男子ツアーで活躍する時松隆光が幼少期から師事する「桜美式」ゴルフの提唱者・篠塚武久。篠塚はアッパーブローに打つためにはインパクト前よりもインパクト後が大事だという。自身の著書「10本で握る テンフィンガースウィング」より、アッパーブローに打つコツをご紹介。

「インパクトまで」ではなく「インパクトから」をイメージ

人間はインパクトを意識してしまった瞬間から、目の前の球のことばかり考えてしまい、そこに当てにいこうとして体が突っ込んでしまうもの。ダウンブローというのは、テークバックで両腕をねじり上げておき、それをダウンでねじり戻し、インパクトで右手をかぶせるようにしてヘッドで球を上から潰しにいく動きですよね。2000分の1秒のインパクトを、そんな複雑な動作でジャストに合わせる技術はプロでさえ難しい。だから生徒たちには、「インパクトまで」の動きよりも、「インパクトから」の動きを、明確にイメージさせています。

「桜美式」の道場にはボクシングのグローブがあるんです。それで殴り合いをするわけではなく、私がそれをはめて、「ゴルフのスウィングはアッパーブローの動きと一緒でいいんだよ」と、その姿を見せてイメージを授けています。

私は学生時代にボクシングをやっていました。ボクシングのアッパーブローの動きが、「桜美式」スウィングの右腕の動きに類似していることに気づきました。

まずアッパーブローというのは、あらかじめ腕をねじっておくようなことはしない。それをねじり戻してインパクトに合わせにいくようなこともしない。腕にねじる動きは一切なく、ただ下から上へ、振り上げるだけというシンプルな動作です。逆に、ストレート(パンチ)は、肩や腰の回転を使って行うので、左右分担型テンフィンガーグリップのフォローとしては、よくない動きになります。

画像: インパクトからの動きをボクシングの「アッパーブロー」のイメージにすれば、クラブの軌道がブレないインパクトゾーンを作れる

インパクトからの動きをボクシングの「アッパーブロー」のイメージにすれば、クラブの軌道がブレないインパクトゾーンを作れる

ゴルフのスタンスで、下手投げ

アッパーブローの動きというと、どうしてもダフリやトップのミスをしてしまいそうな印象も拭えません。

それは、「インパクトまで」の動きでアッパーブローをしてしまうから起きるミス。アッパーブローの動きは、あくまでも「インパクトから」のイメージです。「インパクトまで」のことはなにも意識しなくとも、ヘッドの重さで自然と下りてくればそれで十分。そこで不自然に人間がなにかをしようとするからまた矛盾が生じるんです。とくにアイアンショットで大切なのは、「インパクトから」球をターゲットへ正確に運ぶこと、この一点に尽きるんです。

それをイメージするために、ゴルフクラブの代わりに、野球のボールを、手のひらを上にして右手で持ちます。打席に立ち、足はゴルフのスタンス。そして右手に持った野球のボールを、ターゲットめがけて、ポーンと下手投げで投げてみてください。

画像: 野球ボールの下手投げで「ねじらない」感覚をつかもう

野球ボールの下手投げで「ねじらない」感覚をつかもう

「桜美式」へくるまで、テークバックで腕をねじり、それをねじり戻すダウンブローで打ってきた人には、そのままの右手の動きで、野球のボールを投げてもらうんです。ターゲットめがけて投げることが容易でないことにすぐに気づいてくれます。初心者やジュニアに、この「ゴルフスタンスで下手投げ」のドリルをしばらくやってもらってから、クラブに持ち替えてゴルフボールを実際に打ってもらいます。すると、いきなりフェースの芯で気持ちよく球を飛ばし始めます。

「10本で握る テンフィンガースウィング」(ゴルフダイジェスト社)より

撮影/姉崎正

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