理想のスウィングを“ライブ”で疑似体験
プロギアが新たに開発・導入したシステムの名は「Swing Scan(スイング スキャン)」。
このシステムは、ブース内に設置した7台の高精度カメラがゴルファーの関節や体肢につけたマーカーを読み取り、スウィング解析のポイントとなる腕、胸、腰の動きを瞬時に計測、リアルタイムで3次元アニメーション化するというプロギア独自開発のモーションキャプチャーシステムだ。
その画像や数値を見ながら、PRGR サイエンス・フィット インストラクターのアドバイスを受けることで、労なく理想のスウィングに近づけるというのがこのシステムのウリ。実際のところ、プロギアと契約する女子プロも、このシステムを利用しているという。
テストに臨む中村は、専用の黒いウェアを上半身にまとい、左腕の3ヵ所(上腕、前腕、甲)や背中、腰、足元にもセンサーを、後頭部にはヘッドギアを装着。これにより、腕、腰、胸の角度や回転の度合いなどがリアルタイムでチェックできるのだ。
センサーを装着した状態で、いざ体験開始。ドライバーを打ちながらスウィングデータを計測した。
解説してもらうのは、「スイング スキャン」の根幹にある計測システム「サイエンス・フィット」の専属インストラクター・宮川まもるプロだ。
「そもそも『サイエンス・フィット』は、その人のスウィングを正確・詳細に測定し、『インパクト付近のヘッド挙動』と、スウィング中のシャフトの動きを解析したスウィングデータをもとにティーチングを行っていきます。新たに導入した『スイング スキャン』は、ライブで“体の動き”を調べることができる、『サイエンス・フィット』の解析をさらに高度なものにするシステムなのです」
このマシンは、その人のスウィングを6ポジション(アドレス、ハーフバック、トップ、切り返し、ハーフダウン、インパクト)に分けて、それぞれに体の9ヵ所(腕/手首のコック・手首のヒンジ・腕の回転、胸/前傾・左右傾き・回転、腰=骨盤/前傾・左右傾き・回転)の“動き”をつまびらかにする。
しかもアマチュアとヘッドスピードが近い女子プロの平均値もアバターとして数値とともに表示されるから、その“理想値”と見比べられるのだ。宮川プロは続ける。
「われわれがこれまでに蓄積したデータから、アベレージゴルファーは“ナチュラルなセットアップ”ができていないことがわかってきました。両腕をダラ~ンと垂らしたときにできる“自然な手の向き(横・中間・正面)”は人それぞれ骨格によって違いますが、そのカタチのままクラブを握ってアドレスするのが“ナチュラルなセットアップ”で、スクェアにインパクトしやすくもなります。ところが、アマチュアの多くは腕をダラ~ンと垂らしたときの“手の向き”と、クラブをグリップしてアドレスしたときの“手の向き”が大きく違っているのです」(宮川)
アマチュアゴルファーの多くは、アドレスの時点で直さなければいけないポイントがたくさんある。それも、スイングスキャンを用いれば一瞬でわかる。
「女子プロの数値を見ると、クラブを持たないときとクラブを持って構えたときの“左手の向き”がピッタリ合っています。中村さんの左手の向きを計測すると、クラブを持つ前と持った後で向きにズレが出ていて、持った(握った)後は少しフックになっているようですね」と宮川プロ。これには中村も「今、スウィング改造中でして……」と苦笑い。
グリップの握り具合は人それぞれだが、なにがベストかを客観的に可視化してくれるのはありがたい。
2つのスウィングタイプに合わせて適切なアドバイス
さらに中村のスウィングの計測を進めると、さらに“問題”が見えてきた。インパクトでの腕のローテーションが足りていないというのだ。
「データを分析すると、腕のローテーションが、アドレス時で26度。この26度が中村さんのスクェア。しかし、インパクトでは49度となっています。中村さんはエクステンションタイプ(※詳細は後述)に分類されるので、26度で構えたら26度に戻ることが理想ですから、左腕のローテーションが23度くらい不足した状態で当たっていることになります。コックもリリースしきれていません。その他はおおむねいい数値ですね」(宮川)
