今週のPGAツアーはトラベラーズ選手権です。コネチカット州のハートフォードは「保険の首都」という異名を持つほど保険業の多くが拠点を構える町で、1952年に「インシュアランスシティーオープン」という大会名で始まりました。冠スポンサーは何度か変わりましたが、2007年からはアメリカ最大の保険会社トラベラーズが冠スポンサーになって行われています。
会場のTPCリバーハイランドは6,841ヤードとPGAツアーではペブルビーチに次ぐ短いコースです。ジム・フューリックがPGAツアー史上初の58を出したり、ケビン・ストリールマンが最終日上がり7連続バーディーというツアー記録を出して逆転優勝したりなど爆発的なスコアが出る一方で、優勝スコアは例年それほどロースコアにはならず、昨年はジョーダン・スピースがバンカーからチップインをする劇的な幕切れでしたが12アンダーの優勝でした。
前週の全米オープンが16アンダーで、そこより1000ヤードも短いコースで12アンダーの優勝ということで、改めてゴルフの難易度は距離ではないのだということで話題になりました。
またこの大会はギャラリーがよく入る大会としても知られていて、昨年は1週間で29万人を動員し、フェニックスオープンに次ぐギャラリーの多い大会になりました。
昨シーズンからPGAツアーが「前シーズンに25試合出なかった選手はここ4年出ていない大会をひとつ選んでスケジュールに加えること」という新しいポリシーを出したおかげもあって、今までこの大会に出たことがなかったスピースやマキロイの参戦に加えて劇的な終わり方もあって大会は非常に盛り上がり、昨シーズンの「トーナメント・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。
今年もディフェンディングチャンピオンのスピースをはじめ、全米オープンを連覇したケプカ、昨年に引き続きマキロイ、デイ、トーマスなどの世界ランキング上位者たちが参戦します。
わたしが今週注目している選手はまずはパトリック・カントレー。まだUCLAの学生だった2011年のUSオープンでローアマを獲得し、翌週のこの大会で2日目に60というスコアでまわりその週の主役のひとりになりました。
プロ転向してからはケガに泣かされ、一番の親友だったキャディの交通事故死などもありましたが、昨年ようやくツアーに復帰し、プロになって初めてこの大会に出場します。ここ6試合で3回トップ10と好調でもあり、ここで活躍してライダーカップ(編注:2年に1度開催される欧米の対抗戦)の出場者争いに入ってくるのではと期待しています。
それから昨シーズンの新人王ザンダー・シャウフェレ。昨年はメジャーデビューとなった全米オープンで5位タイに入り、翌週のこの大会で14位タイ、そして2週間後の初優勝へとつながっていきました。今年も全米オープンで6位タイと2年連続の上位フィニッシュで勢いがあります。
この時期は大学を出た若者のプロ転向の時期でもあります(編注:アメリカの大学は5月卒業が多い)。今年のマスターズでローアマを獲得し、先週まで世界アマチュアランキング1位に君臨していたダグ・ギムがプロデビューします。
また先週の全米オープンで20位タイという素晴らしいプロデビューとなったディラン・マイヤー。イリノイ大学出身でトム・カイトのようなメガネの風貌が印象的な22歳は連戦でプロ2戦目に挑みます。デビューしたての大学のトップ選手たちからも目が離せません。
今年も大ギャラリーが近い劇場のようなTPCリバーハイランドの18番ホールで大歓声を浴びるのはどの選手でしょうか。