モチベーションを力に変えて調子をピークに持っていく
国内ツアーの直近3戦で予選落ち・36位タイ・予選落ちという中で出場した全米オープンで、優勝争いに絡み続けて5位タイフィニッシュを果たした比嘉。2018年の全英女子オープンでも4位タイと、海外メジャーで力を発揮できるのはなぜなのか。元コーチの辻村明志に聞くと、まずはこんな答えが返ってきた。
「国内では予選落ちをしていましたが、調子が悪いわけではなくて、向こうに行ったらやるだろうとは思っていました。その理由は、海外選手と互角に戦いたいといという思いが常にあること。日本人選手は、海外に行くと練習場での打球音が全然違って『この人たちとどうやって戦うんだろう』って物怖じしがちなんですけど、彼女の場合それがまずありません」
海外選手に引けを取らないショット力と、コースにも選手にも物怖じしない精神力。そして元来の海外志向。これらを兼ね備えているからこそ、国内で調子の上がらない中でも、海外に出れば水を得た魚のごとく躍動できるようだ。
辻村は、それに加えて比嘉が海外の大舞台に強い理由として「ゴルフIQの高さ」を挙げる。
「(畑岡)奈紗ちゃんも当然高いと思いますが、彼女のゴルフIQは相当高い。リスクマネジメントもできているし、行けるところは行くと決めることもできる。この(ホールで)風が吹いたら行く・行かないとかの決断力・判断力は素晴らしいものがあります。勝負勘がいいんです」
そのことで、比嘉は「想定外に強い」と辻村は続ける。
「日本のコースはグリーンもきれいで、『想定内』で収まることが多いのですが、海外では『想定外』が起きやすい。グリーンだって日本のようにきれいではないし、同じラインを2回打っても転がりが違うこともありますから。そういう『想定外』が起きたときに『私はちゃんと打ったんだから、仕方がない』と切り替えることができるのもいいところです。その上で、5個ボギーがきても次にバーディがきたらちゃんと“喜べる”。それは、このフィールドで戦いたい! というモチベーションがあるからこそだと思うんです」
強い選手ほど狙った試合にピークを持っていく力が優れている。それは今年のマスターズを勝ったタイガー・ウッズなどにも言えることだが、比嘉の場合はモチベーションが高まると一気にピークに持っていく能力に長けているという。
「メジャーで活躍することも大事ですし、彼女はオリンピックに出たいと思っているから、それもモチベーションになると思います。オリンピックに出るために、(国際舞台の)メジャーで活躍するというモチベーションがまた高まるのではないでしょうか」
モチベーションを力に変え、大舞台で力を発揮する比嘉真美子。日本人2人目のメジャー制覇へ、チャンスはまだまだある。