出だしは“しぶこチャージ”を期待できる展開だったが……
トップのテレサ・ルー選手と8打差で最終日を迎えた渋野選手。8打差といえば逆転優勝したデサントレディース東海クラシックと同じ差ではありますが、現実的には優勝というよりも賞金女王争いのライバルであるシン・ジエ選手より上位でフィニッシュしたいという最終日だと思います。そのシン・ジエ選手は8アンダーの4位タイからのスタートです。
昨日はショットの調子が悪くスコアを伸ばせませんでしたが、今日は修正に成功したのかショットはキレキレ。1番ホールからパー5の3打目を3.5メートルのバーディチャンスにつけてきます。このチャンスは惜しくも逃しますが、2番では2打目を1メートル強につけてバーディ。これは「しぶこチャージ」があるかもと思わせる出だしでした。
しかしその後は、ショットは好調ながらパッティングが入らずスコアが伸ばせません。4番、5番、7番とバーディチャンスを逃します。8番では3打目をベタピンにつけOKバーディでしたが、9番ではアプローチをミスしてボギーを打ってしまいました。
後半に入っても状況は変わらず、10番、12番、14番、17番、18番とパーオンはするもののバーディが獲れないゴルフ。13番ではピンをオーバーしたところからの3パットボギーもあり、15番のパー5はバーディではありましたがイーグル逃しの2パット。ショットで作ったチャンスをパットで逃すというストレスのたまるゴルフだったと思います。
結局、ラウンドトータルでは35パット。最終日はスコアを伸ばせず12位タイで終戦となり、ホールアウト後のインタビューでは「悔しいのひと言です」とかなりへこんだ様子を見せていました。
賞金女王争いは約800万円差に
パットに加えて気になったのが、アプローチです。2週前のスタンレーレディスで新しいアプローチのスタイルを試して好感触を得、先週の休養中にアプローチの練習を多く積んできたとのことでしたが、今日はその成果を発揮できませんでした。
9番と16番でグリーンをショートサイドに外したところから、どちらも寄せ切れずにボギー。練習してきたやわらかい球のアプローチが上手くいきませんでした。
しかし、こういった新しい技術は一朝一夕で身につくものではないのである程度は仕方がありません。むしろミスしたとはいえ実戦でしっかりトライできたこと、今後の課題が明らかになったことをポジティブにとらえてもいいかもしれません。
パッティングに関しても、タッチはかなり合っていたように見え、ラインの設定の仕方が噛み合わなかっただけという感じもします。ショットがよかったことや、上位が見える展開だっただけに、「入れたい」という気持ちが強く出すぎて悪循環に陥ってしまっていたように私には思えました。
トータルで見れば、今週は彼女にとって初のサスペンデッドがあり、昨日は第3ラウンド終了後の組み替えで長時間の待ち時間ができ、その後調子を保てずにプレーの流れをつくるのにたいへん苦労した試合だったと思います。
ただ、これらは彼女にとって貴重な経験になったとも言えます。1週間の間のショットの好不調の波や、最終日のパッティングなど、「流れ」の重要さを肌で感じることもできたはずです。
青木翔コーチは、今年の渋野選手の課題の1つとして「好不調の波が下がる幅を小さくして、年間の好不調の幅を小さくすること」を挙げています。その意味でも大きな経験値を得た試合と言えるかもしれません。
また、こういった状況においても最終日をイーブンパーで回り、トータル6アンダー、12位タイでまとめたことは、成長の証とも言え、実力の表れでもあります。
賞金女王争い、今週はシン選手が8位タイと上位でフィニッシュ。渋野選手にとっては賞金を216万円離されて、約800万円差となりました。
終了後の会見で「賞金女王はまだ早いかな」と少し弱気な発言があらましたが、言うまでもなく逆転のチャンスはまだまだあります。
ショットは上向いていますので、次の台湾LPGAでのびのびプレーする姿を見せてくれることでしょう。