「目土をすることで、難易度が変化してしまう。それが一番の理由なんです」
プロの試合で打った後にできる“ディボット跡”に目土をしない理由を教えてくれたのは、プロゴルファーの中井学。

アマチュアならばディボット跡には目土をするのが当たり前のマナー。プロトーナメントの場合、目土をしないのが基本だというのだが、その理由は!?
「芝の修復のためには、もちろん打った後すぐに目土を入れる必要があります。しかし、プロの試合に限っては、たとえば目土をしたことによってそのライの難易度が上がってしまうとか、そういった事態が起こってしまうんです。それを避けるために、基本的には目土を行いません」(中井)
トーナメントの場合、そのような理由から、プレー中は選手もキャディも目土を行わず、全選手がホールアウトした後でコースのスタッフなどが一斉に補修するといったケースが多いようだ。
ただ、さすがに一晩やふた晩で芝は修復されない。そのため、ホールによっては選手の打ったボールが集まりやすい“コレクションエリア”は、ディボット跡やその修復跡だらけという事態になってしまう。
中井いわく、打ちやすいのは砂の入った状態ではなく、むしろディボット跡がそのままの状態。そのため、当然ながらそのようなコレクションエリアを避ける戦略も存在する。

砂が盛り上がった状態だと難易度が上がってしまう
「ディボット跡からは、ややトップ目に打つケースが多いのですが、奥がOBとか手前が池のホールではそういった打ち方を選択したくありません。ですので、あえてコレクションエリアの手前に置くといったことをホールによっては行います」(中井)
中井いわく、ディボット跡にハマる危険性の高い残り70ヤードより、いいライに残る確率の高い100ヤードを選択するケースは十分に考えられるのだそうだ。かなり細かい部分だが、プロならではの戦略なので、トーナメント観戦の際は気にしてみると面白いかもしれない。
さて、一方アマチュア競技の場合はどうなのか。マグレガーCCを運営するマグレガーゴルフジャパンの企画開発部に所属し、自身も競技ゴルファーとして活躍する松下健は言う。
「ジュニアや学生競技の場合、目土袋を携帯しないと試合に出られないくらいで、アマチュアの試合は目土を行います。ただ、競技はほとんどキャディ付きなので、キャディさんが行い、プレーヤーが行うケースは少ない。私は自分で目土をする派なのですが、少数派ですね」(松下)
ゴルフ場の運営にも関わるアマチュアゴルファーらしい意見だが、自分で目土を行うときはライの改善のルール違反の疑いが持たれないよう、目土は必ず打った後に行うなど、かなり気を使うのだとか。
というわけで、プロとアマでは試合中に目土をする・しないに大きな違いがあった。もちろん、競技ゴルファーでないアマチュアならば、自分の打った跡は自分で埋めるのがマナー。ショットの際は、目土袋の携行をお忘れなく。
撮影/増田保雄