米PGAツアーのプレーオフシリーズで、4戦のうち2勝を挙げ、飛躍のシーズンとなったブライソン・デシャンボー。アイアンの長さを統一したりコース内にコンパスを持ち込んだりと、“ゴルフの科学者”としても知られるデシャンボーが以前、バイオメカニクス(生体力学)の研究をするヤ・フー・クォン教授の元を訪れたという。その時の様子をゴルフスウィングコンサルタントの吉田洋一郎が聞いた。

再現性の高さを追求してるデシャンボー

セオリーから外れた動きや取り組みで「奇人」や「変人」と呼ばれることもあるデシャンボー。これまでその言動が先行している感がありましたが、今シーズンは3勝を挙げ、名実ともにトッププレーヤーの仲間入りを果たしました。

デシャンボーのスウィングは“ゴルフィングマシーン”という50年以上前のスウィング理論に基づいて設計されています。再現性を高めることを軸に設計された理論で、左肩を軸にボールと体の距離を変えずに打つというのがその理論の根幹です。

そのためデシャンボーのスウィングを正面から見ると左腕とシャフトが一直線になっていることが分かります。このシャフトと腕の一体感を保ったまま振ることで、インパクトを安定させようとしているのです。頭の位置を極力動かさずにテークバックでも手首を使わないなど、アドレスで作った体、クラブ、ボールの関係性を変えないことを意識しているのでしょう。

画像: 左肩を軸にしてスウィングするデシャンボー(写真は2018年の全米オープン 撮影/服部謙二郎)

左肩を軸にしてスウィングするデシャンボー(写真は2018年の全米オープン 撮影/服部謙二郎)

スウィング中は垂直軸を中心にした回転を意識しています。軸を作り各部位の関係性を変えずに振ることで、バックスウィングとダウンスウィングのクラブ軌道を同一のワンプレーンにすることを目指しているのです。

そんな彼が3年前、バイオメカニクス(生体力学)の研究をするクォン教授の元を訪れスウィング計測をしました。

「物理学の専攻だったという事もありいろいろな話をしました。そこで私が感じたのはワンプレーンスウィングへの強いこだわりです」(クォン教授)

しかし計測の結果、バックスウィング比べてダウンスウィングが若干フラットなクラブ軌道になっていることが分かったのです。

飛距離を伸ばす余地は十分ある

「測定の結果、デシャンボーのスウィングが再現性の非常に高いものであることに、疑いの余地はなかった」とクォン教授は言います。

画像: バックスウィングに比べてダウンスウィングが若干フラットになっているのがわかる(写真は2018年の全米オープン 撮影/服部謙二郎)

バックスウィングに比べてダウンスウィングが若干フラットになっているのがわかる(写真は2018年の全米オープン 撮影/服部謙二郎)

しかしスウィングプレーンに関しては、デシャンボーが目指す完璧なワンプレーンにはなっていなかったのです。

「ワンプレーンは再現性を高めるために必ずしも必要な要素ではありません」(クォン教授)

そのため既に再現性の高い今の動きを維持しつつ、さらに飛距離が出るような力の出し方をアドバイスしたと言います。

画像: 自分に合ったスウィングを追及し続けることがデシャンボーの最大の強みかもしれない(写真は2018年の全米オープン 撮影/岡沢裕行)

自分に合ったスウィングを追及し続けることがデシャンボーの最大の強みかもしれない(写真は2018年の全米オープン 撮影/岡沢裕行)

「テークバックで右サイドに体重をかけて、切り返し以降で左足を踏み込むようにすると地面の反動の力(地面反力)を使う事ができて回転スピードが上がります。そのための骨盤の使い方をいくつか試して、デシャンボーもそれを気に入ったようでした。ですがこれはワンプレーンをキープするような打ち方ではありませんでした」(クォン教授)

結局デシャンボーは教授がアドバイスした動きを取り入れることはありませんでした。恐らく自分の理想とするワンプレーンスウィングのイメージとは違ったのでしょう。

バイオメカニクスや物理学的には正しい動きでも、結局それを行うのはプレーヤー自身です。自分のイメージには合わない動きを取り入れることで失うものもあります。論理的な思考をするデシャンボーでさえも、最後は自分のイメージを優先したのでした。

キャロウェイ

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