これまでのアッタスシリーズを含め、シャフトは一般に、粘り系、走り系、弾き系などそれぞれに個性を持つが、「ジ・アッタス」は独特の特性ゆえ、こうした従来の分け方には当てはまらない。強いて言うなら、粘りと走りを両立させた“粘走り(ねばしり)”系だ。手元から先端までの滑らかな剛性によって、切り返しでやや粘って滑らかに戻り、インパクトではしっかり走るというもの。

幅広いスペックもThe ATTASの魅力のひとつ。今回は4Sから7Xまでの8種類をテスト
これは手元から先端までの剛性分布を極限まで滑らかにすることで可能になったもので、これまでにない振り心地を実現。どんなプレーヤー(スウィングタイプ)でも、どんなヘッドスピードでもタイミングが取りやすく、またどんなヘッドにも違和感なくマッチし、最大のパフォーマンスを生み出すという。
さすがに、シリーズの集大成というだけのことはありそうだが。フレックスと重量のラインアップは40グラム台のRから70グラム台のXまで12種類をラインナップ。今回は40グラム台の「4」から50グラム台の「5」、60グラム台の「6」、70グラム台の「7」までの4機種のSとXの計8本を試打。ヘッドはすべてピンG400 MAXでロフトは10.5度に統一した。

ピンG400 MAXの10.5度に8種類のシャフトを差し替えてテストした。高慣性モーメントがウリのヘッドで、The ATTASとは相性抜群
40グラム台はつかまり抜群! スライサーが飛距離を伸ばせる
まずは最も軽い重量帯の「4S」から試打をスタートした。ヘッドスピード43~44m/sで打つと、ややつかまりすぎる感じか。そこで40~42m/s程度に落とすと、きれいなドローボールが出た。
「全体に滑らかにしなってクセのない挙動だけど、とくに中間から先端にかけてスムーズなしなりで簡単につかまえてくれる。G400 MAXはもともとつかまりのいいヘッドですが、その特性を100%生かしてくれます。高さも出るし、これだったらヘッドスピード40m/s前後のスライサーにはズバリでしょうね」(中村)

次に「4X」を打ってみた。ATTASは前作にあたる「ATTAS CoooL」で軽くて硬い“軽硬”を提唱。素材の進化で軽くてもしっかりとしたシャフトを作ることできるようになった結果、ヘッドスピードを高める軽量シャフトの恩恵を受けつつ、シャフトが暴れないから球筋もバラつかないという夢のスペックを実現させている。今回のThe ATTASではどうか。
打ってみると、同じドロー系でも「4S」よりはその幅がやや小さくなり、ストレート系に近づいた。
「Xとはいっても硬すぎる感じはまったくない。これだったらヘッドスピード42m/sくらいでも十分いけそうですね。とくに、つかまり系のヘッドを使っている人にとっては、方向性も飛距離もより安定するでしょうね。
つかまり系のヘッドでも、シャフトによってはヘッド特性を殺してしまって全く逆の結果になってしまうこともあるけれど、これはその心配が全然ないという。
「入力(スウィング)に対して素直に反応してくれるので、ヘッドの特性をそのまま素直に出力してくれるシャフトですね。一般的に言えばクセがないということになるのかもしれないけれど、そのなかでもよけいな主張をせずに走ってくれるから、安心して振れるのがいいですね」(中村)
4S試打データ
ヘッドスピード 41m/s
飛距離 229Y
打出し角 12.1度
スピン量 2850rpm
4X試打データ
ヘッドスピード 42.2m/s
飛距離 236Y
打出し角 12.8度
スピン量 3270rpm
ヘッドスピード42.2m/sという平均的かそれより少し速いくらいのヘッドスピードで打って、240ヤードに迫る飛距離が出た。「Xシャフトなんて、俺には無理」そんな風に感じる人は少なくないと思うが、ジ・アッタスの40グラム台ならばそのハードルは低い。ぜひ、一度試してもらいたいスペックだ。
目からウロコ! The ATTAS「5X」の振り感は秀逸!
50グラム台の「5」はR、SR、S、Xと4段階のフレックスがラインナップされているが、打ったのは「5S」と「5X」。

