テーラーメイドのマレット型パター「スパイダー」が、今年で誕生から11年。発売当時は異彩を放った形状も今ではすっかり定着し、もはや定番の感がある。そんな折、「スパイダー」シリーズの開発者であるビル・プライス氏が緊急来日。11年もの長きに渡って愛されてきた「スパイダー」の進化について語ってくれた。

10年あまりで、パターの定番となった「スパイダー」

改めて「スパイダー」についておさらいしてみよう。

初代スパイダーである「ロッサ モンザ スパイダー AGSI+」が発売されたのは、2008年のこと。今でこそ見慣れた形状だが、ステンレススチール製のワイヤーフレームが後方に大きく張り出した、当時としてはかなり大型なヘッドは、異彩を放っていた。

同年、これでは大きすぎるという声に応えて、2回りほど小さい「ロッサ モンザ イッツィビッツィ スパイダー AGSI+」が発売。「スパイダー」の特徴である大きな慣性モーメントと操作性を両立し、ヒット商品となった。

以来、10年余、様々な意匠を施した新たなスパイダーが登場してきた。中でも、印象に残るのが、ジェイソン・デイの愛器となった「スパイダーツアーレッド スモールスラント」。やさしさに定評のある「スパイダー」の形状に、ショートスラントネックを装着することで操作性を向上させたモデルだ。

パターの名手であるデイが愛用し、同形状のブラックのモデルをダスティン・ジョンソンが使って活躍したことで人気が沸騰し、大ブレイクした。

画像: ダスティン・ジョンソンは最新モデル「スパイダーX」も愛用

ダスティン・ジョンソンは最新モデル「スパイダーX」も愛用

彼らの活躍もあって、現在、ツアープロ達のたちの多くが「スパイダー」を愛用している。アマチュアだけでなく、ツアープロにとっても「スパイダー」は完全に定番になったと言っていい。

現在、テーラーメイドのパター・ウェッジ開発担当であり、「スパイダー」の生みの親と言えるビル・プライス氏に、当時のことを聞いてみた。

キワモノ扱いされた形状が、優勝で評価が一変

画像: テーラーメイドのパター・ウェッジ開発担当ビル・プライス氏にスパイダー誕生秘話をインタビューした

テーラーメイドのパター・ウェッジ開発担当ビル・プライス氏にスパイダー誕生秘話をインタビューした

—―初代スパイダーが発売されたときは、これまでにない不思議な形状に驚きました。なぜ、あの形になったのですか?

ビル・プライス氏(以下、BP):四角い箱のようなカタチで、「スパイダーウイング」と名付けたウェイトポートが両サイドに広がっています。当時から、驚かれましたよ。とにかく、パフォーマンスを向上させたいという思いを追求した結果、あの形状になりました。

さすがに最初はキワモノ扱いされたのですが、発売から5週間後に、J・Bホームズが「スパイダー」を使用して優勝しました。それから、プロが使えるパターとして認知されていきました。

画像: 独特な形状は最新モデル「スパイダーX」にも受け継がれている

独特な形状は最新モデル「スパイダーX」にも受け継がれている

—―パフォーマンスとは具体的にはどういうことですか?

BP:当時の背景を説明しないといけませんね。11年前、ツアープロの約80%が、クラシックな形状のブレード型パターを使用していました。しかし、これらのパターは安定性という点では、あまり良いとは言えません。

我々のデータでは、一般的なゴルファーは、パッティングの際に3mmくらいの幅で打点がずれている事がわかっています。驚くことに、ツアープロであっても2mmくらいのズレがあるんです。このズレは、ヘッドのグラつきや距離感の誤差に繋がります。だから、それを補う安定性の優れたパターが必要だった。それが、「スパイダー」だったというわけです。

画像: ブレード型パターは「安定性が高いとは言えない」とビル氏

ブレード型パターは「安定性が高いとは言えない」とビル氏

—―「スパイダー」は、初代からそれほどカタチが変わっていません。この11年間、どのような進化をしましたか

BP:初代「スパイダー」が出来たとき、大きな慣性モーメントを実現し、安定感と寛容性を得ることが出来ました。しかし、大きすぎるという声も多かったので、パフォーマンスを犠牲にしないようにしながら、小ぶりなサイズの「イッツィビッツィ」を作ったんです。これは、ツアープロたちにも大変好評で、以降は「イッツィビッツィ」サイズで、操作性を加味しながら、より安定感のあるパターの開発に取り組みました。

新作「スパイダーX」にはミスを防ぐテクノロジーが詰め込まれている

—―それが新モデルの「スパイダーX」ですか?

