ゴルフの試合を観ていると、優勝スコアが20アンダーなんていう試合がある一方、世界のトップが集う試合の優勝スコアが1オーバー、なんてことがある。なんで試合によってこんなにスコアが違うの? いまさら聞けない基本の部分を、プロに解説してもらった。

「ゴルフの試合の優勝スコアって、どうして大会によって全然違うの?」

ゴルフの初心者の方、ゴルフをしない方などから、たまにこんな素朴な疑問をもらうことがあります。たしかに、6月に行われた世界最高峰の試合のひとつ、「全米オープン」の優勝スコアは1オーバー。その翌週に行われた国内ツアー「ダンロップ・スリクソン福島オープン」の優勝スコアは20アンダーで、実に21打も差があります。1オーバーは、福島オープンなら65位に相当するスコア。なぜ、こんなに違いが起こるのでしょうか?

理由は大きく2つ、コースセッティングと天候や風による気象条件の違いによります。

コースセッティングとは主に、コースの長さやフェアウェイの幅、ラフの長さ、グリーンの速さ、硬さ、そしてピンを切る位置のことを指します。

コースが長くなれば、より長い距離を打つクラブを多用することになります。長い距離を打つクラブは、ボールを上げたり、コントロールするのが難しいため、ピンの周りに止めることが難しくなります。

画像: アース・モンダミンカップでの成田美寿々の優勝スコアは17アンダーと非常にハイスコアだった

アース・モンダミンカップでの成田美寿々の優勝スコアは17アンダーと非常にハイスコアだった

芝が10ミリ程度に短く刈り込まれ、ショットが打ちやすいフェアウェイの幅が狭く、代わりに芝が長く伸ばされてショットが打ちにくいラフが伸びていれば伸びているほど、一番距離の出るクラブであるドライバーの難易度が増します。

ボールを狙って止めるとき、柔らかい布団の上に投げるのと、カチカチのコンクリートの上に投げるのとでは、後者のほうが止めにくいのは明らかで、グリーンは硬いほど難易度が上がり、グリーンの速さといって、芝を刈りこんで転がるボールのスピードを上げれば上げるほど、ボールをカップに沈める難度は上がります。

全米オープンは、距離が長く、フェアウェイは狭くはありませんでしたがラフは深く、グリーンはカチコチかつ高速でした。また、ゴルフを知らない人は驚かれるかもしれませんが、グリーン上のカップの位置は、4日間のトーナメントで毎日変わります。詳細は省きますが、このピン位置によっても、難易度は跳ね上がります。

最後に、決定的にスコアに影響するのが気象条件、とくに風です。ゴルフはボールを空中に飛ばして、正確にターゲットを狙うゲームですから、風には強く影響を受けます。7月に開催される全英オープンという試合では強風がよく吹き荒れ、選手たちを苦しめます。風のない午前中にプレーした選手がスコアが良く、風が強く吹いた午後の選手はスコアを崩す。そんなことも決して珍しいことではありません。

画像: 2018年の全米オープンは、主催者も想定外と認めるほどの風が吹き、大荒れのスコアとなった

2018年の全米オープンは、主催者も想定外と認めるほどの風が吹き、大荒れのスコアとなった

フェアウェイの幅やラフの長さはトーナメントが始まってしまうと変更することはありませんが、グリーンの硬さや速さ、ピンの位置は変えられるので、選手のスコアを見ながらトーナメントディレクターが“調整”することもあります。

想定したスコアよりも上回っている場合は、ローラーをかけるなどしてグリーンを硬く・速くし、ピン位置も難しくすればスコアを抑えることができ、グリーンを軟らかくしていピン位置を平らな場所にすればスコアを伸ばすこともできるんです。それも、想定外の強風が吹けば話は大きく変わってしまいますが……。

このように、主催者の決めるコースセッティング次第で、そして主催者すらもコントロールできない大自然の気まぐれによって、ゴルフの優勝スコアは大きく異なるのです。ぜひ、トーナメント観戦の参考にしてみてくださいね。

撮影/岡沢裕行

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