「長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ」で2試合連続優勝となる今季2勝目を挙げた石川遼。開幕戦の欠場から見事に復活を遂げ、賞金ランクも1位に躍進したそのスウィングをプロゴルファー・中村修が解説。

体の芯の強さが備わってきた

先週、「セガサミーカップ」の練習日とプロアマで石川遼選手を見てきました。石川選手を見るのは1カ月半前の「日本プロゴルフ選手権」以来でしたが、一目で体の厚みが増していると感じました。

また、練習場で行なっていたのは、不調期のようなスウィングを作るための練習ではなく、狙った場所に狙った弾道で打つ実戦的なものでした。北海道の気温や湿度、洋芝の感触を確かめながらスピン量をコントロールしながら弾道を作り、ひと月半ぶりのスタート時間に向けて着実に仕上げていく様は、日ごとに自信を深めているように見えました。

スウィング中の体のブレがなく体の厚みが増したトレーニングの成果がしっかり出ているように見えました。

画像: 2試合連続優勝を挙げた石川遼(写真は2019年の長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ 撮影/岡沢裕行)

2試合連続優勝を挙げた石川遼(写真は2019年の長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ 撮影/岡沢裕行)

初日が始まると出だしで連続ボギーを叩くも、後半にバーディを5つ積み重ね上がってみれば首位発進。そのまま最終日まで安定たプレーでスコアを伸ばし、首位を譲ることなく完全優勝を遂げました。4日間を通したスタッツを見てもパーオン率1位、バーディ数1位、ドライビングディスタンス8位と飛距離、アイアンショット、グリーン周りのアプローチ、パッティングと隙がなく、進化した石川遼を見せてくれました。

飛距離だけでなく、アイアンショットやグリーン周りのアプローチなど進化した石川遼(写真は2019年の長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ 撮影/岡沢裕行)飛距離だけでなく、アイアンショットやグリーン周りのアプローチなど進化した石川遼(写真は2019年の長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ 撮影/岡沢裕行)

スウィングを見てみましょう。飛ばしのエネルギーには左へのスライド(体重移動)、回転、地面反力と3つの要素がありますが、画像Aのトップと切り返しの写真を見ると、石川遼は切り返しでの左へのスライドを使う割合が多いタイプのスウィングと言えます。切り返しで上半身を開かずに左サイドへしっかりと踏み込み、下半身と上半身の捻転差を作っています。

画像: 画像A:切り返しから腰が左へのスライドする動きを使う割合が大きい(写真は2019年のツアー選手権森ビルカップ 撮影/姉崎正)

画像A:切り返しから腰が左へのスライドする動きを使う割合が大きい(写真は2019年のツアー選手権森ビルカップ 撮影/姉崎正)

続いて画像Bを見ると、ダウンスウィングでは下半身を使った回転力を上半身に伝え、インパクト前からは左足を伸ばして地面反力を使ってヘッドスピードをさらに上げ、ボールを打ち抜いている様子がわかります。

この連続写真は6月の「日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ」のものですが、このときよりも明らかに体重も増えていることで、左への踏み込む力も増えたでしょうし、踏み込んでもブレない芯の強さもアップしたように思います。飛ばしのエネルギー、スウィングの安定度がともに高まっている状態です。

画像: 画像B:下半身の回転を上半身に伝え地面反力を使ってヘッドスピードを上げる(写真は2019年のツアー選手権森ビルカップ 撮影/姉崎正)

画像B:下半身の回転を上半身に伝え地面反力を使ってヘッドスピードを上げる(写真は2019年のツアー選手権森ビルカップ 撮影/姉崎正)

飛ばしのエネルギーになる三つの要素の中で、石川選手のようにスライドが多いタイプ、マット・クーチャーのように回転が多いタイプ、ジャスティン・トーマスのように地面反力が多いタイプなどその割合によってプレーヤーの個性につながります。割合の少ない要素を増やすことで飛距離アップも期待できますが自分にとってナチュラルに動ける動作に磨きをかけることも重要です。

ドライバーが一時絶不調となった試行錯誤の果てに、元から持っている体の特性にマッチした、ナチュラルなスウィングへと回帰したように見えます。

男子ツアーはいよいよ本格的な秋の陣が始まります。ZOZOチャンピオンシップの出場資格争いもありますし、来年の東京オリンピックの日本代表候補争いもヒートアップしてきます。石川選手のみならず、全選手が目の色を変えて競い合うことになるでしょう。

大盛り上がりの女子ツアーに負けず男子ツアーを盛り上げるには石川選手の活躍が不可欠。2試合連続優勝は、とてもいいニュースです。しかし、さらなる盛り上がりを生むためには、石川選手だけでなく、ライバルとなる選手たちの活躍がやはり欠かせません。秋のベストシーズンへ向け、アツい男の戦いを期待したいですね。

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