5Xは今回最大のサプライズ。ヘッドスピード43m/sあれば十分に打てるので、ぜひ試してもらいたいスペックだ
「5でも当然ながら振り心地は『4』とまったく変わらない。『5S』はヘッドスピードで言ったら40から43m/sあたりが目安になりそうですが、もう少しヘッドスピードのある人でも、しなりを感じながら打ちたい人などにはピタリとはまりそうですね。トルクを絞りすぎていないのも楽につかまる要因。大型ヘッドでもスムーズに返ってくれるんです」(中村)
中村の言葉を裏付けるように、スウィング中のシャフトのねじれ度合いを表すトルクは「5S」で5.6度。460ccクラスのヘッドの場合、多少トルクのあるシャフトのほうがフェースをスクェアに戻してくれると言うが、大きすぎず小さすぎず狙いすました値が滑らかな剛性と相まってプレーヤーとヘッドのポテンシャルを最大限に引き出してくれるということか。
一方の5Xはどうか。
「5Xは全体に硬さがアップしますね。そのため、ジ・アッタスのキャッチフレーズである“粘走り”感が強く感じられ、ヘッドスピードを上げても弾道が変わらないし、高さもバッチリ。この5Xはちょっと目からウロコが落ちるくらいビックリしました。ヘッドスピード45m/sで打ってもまったく頼りなさがない。切り返しでは粘る感じがあるのに、インパクトではボールを弾き返してくれる。軽さがヘッドスピードを上げてくれるのに弾き返す力もあるんです」(中村)
振り心地がいいので無理して振る必要がないから、ラウンド後半になって疲れてスウィングが乱れる、といった心配もなくなりそうという。
■5S試打データ
ヘッドスピード 42.4m/s
飛距離 244Y
打出し角 14.1度
スピン量 2875rpm
■5X試打データ
ヘッドスピード 43.5m/s
飛距離 250Y
打出し角 14.4度
スピン量 2774rpm
ヘッドスピード42m/s台で244ヤード、43.5m/sで250ヤードという好結果が出た。軽くても頼りなさがないからしっかりと振れる。結果、飛距離も伸びるのだ。とくに5Xの弾道データは、ほぼ理想値と言って良さそうなものだ出ている。
ゆったり振るなら「6S」。シャープに振るなら「6X」が飛ばせる
続いては、カスタムシャフトの中心的な重量帯である60グラム台。世界的にシャフトの軽量化が進んでいるが、やはり60グラム台のユーザー層は根強く、それだけに試打結果にも注目だ。
「6(Sで約63グラム)ともなると、やはり重量感が出てきますね。つかまりの度合いも、4よりは5、5よりは6と確実に小さくなる。といってもつかまりにくいといった感覚は全然なく、出球が揃い、ドローの幅が小さくなるというイメージです。ただ、“粘走り”感を存分に味わうにはヘッドスピード45m/s前後は欲しいところですね。重いほうがスウィングが安定するという人には鬼に金棒になるのでは」(中村)

6Sは、重さを生かしてゆったり振るのに向くシャフトであるのに対し、6Xを使いこなすには「素早く振れる」のが条件になってくるという。
「ゆったり振るのは苦手、もっともっと振りたい、あるいは振れる、という人なら6Xですね。Sに比べるとやや張りがあって、どこまでも振っていける。それでいて、つかまり感はまったく変わらないので弾道も安定するんです。ゆったり振りたいなら6S、シャープに振りたいなら6Xですね」
■6S試打データ
ヘッドスピード 44.7m/s
飛距離 256Y
打出し角 12.7度
スピン量 2632rpm
■6X試打データ
ヘッドスピード 45.3m/s
飛距離 262Y
打出し角 14.1度
スピン量 2717rpm
注目したいのは、弾道の高さ、スピン量が重量帯が変化してもほとんど変わらない点だ。ヘッドが同じなことも当然大きいが、重量帯や硬さが異なってもシャフトの特性が変化しないというのも、ジ・アッタスの大きな特徴と言っていいだろう。
47m/s以上なら70グラム台! しっかり叩いてがっつり飛ばせる
最後はもっとも重い「7」をテスト。Sで74グラム、Xで76グラムと非常にヘビーだ。トルクは3度弱に抑えられている。
「もちろん重量感があるけれど、それでもなめらかさが保たれていて、入力に対しては素直に反応してくれますね。その分振っていけるし、振った分だけ的確に反応してくれる。同じヘッドスピード40台後半でも軽めが好みの人は『6X』、重めがいいというなら『7S』かな。私自身、使うならばそのどちらかで悩むという感じです。いずれにせよ、パワーに自信があり、アイアンは重いスチールシャフトが好みで、球を左右に打ち分けて攻めるレベルの人にはズバリですね」(中村)

ヘッドスピード40台後半なら7S、50を超える超ハードヒッターは7Xが有力な選択肢となる
「ヘッドスピードが50m/s近いという力自慢だったら『7X』。どんなに振ってもつかまりすぎる不安がないので、球をコントロールしやすい。“粘走り”系というだけあってインパクトではしっかり走るけれど、なぜか走りすぎることがない(笑)。これが走りすぎるとドローボールを打ちたいのに結果はその真逆になってしまうといったことがあるけれど、その心配がない。それだけに思い切って振っていけます」(中村)
■7S試打データ
ヘッドスピード 46.2m/s
飛距離 264Y
打出し角 13.8度
スピン量 2965rpm
■7X試打データ
ヘッドスピード 46.9m/s
飛距離 270Y
打出し角 14.6度
スピン量 3052rpm

テストしたのは埼玉県戸田市にあるUSTマミヤのフィッティングルーム。計測数値はそれぞれ3球打った平均。データはGC2によるもの
「球がつかまる、つかまらないはヘッドで選び、シャフトはジ・アッタスを選べばヘッドのパフォーマンスを確実に生かせるでしょうね」と太鼓判を押していた。
「粘る」と「走る」。相反すると思われた要素を合体させ、唯一無二の滑らかな振り心地を持つ。それにより、ヘッドの性能を引き出し、どんなスウィングにもマッチさせる。さらには、どの重量帯、どの硬さを選んでも同じ振り心地で振っていける。
ATTASシリーズの10代目、The ATTAS(ジ・アッタス)。それはただの「10モデル目」ではなく、9モデル積み重ねてきたものをすべて結集した、真に集大成と呼べるシャフトだった。