BP:その通りです! 「スパイダーX」はベリーディープCG(重心)を実現したパター。一般的なブレードパターの重心深度は約11mmですが、「スパイダーX」は、35mmと非常に深くなっています。

画像: スパイダーシリーズ最新モデル「スパイダーX」。重心深度の数値が非常に大きく、小ぶりながら寛容性は非常に高い

スパイダーシリーズ最新モデル「スパイダーX」。重心深度の数値が非常に大きく、小ぶりながら寛容性は非常に高い

これを実現できたのが複合素材。マルチマテリアル構造です。真ん中にあるカーボンのプレートで、本来最も重くなる部分を非常に軽くすることが出来ました。周辺の重量スチールフレームによって、「イッツィビッツィ」サイズでありながら、大型ヘッドと同じような寛容性があります。

画像: パターの中心部分にカーボンを用いることで、コンパクトなサイズながら大型ヘッド並みの寛容性を実現した

パターの中心部分にカーボンを用いることで、コンパクトなサイズながら大型ヘッド並みの寛容性を実現した

—―ちょっと意地悪な質問です。「スパイダー」の寛容性が優れているのはわかりましたが、操作性という意味ではブレードタイプを使ったほうが良いのではないでしょうか。現にプロや上級者でも、クラシックな形状のパターを手放さない人は少なくありません。

BP:私は、これまでのブレードタイプやピン型のパターを、クラシックパフォーマンスと読んでいます。多くのゴルファーたちはこの形状のパターでゴルフを覚え、長く愛用してきました。このクラシックな見た目をとても愛しています(笑)。

一方、「スパイダーX」のようなパターは、テクニカルパフォーマンスと呼んでいます。テクノロジーがたくさん詰まっていて、昔にはなかったパターです。

たとえば、3メートルのパッティングでわずかにスイートスポットを外した場合、ブレードタイプだと7センチの距離感のズレになります。7センチというと大したことないと感じられるかもしれませんが、ツアープロの場合は、カップに入るか入らないかという大きな違いになります。「スパイダーX」ならこうした距離感のズレはありませんから。

画像: スパイダーパターは、テクノロジーによってミスをなくした「テクニカルパフォーマンス」パターであるとビル氏は言う

スパイダーパターは、テクノロジーによってミスをなくした「テクニカルパフォーマンス」パターであるとビル氏は言う

以前は、ブレードタイプの使用率がツアーで約80%と言いましたが、現在は、約60%の選手がこうした高機能のマレット型パターを使っています。若い選手たちは、ショットでもあまりフェースの開閉を使わず、シンプルにスウィングする傾向があります。同様に「スパイダーX」のように、寛容性が高くてやさしいパターをシンプルに使うように、時代は変わってきています。

もちろん、クラシックパフォーマンスのパターを否定するわけではありませんよ(ニヤリ)。

多くのツアープロが優勝を勝ち取ったパフォーマンス

—―ツアープロが評価する「スパイダーX」ですが、我々アマチュアが使っても良いパフォーマンスが出ますか

BP:もちろんです! それでも疑い深い人は、キャディバッグに2本のパターを入れてプレーするといいでしょう。ひとつは愛用するパター、もう一つは「スパイダーX」で。ハーフで使い分けてみると、性能の違いがよく分かるはずです。

寛容性と安定性に優れているということは、ショートパットが有利なのはもちろんですが、ロングパットでの優位性も非常に大きくなります。多少、芯を外しても距離感が合うので、とても心強いはずです。10メートル以上のロングパットをする回数の多いアマチュアゴルファーには、ぜひ使ってほしいですね。

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