引退した宮里藍が最後に勝った試合で米女子ツアー勝利を収めた畑岡奈紗。同ツアー9勝を挙げ、世界ランク1位にもなった宮里の“後継者”としても期待がかかる。畑岡は将来“藍超え”を果たすことができるのか、二人の米女子ツアー選手をデータ面で比較してみた!

比較したのは、絶好調をキープする今シーズンの畑岡奈紗と、シーズン5勝という輝かしい戦績を残し、世界ランク1位にもなった宮里藍の2010年シーズンのスタッツ(部門別データ)。それぞれを表にまとめたものが、画像1だ。

画像: 画像1

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まずは、現在はメジャーへと昇格したビッグトーナメント「エビアンマスターズ」で涙の初優勝を遂げた翌年、2010年の宮里藍のスタッツを見てみよう。開幕から2連勝、日本人歴代最多の年間5勝を挙げた、光り輝くようなシーズンの数字だ。

なんといっても目を引くのはパット数のスタッツ。パーオン時平均パット数は堂々の1位。ラウンド平均パット数でも3位につけている。1ラウンドの平均パット数はパーオン率が低いほど良くなる(寄せワンが増えるため)傾向があるが、パーオン時平均パット数はそうとも言えない。いずれの指標でもトップクラスというのは、パットの名手・宮里ならではのスタッツだ。

画像: 2010年の宮里藍のスタッツを見ると、パットの上手さが数字に表れている(写真は2010年のNEC軽井沢72ゴルフトーナメント 撮影/姉崎正)

2010年の宮里藍のスタッツを見ると、パットの上手さが数字に表れている(写真は2010年のNEC軽井沢72ゴルフトーナメント 撮影/姉崎正)

平均飛距離は78位といい数字とは言えず、結果的にパーオン率は69位と高くない。つまり、バーディパットを打つ頻度は他の選手に比べて低い。にも関わらず、平均スコアは70.65で全体の7位。寄せとパットでスコアを守りつつ、チャンスは確実にモノにするパットの冴えが数字から見て取れる。そしてもちろん、バーディを奪う上では、抜群の精度でチャンスにつけるユーティリティクラブの存在も見逃せないだろう。

一方の畑岡のスタッツを眺めると、藍とは特徴が大きく異なるものの、いい数字が並ぶ。飛距離は262.57ヤードでツアー26位と、世界のレベルでもまったく引けをとっていない。フェアウェイキープ率こそ96位と順位が悪いが、肝心のパーオン率は33位と悪くない。表にはないが、ホールインワン数は「2」で堂々の単独1位。ショット力は屈指だ。

画像: 平均飛距離262.57ヤードと、屈指のショット力を持つ畑岡奈紗(写真は2018年のダイキンオーキッドレディス 撮影/岡沢裕行)

平均飛距離262.57ヤードと、屈指のショット力を持つ畑岡奈紗(写真は2018年のダイキンオーキッドレディス 撮影/岡沢裕行)

宮里が飛距離で負けてもフェアウェイをしっかりキープしていたのに対し、畑岡は飛距離のアドバンテージを生かしてより短いクラブでグリーンをキャッチしている。男子の松山英樹もそうだが、「飛距離で負けていない」のは、畑岡の間違いのない強みだ。

一方、畑岡はパット関連の指標も悪くなく、パーオン時平均パット数は12位、1ラウンドの平均パット数は26位につけている。平均スコアは70.31で17位。2010年の宮里が70.65で7位だったから、この10年弱でのツアー全体のレベルアップがうかがえる。

データから見てみると、畑岡は、2010年の宮里のような圧倒的なパット力こそない(そもそも2010年の宮里のパット指標は完全なる世界のトップなので仕方がない)が、飛距離においては20ヤード弱上回り、それがもたらす高いパーオン率により、多くのバーディパットを打てている。

数字的には2010年の宮里藍と見比べても特徴は異なれど見劣りはせず、すでに十分に一流選手の域に達していると言える畑岡。しかし、たとえば現在賞金ランク1位で世界ランク3位のアリヤ・ジュタヌガーンの平均スコアは69.52という数字で、単純計算すると畑岡よりも1日平均「0.79打」いいことになる。米女子ツアーは、さらなるハイスコアの時代に突入している。

とはいえ、19歳の畑岡にまだまだ伸び代が残されているのも明らか。2010年は宮里にとって25歳を迎える年だったが、現在の世界ランクトップ5の選手の平均年齢も25.4歳とそれに近く、畑岡が選手として成熟していくまでの時間は十分すぎるほどあると言える。

畑岡がどこまで成長していくのか、今後も注目していきたい。

※データは記事執筆時点(2018年7月11日)のもの

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