と、まさかの“ダメ出し”。しかし、これには実は理由があった。
「今どきの大型・大慣性モーメントヘッドに合う、フェースローテーションを抑えた打ち方をこれまで一生懸命に練習してきました(苦笑)。でもそういう打ち方は、ボク本来の動きとは違っていたんですね。自分のタイプに合わないことをやっていたら、どんなに練習しても結果につながりません」(中村)
いかにスウィング改造中とはいえど、最新の測定器に証明されてしまえば反論はできない。そしてさすがはプロゴルファー。リアルタイムに表示される画面を確認しながらセットアップを変え、リリースやローテーションを意識して打つと、見る間に適正な数値をはじき出した。
「自分の中ではかなり思い切ってリリース&ローテーションをしたら、理想値に近づきました。このように自分の“やるべきこと”が一目瞭然になれば、練習に集中できるしモチベーションが上がりますね」(中村)
タイプごとに異なる“理想値”に自分自身を近づけていく
それでは、話の中に出てきた「タイプ」とはどういうことだろう? 実はこれが、これまでに積み重ねたデータからプロギアが突き止めた、2つ目のポイントになる。
「ある程度レベルが高い人たちの話になりますが、ゴルファーのスウィングは2タイプに分類できることがわかりました。先ほども言ったように中村さんは、腕を自然体でぶら下げたときにできる左手の向きが横を向く(回旋が少ない)タイプです。こういう骨格の人は、E(エクステンション)タイプとなります。反対に、自然体のときに左手の向きが正面を向く(最初から回旋が多い)タイプは、F(フレクション)タイプ。体の使い方はタイプによってゼンゼン違うので、一緒くたにしてはいけません」(宮川)
まず「Eタイプ」のエクステンションとは「広げる・伸ばす」を意味する。文字通り、体が伸び上がるように動きながら左サイドをブロックして、コックのリリースやローテーションを積極的に使ってヘッドをターンして走らせる。その代わり、胸や腰の前傾・左右傾き・回転は少ない。
反対に「Fタイプ」のフレクションとは「屈曲・たわみ」のこと。コックのリリースやローテーションは少なくて、インパクトゾーンでヘッドをストレートに動かしていく。やや振り遅れ気味にインパクトする傾向はあるが、胸や腰の前傾・左右傾き・回転を大きく使いながらスクェアにインパクトする。
「中村さんのタイプや骨格は、プロギアの契約選手でいうと藤本麻子プロがとても近いんです。実際に今回のテストでも、ローテーションやリリースをどんどん入れることで、もっとも飛距離が出るというデータが出ました。アマチュアの方の場合は特に、自分と同じタイプのプロの動きや角度をなぞることで、ムリなく効率的に上達するでしょう」(宮川)
従来からある「リストターン」「コック&リリース」「体重移動」といった技術論は“どんどんやるべき”というセオリーもあれば“やらなくていい”というメソッドもあるが、実はどちらも正解。スイングスキャンが明らかにしたように、タイプによって合う・合わないがあるということなのだ。
情報過多の時代にあって、プロギアの進化した「サイエンス・フィット」で体の動きを可視化・数値化することで、自分の生まれ持ったナチュラルなカタチを知り、女子プロというお手本の動きを体感しつつ擦り合わせながら、理想のスウィングへ最短ルートで向かえる。そしてもちろんプロギアはクラブメーカー。解析の結果をもとに最適なクラブを見つけることも容易にできる。
「サイエンス・フィット」の受講は予約制のため、興味がある人は下記のサイトでしっかりと予約をした上で足を運ぼう!実施店舗は「PRGR GINZA EX」のみだが、6月中旬から「PRGR GINZA」でも受講可能となり、秋以降は他のプロギア直営店にも展開予定だという。
ゴールが見えたら、あとはやるだけ。なかなか上達できないと悩むゴルファーならば、一度は試す価値があるだろう。
撮影/三木崇徳