇太。あいにくの天気でも、楽しそうな空気が伝わってくる(写真/2018年の日本プロゴルフ選手権)

日本プロのプロアマで、同伴者と笑顔でハイタッチを交わす元選手会長・池田勇太。あいにくの天気でも、楽しそうな空気が伝わってくる(写真/2018年の日本プロゴルフ選手権)

プロアマを大切にしているというと、ゲストへのもてなしを重視する国内女子ツアーが思い浮かぶが、世界最高峰のPGA(米男子)ツアーでもそれは同じことだ。米国在住のプロゴルファー・レックス倉本はこう語る。

「PGAツアーでは、プロアマの前夜祭でどのプロとラウンドできるかの抽選があったりして、『プロアマを盛り上げよう』という意識が強くあります。プロアマに欠場したら本戦に出場できないのは日本ツアーと同じですが、選手はプロアマの日はあくまでもホスト役に徹しています。もちろん、スター選手でも同じです」(倉本)

ツアーも、選手も、プロアマの重要性を認識し、それを盛り上げるために全力を尽くしている。石川遼が実現しようとしている「ゲストファースト」のプロアマ構想も、PGAツアーでの経験が背景にはあるのだろう。

「大事なのは、我々男子プロが今回の問題を『個人の問題』と片付けるのではなく、自分たちの問題であると受け止めること。我々の感覚と世間の感覚のズレを再度認識し、同じことが起きないように、一人一人が自分たちの態度を改める。そのきっかけにしなければいけません」(中井)

たとえばPGAツアーのトップ選手は、いいスコアで回るからファンに尊敬されるのではなく、日頃からファンやスポンサーにホスピタリティを持って接するからこそ尊敬を集めるのだと中井。見習うべきは見習うべきだろう。

ミズノオープンの土曜日には、予選落ちした選手とジュニアゴルファーがプレーする「土曜プロアマ」が実施されるなど、石川選手会長の元、今まさに進行中のプロアマ改革、ツアー改革。改革を進めるためには、一人ひとりの意識改革が、今以上に求められる。

撮影/姉崎正

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