ミズノプロといえばフィッティングを前提としたカスタム販売という独自の販売形態をとりながら異例のヒットとなったアイアンシリーズが、ゴルファーの間ではすでにおなじみ。そして2018年12月、待望のドライバーがシリーズに加わった。
それが、ミズノプロ モデルE、ミズノプロ モデルSの2機種だ。
ミズノのドライバーと聞いて、みなさんはどんなイメージを持つだろうか。「顔がいい」「打感がいい」「操作性がいい」と指を折って、そのあたりで止まってしまうのではなかろうか。しかし、現代はそれだけでは評価されない。必要なのは「やさしさ」そして「飛び」だ。
ミズノは、今回のミズノプロのドライバーは「ミズノ史上最高反発」を記録していると胸を張る。ショップを訪れたゴルファーが、飛ぶドライバーをくれとオーダーしたときに、店員さんがこれをどうぞと差し出したくなるモデル……そんな商品に仕上がっているというのだが、こればっかりは打ってみなくてはわからない。

ミズノプロ「モデルE」と「モデルS」
アマチュアゴルファーを想定して、ヘッドスピード42.5m/sで試打をしたプロゴルファー・中村修のインプレッションを見てみよう。
「初速の速さにビックリです。ドライバーのミート率(初速÷HS)は1.50に近ければ“初速性能が高い”と言われますが、このドライバーは2モデルともに1.50を超えるボールも出ました。それも、反発系にありがちなキンキンとした甲高いインパクト音ではなく、心地良くて吸いつくような打感の良さがありながらこの数値。“高初速”と“好フィーリング”という相反しがちな要素を合わせ持っています」(以下、中村)

プロゴルファー・中村修がゴルフスタジオ「PGST」で試打。
ヘッドスピードに対してボール初速が出る。これは技術だけではなく、ヘッドの性能がないと実現できない。この優れた初速性能を、ミズノはどのように実現したのか。まずはフェースの素材だ。強度としなやかさを兼ね備える「β(べータ)チタン」、実はかつての“高反発時代”によく使われていたもの。ある程度キャリアのあるゴルファーならば、高反発全盛時代にミズノが出した「ミズノプロ300S」「生チタン」を覚えているかもしれない。βチタンとは、まさにそれと同じ素材だ。
βチタンは一般的なチタン合金よりも強度が約17%、たわみやすさが約8%優れている。その反発性能を活かし、一旦ルール適合外のフェースを作り、そこからルール内に落とし込むという方法で作られている。
そしてもう一つ、ソールのフェース側に施した、ミズノブルーの溝が効いている。このようにフェース側へ溝を入れると、反発性能がアップする一方で、重心が浅くなって球が上がりづらくなりがちだが、ヘッドの重心設計や打音・打感などのバランスを追求しながら溝の形状や深さを試行錯誤することで、ベストのカタチに行き着いた。これに関しては努力と根性で成し遂げたという印象がある。このあたり、モノ作りに妥協のないミズノらしい成果だ。

「ウェーブテクノロジーソール」の波型形状を2mm深くすることで、フェースのたわみ量が従来の「MP」シリーズよりも約5%増えた
さて、そろそろ試打に戻ろう。ミズノプロ のドライバーは450ccでシャローバック形状の「モデルE」と、435ccでハイバック形状の「モデルS」の2タイプ。この2本、どのような特徴があるのか。
「『モデルE』は球が上がりやすそうなシャローバックで、投影面積が大きくてもクセがなくて構えたときの安心感がハンパない。打ってみると、見た目の通りに弾道の直進性が非常に高いです。しかも、今どきの大型&大慣性モーメントドライバーにありがちな、ヘッドが戻り切らなくてプッシュアウトをしたり右へすっぽ抜けたりがありません。大きく見えてミスヒットをカバーしてくれるのに、見た目よりターンしやすくて球がつかまってくれます」(中村)

