複数のプロフェッショナルたちからそれぞれ専門分野を学ぶ完全分業制の欧米スタイルと、師匠からあらゆることを吸収する昔ながらの師弟関係。ゴルフ界でも起こる選手の育成方法の変化について、タケ小山の著書「ゴルフは100球打つより見てなんぼ!」からご紹介。

自分に合った指導スタイルを見つける

ここ最近、ゴルフに限らず他の競技でも、選手の育成方法がかなり変わってきました。「コーチング論」「トレーニング論」という言葉が身近になり、科学的な研究が進んで、選手の育成が欧米スタイルに近くなっています。

日本のゴルフ界も、現在では「プロコーチ」と呼ばれる人たちが、ジュニアの育成やトッププロのコーチを受け持ち、指導法が少しずつ欧米スタイルになっています。しかし、それはまだ一部に限られていて、心・技・体のすべてを、師匠から吸収する昔ながらの師弟関係が根強く残っているというのが現状です。

トッププロの世界にも、「ジャンボ軍団」「青木ファミリー」「チームセリザワ」というような、派閥や師弟関係とは少し違うグループ的なものが存在しますが、それも欧米にはない、日本独特の文化でしょう。

画像: 今シーズン注目の原英莉花(右)と田村亜矢(左)。ともにジャンボこと尾崎将司の直接指導を受けている

今シーズン注目の原英莉花(右)と田村亜矢(左)。ともにジャンボこと尾崎将司の直接指導を受けている

アメリカの場合は、技術コーチやコンディショニングコーチ、メンタルコーチと、日本の言葉でいう心・技・体の分野を、それぞれ別の指導者が担当するという、完全分業制が基本です。前述した米ツアーのテレビ中継番組の作り方と同じで、それぞれの分野にスペシャリストがいて、他の分野には一切、手を出さないのが欧米スタイルの指導法です。

しかし、この欧米スタイルが必ずしも正しいというわけでもない。たとえば、日本ゴルフ界の礎を築いた中村寅吉さんや小野光一さんといった方たちは、日本的なスタイルでカナダ・カップに優勝して、見事世界一になりました。

その後、中村寅吉さんは日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)を創設し、付きっきりで指導した弟子の樋口久子さんが、77年に全米女子プロを制して、日本人として初のメジャーチャンピオンになったのです。まさに、師弟関係で勝ち取った快挙といえるでしょう。

画像: 日本人唯一のメジャー覇者・樋口久子(右)は中村寅吉(左)が育てた

日本人唯一のメジャー覇者・樋口久子(右)は中村寅吉(左)が育てた

宮里藍ちゃん(編注:2017年に引退)も、父・優さんとの師弟関係で勝利を積み上げ、日本を代表する選手になりました。しかし、アメリカに渡ってからは、なかなか優勝できませんでしたよね。それで、藍ちゃんはどうしたかというと、優さんとの師弟関係も続けつつ、すべてが分業制の欧米スタイルの指導も取り入れ、成功したのです。

国や地域によって文化の違いがあるし、どちらが正しいやり方だということではありませんが、大切なのは、時代や流行に流されることなく、今の自分には何がいちばんプラスになるかを、自分自身で見極められるようになることです。これは、プロだけでなく、アマチュアが自分のコーチを探すときにも、同じことがいえます。

「ゴルフは100球打つより見てなんぼ!」(ゴルフダイジェスト新書)より

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