最終日最終組の最終ホールでティショット、セカンドと会心のショットを続けた
1日に10時間練習する生活を10年間続けているという稲見萌寧選手。彼女のデータを見ると、その練習がダテではないことが一目でわかります。
なんといっても驚かされるのはパーオン率。数字は79.6875%で、約8割パーオンしていることになります。昨年の予選会のランキングが104位と悪かったことから、今シーズンの出場はまだ11試合。そのためあくまで“参考記録”ではありますが、現在パーオン率1位のイ・ミニョンよりもさらに3%もいい数字。極めて高いショット力の持ち主であることは間違いありません。
センチュリー21レディスの最終日を見ても、青木瀬令奈、イ・ナリと同スコアで迎えた最終18番ホールのドライバーショットとピンに絡めた2打目はお見事。もっともプレッシャーのかかる場面でナイスショットを2回続けました。
ドライバーショットは飛距離がしっかりと出ていましたし、2打目も距離と方向性を合わせた正確なアイアンショットでした。シビれる場面で完璧にボールをコントロールできていたのは、しっかりと下半身を使えているからだと思います。
画像Aを見ると、左写真の骨盤がしっかり前傾した状態から、右写真のフォローでは左ひざを伸ばしながら腰がターゲット方向に押し込むように動いていることが見てとれます。
切り返しでは下半身が先行することで上半身と下半身の“分離”が起こります。そこから腹筋や腹斜筋といった筋肉を使って体を回すことで、下半身、体幹、腕とスムーズな運動連鎖を促し、それによりクラブを加速させている。1日10時間練習の成果でしょう、稲見選手は非常に質の高いスウィングをしています。
そして、ティショットのようなフルショットでも、ピンを狙って距離を合わせるアイアンショットでもゆるむことなく弾道をコントロールできていたのは、この下半身と体幹部の使い方でギアチェンジをしていたからではないでしょうか。
ダウンスウィングで骨盤の前傾が崩れると、腰が伸びてお尻がボール方向に近づいてします、この動きは手元の通り道を狭めてしまい、手元が浮いてフェースが開くなどミスの原因になりますが、稲見選手の場合そのような動きが見られません。
余談ですが、アマチュアの方が切り返しで股関節にしっかりと角度つけようと思ったら、ダウンスウィングでお腹をへこませる意識を持つと骨盤の前傾をキープできるようになりますので、ぜひ練習場などで試してみてください。
昨年のプロテストを通過してからショットの不調に陥り、数人のコーチを渡り歩き、現在は高橋彩華選手や下川めぐみ選手らを指導する奥嶋誠昭プロコーチに師事しています。
持ち球をフェードに変えてショットに磨きがかかり、10代最後の日に優勝を勝ち取りました。これまでの試合で上位に入っても目指すは優勝ともっと先を見つめ、一日10時間の練習を続けてきた稲見選手。後半戦の活躍が楽しみな選手がまた一人誕生しました。
撮影/小林司