日本で開催された米シニアツアー「マスターカード・ジャパン選手権」。同大会に観戦に来ていたツアー1勝でシニア入り目前の49歳・塚田好宣が“世界のシニアのレベル”を生で見て感じたことは? 海外ツアー取材歴20年のゴルフエディター・大泉英子が本人に話を聞いた。

「今風じゃないけど、とても上手い」

先週、成田ゴルフ倶楽部で開催されていた米シニア・チャンピオンズツアー「マスターカード・ジャパン選手権」。その会場に今年の8月に50歳の誕生日を迎える1人のプロゴルファーが観戦に来ていた。塚田好宣である。彼は今年、JGTOのレギュラーツアーのシード権を持たず、その下部ツアーであるAbema TVツアーに出場しながら、タイのツアーに出ているという。

「今年、あまりレギュラーツアーには出られない。だからAbemaとタイのツアーに出ています。今年からタイのツアーはワールドランキングのポイントもつくようになったし、4日間の試合だから、いい練習になるんです。レベルも高いし、賞金もいいんですよ」

画像: 米シニア・チャンピオンツアー「マスターカード・ジャパン選手権」を観戦に来ていた塚田好宣。米国留学経験、アジアツアー参戦経験を持つ国際派

米シニア・チャンピオンツアー「マスターカード・ジャパン選手権」を観戦に来ていた塚田好宣。米国留学経験、アジアツアー参戦経験を持つ国際派

そんな彼が米シニアツアーを観に来た理由――それは、「米シニアツアーには挑戦したいが、実際どんなレベルなのか、どんな感じでみんながプレーしているのかを観たかったから」だという。

このツアーで自分はどの程度通用するのだろうか、と実際に出場していた深堀圭一郎やプラヤド・マークセンと他の選手を比較し、自身のプレーを重ね合わせながら塚田は考えていた。自分は飛ばし屋と言われ、今も平均で280ヤード以上は飛ばす自信がある。

きっと飛距離にアドバンテージがあることは、このツアーで戦う上で大事なんだろう、と思って観に来たが、往年のプレーヤーたちのプレーを目の当たりにし、「ショートゲームが、非常にうまい」と感じたという。

「打ち方は今風ではないが、タッチがいい感じで出ていて、とてもうまい。アプローチもさることながら、パターが本当にうまいんです。歳を取ったからタッチが合いづらくなるとか、老眼が進んでいるから、うまくラインが読めないとか、そういうことはまったくこの選手たちにはない。自分のショートゲームに比べたら、彼らのほうが断然うまいですね。まぁ、もともと上手だから、このツアーにも出られているんだけど、もっとショートゲームをなんとかしなければいけないと痛感しました」

画像: 塚田は同大会を観戦し、ショートゲームの強化が重要だと感じたという(写真は2017年の日本ゴルフツアー選手権 撮影/姉崎正)

塚田は同大会を観戦し、ショートゲームの強化が重要だと感じたという(写真は2017年の日本ゴルフツアー選手権 撮影/姉崎正)

塚田によると、シニアツアーの選手たちのアプローチは、今時の若手たちがやるような、スピンを効かせるアプローチではなく、コロがしを多用する寄せ方なのだそうだ。スピンが効くように設計された溝のウェッジを使う以前のウェッジで寄せていた彼らは、今でも無理にスピンをかけるような打ち方はしていないという。そこで“今流の打ち方をするシニアと、昔ながらの足を使った打ち方を多用するシニアとの境目となる年代は?”と聞いてみると、おそらく55歳くらいを境に打ち方が変わるのではないか、と語っていた。

プロの世界で生き残る方法は“スープの味付けを変えない”こと

また、米シニアツアーのセッティングについても塚田は考えた。日本のレギュラーツアーの選手たちが米シニアセッティングでプレーしたら、どのくらいで回ってくるのだろうか?

「日本のレギュラーツアーの首位なら、ここで2ケタのスコアは出てるだろうと思います(優勝スコアはスコット・マッキャロンの13アンダー)。しかし今回、シニアツアーの最強選手が皆来ているわけではないから、その比較は微妙だな、と。ただ言えるのは、技術的にはシニアの選手たちのほうが間違いなくあるということですね」

過去50年以上に渡って蓄積されてきた技術力や応用力は、シニアツアー選手の大きなアドバンテージ。若さやパワーは若手には劣るが、シニアならではの経験値、技術力でパワー面での弱点を補うことも可能だ。ただし、塚田によればこの「経験値」にもいい面と悪い面があるという。

「長年やっていると技術力は上がりますが、いろいろな経験を積んでいると、失敗した経験も蓄積されて、本番になると失敗した過去が蘇ってくる。何年もやっているとうまくはなるが、一方で心の傷も深くなる。今までPGAツアーのプロではなかった人や、しばらくゴルフから離れていたプロがシニアデビューして、急に強くなる選手もいますが、これは過去のトラウマがないぶん、ガンガンいけて成功することもあるから。僕たちは長年やっていると、打つ前から失敗するとかできないとかがわかってしまうから、失敗が怖くてトライをしなくなる。でも、あまり失敗経験がない人は、ガンガンやれる強さがある」

そして最後に塚田は「この世界で生き残る秘訣」を教えてくれた。それは、「何も変えない」ということだという。スウィングやクラブを変えたい、という誘惑は誰にでもあるものだが、例えば、4月にシニアデビューを果たし、「金秀シニア 沖縄オープンゴルフトーナメント」で初優勝を果たした手嶋多一には、全てを変えない強さがあると分析する。「人間は性格もスウィングも根本は変わらないんだな、と思った。変えようと思っても、ガラッと変わることはない。だったら変えないほうがいい」

スープの作り方に例えて教えてくれた話が面白い。

「塩を入れて、しょっぱいな、と思って、今度は砂糖を入れる。そうするとしょっぱさは消えるんだけど、変な味になってしまう。1回入れた塩と砂糖は、あとでどんなに消そうと思っても消えないんです。そのうち何のスープを作っていたのかすらわからない、変な味になってしまう。自分のスウィングをスープに例えれば、濃く煮詰まってきちゃってる状態だけど(苦笑)、変に味の付いているもの、まったく違うものを入れようとしちゃダメってことなんです」

まもなく50を迎える塚田好宣も、シニア入りを前にあれこれといろいろ考えている。学生時代、米国の大学で培った英会話力も彼の大きな武器だが、過去彼が日本だけでなく、アメリカ、アジアで培った経験と応用力、メンタリティを生かして、米シニアチャンピオンズツアーに挑戦できる日が来ることを楽しみにしたい。

 

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