「いつもよりスピードが出てるんだ」と試打の専門家は言った
「バシッ!」と締まった音とともに放たれた弾道は、高いドローボールとなり、100ヤード先のネットに突き刺さる。

「わかるでしょ? いつもよりスピードが出てるんだよ。打ち出し角16度でスピン量2700回転くらいかな。いい弾道だよね」
場所は埼玉県のゴルフ練習場、クレアゴルフフィールド。その1階左端打席で黙々と試打を行なっているのは、ゴルフ雑誌でクラブテストの連載を長年担当するプロゴルファー・堀越良和だ。誰が呼んだか“キング・オブ・試打”という異名の持ち主でもある。

ソールのデザインはもちろん、アドレスルックも含めて見た目的にはどこから見ても“タイトリストのクラブ“だ
堀越が試打をしているのはタイトリストのニューモデルであるTS1。取材するのが気心の知れた旧知の記者ということもあり、堀越もどこか饒舌だ。
「このクラブ、どこからどう見ても“タイトリストのクラブ”なんだよね。でも、打ってみると今までのタイトリストとはちょっと違う。具体的には? スピードだよね。圧倒的にスピードが違う」(堀越)
「ヘッドスピード43m/sの人が、ヘッドスピード45m/sの飛びを手に入れられる」
試打のスペシャリストだけあって、そのインパクトは正確そのもの。高く打ち出された弾道が、その頂点に達したあたりからググっと左に旋回する力強いドローボール。それが堀越がTS1を一閃するたびにネットに突き刺さっていく。

試打の専門家・堀越良和プロ。TS1についていつも以上に熱く語ってくれた
そして、その弾道はたしかに“いつもの弾道”よりも球が高いにも関わらず、ネットに達する時間が短い。堀越は、それを「ヘッドスピード43m/sの人が、ヘッドスピード45m/sの飛びを手に入れられる」と表現する。
「今打っているのは純正のタイトリストディアマナのSシャフト装着のものだけど、これで総重量が275グラム。だから、すごく軽やかに振り切れる。TS1がすごいのは、これだけ軽やかに振り切れるクラブなのに、まったく当たり負けをしないことなんだよ。それがなぜかというと慣性モーメントが大きいからで、これがこのクラブの画期的な点。スピードと高慣性モーメントが両立できているクラブは、過去にありそうでなかったんだよね」(堀越)

振り切れるスピードと高慣性モーメント。両者が融合したことで、スピードを上げ、かつ当たり負けしないという画期的性能が実現しているという
軽いクルマは容易にスピードを出せるが、一方で衝突には弱い。クルマにおける衝突が、ゴルフにおけるミスヒットだとするならば、スピードとミスヒットへの強さはトレードオフの関係となる。
昨今のドライバー開発のトレンドは、衝突への強さを追い求めるもので、自分でスピードを生み出せるプロはその恩恵を受けてどんどん飛距離を伸ばす一方、スピードを出せないアマチュアの飛距離はあまり伸びていない。

軽量クラブは手元が浮きやすいものだが、TS1はそれがない。「シャフトの作り込みが秀逸。手元が浮かないから、インパクトでしっかり押し込んでいける」と堀越
TS1は、その現状を打破する可能性を秘めている。筋トレしなくてもヘッドスピードを上げてくれ、なおかつミスヒットにも強い。
ただ、軽量ドライバーはすでに市場にも多くある。TS1は、それらのクラブとはなにが違うのだろうか。
「繰り返しになるけど、まずは当たり負けに強い点が非常に大きな特徴。そして、たしかに軽量でつかまるクラブなら他にもあるけど、多くの場合そういうクラブはグリップが細く、フックフェースで、ライ角が極端にアップライトだったりする。TS1はそうではなく、見た目は極めてオーソドックス。振り心地もシャープ。つまり、“振れないゴルファー”向けの消極的な軽量ではなくて、“もっと飛ばしたいゴルファー”向けの積極的な軽量ドライバーっていう点が画期的なんです」(堀越)
ハードルが下がったのではない。「ハードルがなくなった」のだ
かつて、三角形、四角形、はたまた五角形と、“異形”と呼ばれるドライバーを各社が世に出した時期があった。すべては高慣性モーメントを求めての工夫だったが、ゴルファーからは受け入れられず、ほどなくして市場から消えた。
それから月日が過ぎ、当時“異形”でなければ実現できなかった高慣性モーメントは、タイトリストらしい精悍なシェープでも実現できるようになった。しかも、圧倒的なボール初速も同時に実現している。

TS1の誰でも飛ばせる性能を、堀越は「ハードルがなくなった」と表現
速くて、当たり負けしなくて、カッコいい。音もいい。軽量のはずのシャフトはしなやかで頼りなさはなく、グリップの握り心地までもがいい。その総合性能は、「TS1に関しては、本当にタイトリストが頑張ったと思う」と堀越もしみじみ頷くほどだ。
だからこそ、多くのゴルファーに使ってもらいたいのだと堀越は言う。
「軽いわけだから、当然ヘッドスピードの遅い人も使えるけど、このクラブがもっとも“芯を食う”のはきっとヘッドスピード40〜43m/sだと思う。女子プロだって当然使える。つまり、ほぼすべてのアマチュアゴルファーが使える。簡単にいえば、スピードを求めるすべてのゴルファーってことになるのかな」
とくに勧めたいのどんなゴルファーかと聞くと、こんな答えが返ってきた。

男子プロのインパクトも軽々と受け止めてくれるのがTS1のすごいところ。ハードヒッターも食わず嫌いはもったいない!
「今回のTS1は、ハードルが下がったんじゃなくて、ハードルがなくなったクラブ。タイトリストがちょっとって思っていた人はもちろんだし、軽いクラブはちょっと……って思っているハードヒッターにも是非使ってもらいたい。そうだ、ハードヒッターの人にはあえてさらに軽量のエアスピーダー装着モデルをオススメしたい。“振る”気持ち良さを最大限味わえると思うから」
取材の終わりに、記者も何球か打たせてもらった。さっきまでプロが打っていたのとそっくりそのまま同じクラブを、準備運動もそこそこに2、3回素振りをくれて、打つ。
1時間も立ちっぱなしで話を聞いた後で、流石にいきなりナイスショットするわけもない。手に伝わる感触は思い切りヒール。「こりゃ、どスライスかな」と視線を上げると……スライス回転こそ加わっているものの、大曲がりはせず、きっちり奥のネットに突き刺さってくれた。コースなら右ラフ、いや、ファーストカットに残るか。なるほど、「ハードルがない」という表現も納得だ。
こりゃ納得だと堀越のほうを振り向けば「俺の言ったことが本当だってわかっただろ?」と言わんばかりにニヤリと笑顔。100の言葉を重ねるよりも、1球打てばわかってしまう。ゴルフクラブとはそのようなものだ。

純正シャフトはいずれもTS1専用設計のディアマナ(右)とエアスピーダー(左)が選べる。「コントロール感が欲しい人はディアマナ。ビュン! と振りたい人はエアスピーダーがオススメ」(堀越)
ハードルのないタイトリスト「TS1」。タイトリストだから、軽量だからという余計な心のハードルを取り払い、まずは一度、試打するところから始めてみてはいかがだろうか。
撮影/三木崇徳 協力/クレアゴルフフィールド