プロゴルファーといえば試合に出て賞金を稼ぐもの、というイメージがあるが、そんなプロたちが高額な参加費を払って出場する試合がある。それが、来シーズンの出場権を賭けて争う試合「QT」だ。知られざるその舞台を、まさに今参戦中のプロゴルファー・中井学に聞いた。

QTとはクオリファイング・トーナメントの略称。クオリファイングとは資格を与えるといった意味で、その名の通り、来季のツアーの出場資格を争う試合だ。ファーストからセカンド、サード、ファイナルの4つのカテゴリーがあり、ファイナルまでを勝ち抜いたほんの一握りの選手だけが、レギュラーツアーの舞台にたどりつくことができる。

現在開催中なのは、「セカンドQT」。全国6会場のうちのひとつ、福島県の五浦庭園CCで開催されている、その舞台に挑んでいるうちの一人が、中井学だ。

中井は、通常のトーナメントとは異なるQTならではの緊張感をこう語る。

「QTの場合、その試合がダメだと『はい来年までご機嫌よう』ですから。通常の試合だったら、たとえ予選落ちしても『次がんばろう』となりますが、QTの場合その次が1年後。ツアープロの場合、1年間職場を失うということです。僕は幸い(レッスンやメディア出演など)仕事がある分、他のプレーヤーより認識が甘いかもしれませんが、それでも大変です」(中井)

しかも、このQTは参加するのに税込21万6000円のお金がかかる。それに加えて、1日ごとのプレーフィもかかるし、当然ながら交通費、食費、宿泊費もかかる。試合に出ているあいだはレッスンやメディア出演の仕事も入れられない。「ファイナルまで行けば80万、90万くらいかかると思います」(中井)という少なくない額の身銭を切って試合に臨む、その理由はどこにあるのだろうか。

画像: “試合で活躍する姿を見せたい人がいること”がQTに参加する1番の理由だと中井はいう(写真は2017年の東建ホームメイトカップ 撮影/岡沢裕行)

“試合で活躍する姿を見せたい人がいること”がQTに参加する1番の理由だと中井はいう(写真は2017年の東建ホームメイトカップ 撮影/岡沢裕行)

「一番は、試合に出てプロゴルファーとして活躍する姿を見せたい人がいるということです。それに、僕自身20何年かレッスン活動をしてきて、自分の考え方でどこまでできるのかを実証したいという思いもあります。周りにいるのは年齢が下手すると半分(中井は現在47歳)の選手たちですが、必死にあらがってます」(中井)

レッスンプロとしての顔のほうが正直なところ有名な中井にとっては、試合に出ることで「ゴルフに対して謙虚になれる」ことも重要なのだとか。自分を試合の場に置いてこそ、ゴルフの怖さ、奥深さを感じられ、試合に出続ける限り「僕はゴルフに対して傲慢になれない」と中井は言う。

さて、セカンドQTは初日が終わったばかりで、中井は現在1オーバー55位タイ。通過は40数名の見込みで、残りの3日間で少し順位を上げる必要があるという位置につけている。

「練習ラウンドでは難しく感じないホールがいきなり長くなり、短いパットが遠く感じ、グリーンの芝目が気になるというか“見えてくる”。広いホールの絶対行かないOB杭まで見えてくる。それで、少しずつ少しずつ、考えすぎちゃうんです。セカンドQTは順位が上から順にサードQTの会場を選べるので、ひとつでも上の順位で通過したいですが……まずはしっかりと通れるように頑張りたいですね」(中井)

プロゴルファーならばやはり試合に出て戦いというのはいわば本能。「来年の職場」を賭けた男たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。

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