ミズノプロ モデルE。450CCでご覧の通り投影面積の大きい、安心感のあるヘッド形状だ
ヘッドを大きくしてフェース面を広くすると、左右の打点ミスに強くなる半面、重心距離が長くなってヘッドが返りづらくなってしまう。そこでミズノは考えた。フェースをヒール側に寄せながら、ヘッドのヒール側にボリュームを持たせる「スクェアストライクデザイン」によって、重心距離を短めにしたというのが発明。

フェース面がヒール側に寄っている。これによりフェースがターンしやすくなり、つかまり性能がアップしている」
スクェアにインパクトできて、ブレない高弾道で飛ばせるポイントがここにある。小鯛竜也や原英莉花といった“大型チタン世代”のプレーヤーが、ためらうことなくクラブを振り抜いて、ストレート&ビッグキャリーで飛ばせるドライバーなのだ。
これぞミズノ! ミズノプロ モデルS
「『モデルS』は、ディープフェースでいかにも力強い印象。ミズノの名器『300S』の流れを汲んだ、ギュッと引き締まった小ぶりな顔つきで、ハードヒッターが思い切り叩いていけます。打ってみても、ぶ厚くて重い打感はミズノならでは。このドライバーの特徴は、端的にミズノのドライバーの伝統の上に“飛び”が加わっているという点ではないでしょうか」(中村)

それにしてもミズノプロの2モデルは音がいい。取材現場でプロが打つ打球音を聞いているだけで、手にナイスショットの感触が伝わってくるようだ。
いま流行りのカーボンコンポジットヘッドによくある「ボコッ」という、こもったようなインパクト音とは一線を画す。しかも、打点がバラついても打音・打感が極端に落ちないよう、できるだけ広範囲で好フィーリングが得られるように作り込まれており、それに伴ってスウィートエリアも広くなっている。

モデルSはディープフェース。適度なスピンで球筋をコントロールしていけるヘッドだ
程よくスピンが入るモデルSは、ドロー・フェードをインテンショナルに打ち分けられることが持ち味。手嶋多一のように、球筋をコントロールしながらコースを攻略するプレースタイルにマッチする。
実際の弾道計測データも掲載しておこう。以下のような感じ。ヘッドスピード43m/s台で270ヤード近い飛距離を叩き出しているモデルEの飛び性能は出色だ。
【ミズノプロ モデルE】
ヘッドスピード ボール初速 打ち出し角 スピン量 キャリー 飛距離
43.8m/s 64.8m/s 13.4度 2434rpm 244Y 269Y
【ミズノプロ モデルS】
ヘッドスピード ボール初速 打ち出し角 スピン量 キャリー 飛距離
43.5m/s 64.2m/s 11.7度 2821rpm 242Y 262Y

コースで試打した中村は「モデルE」の出球の安定感に驚いた
「ストレートに飛び出してから、持ち球によって落ち際でゆるやかにドロー・フェードをするタイプの『モデルE』、左右どちらかに打ち出してから、ドローやフェードで思い通りに戻せるタイプの『モデルS』。両者にはそのような違いがあります」(中村)
とくにモデルEに関しては100が切れないレベルのゴルファーが必要とするやさしさを十分に持っている。純正シャフトは50グラム台のRシャフトから用意されているため、ヘッドスピードが40m/sに満たないゴルファーでも使える。極めて間口の広い“ミズノプロ”なのだ。中村は「とくに最近の大型ヘッドで右へのプッシュアウトが出る人は、ぜひ手に取ってもらいたい」と強く語る。
この「ミズノプロ」シリーズのドライバー2モデルは、1つのスリーブでロフトを7.5度から11.5度まで1度刻みでセッティングできるし、アップライトの設定もある。使う人のヘッドスピードやスウィング軌道、入射角に応じて、打ち出し高さやスピン量、つかまり具合などをアジャストできる調整範囲の広さも強みだ。もちろんシャフトも自在に選ぶことが出来るのもミズノプロならでは。誰もが“初速アップ”の恩恵を受けられて、キモチよく飛距離が伸ばせるはずだ。