「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」今季5勝目を挙げた鈴木愛。賞金女王へ望みをつないだ強さの秘密をプロゴルファー・中村修が解き明かす。

出場21試合で5勝を挙げている

3月に行われたシーズン開幕イベントで「賞金女王+年間5勝」を掲げ、東京五輪も目指すと話していた鈴木愛選手。「三菱電機レディス」の優勝で宣言通りの年間5勝を達成し、賞金ランクは3位へ浮上しました。

賞金ランク首位のシン・ジエ選手、2位の渋野日向子選手はともに3勝。しかしシン、渋野両選手は償金額の高い試合で勝っていることから、鈴木選手は彼女たちの後塵を排しています。

画像: 樋口久子 三菱電機レディス今シーズン5勝目を挙げた鈴木愛

樋口久子 三菱電機レディス今シーズン5勝目を挙げた鈴木愛

もう一つの目標である東京五輪についても渋野選手の台頭により世界ランキングは畑岡奈紗選手の4位、渋野選手の13位に次ぐ24位と、基本的にはランク上位2名が出場できるというなか、日本人3番手の位置は変わっていません。

これは、年間5勝を挙げるほどの強さをもってしても賞金女王も東京五輪出場権も獲得できないほど女子ゴルフ界のレベルが上がってきているということを表していると思います。

ただ、鈴木選手の場合怪我の影響もあって今シーズンの出場試合数は21試合どまり。ランク6位の穴井詩選手などは35試合に出ているなか、約4戦に1回勝っているのは驚異的といえ、鈴木選手の実力をよく表しています。

では、鈴木選手のストロングポイントはどこにあるのでしょうか。ショット力、アプローチ、パッティングと大きく3つとそれを支配するメンタルの4つがゴルフを構成する大きな要素ですが、ご存知のように鈴木選手の持ち味はパッティングとメンタルの強さにあります。

画像: 鈴木愛といえば、なんといってもパッティング。三菱電機レディスでもシビれるパットを沈め続けた

鈴木愛といえば、なんといってもパッティング。三菱電機レディスでもシビれるパットを沈め続けた

今回の三菱電機レディスでも、最終日の16番パー5で見せてくれたバーディや17番のパーオンを逃した3打目のアプローチとパッティング、18番のパーパットなど緊張やプレッシャーで思うように体が動かないような場面でもシビれるパットを決め続けました。

最後のパットを入れた後の表情を見ればどれだけプレッシャーにさらされていたかよくわかりますね。たしかな技術と、優勝するんだ、負けるもんかという強い意志が高いパフォーマンスを発揮する要因になっています。

先週予選落ち後に残って練習していた鈴木、月曜から5時間練習したシン・ジエ

今季のスタッツを見てみると21試合に出場しトップテン回数は5回で11位。ちなみに1位は23試合出場で16回のシン・ジエ選手です。一昨年の賞金女王を獲った年は23試合で16回(1位)でしたし昨年も23試合で15回(4位)であったので今季は少し調子の波が大きいと言えます。

画像: シビれるパットを沈め続け、勝利をつかんだ

シビれるパットを沈め続け、勝利をつかんだ

スタッツを見てみるとやはりパッティングに原因があるようです。昨年と比べてパーオン率はほとんど変わっていませんが1ラウンド当たりの平均パットは28.5867(2位)から29.0746(6位)と落としています。その分昨季の平均バーディ数4.0267(1位)だったのが今季は3.4478(10位)とスコアを伸ばせていないことにつながっています。

パットが決まれば流れに乗っていけますし、逆にイージーなパットを外してしまうと流れを逃してしまいます。2日目に小祝さくら選手が記録した6連続バーディなどはそのいい例だと思います。だからこそほとんどのプロはパット練習にはかなりの時間を費やしています。

今大会ではパターをピンクのマレット型に変え勝負どころのパッティングを決められたことで優勝しましたが、先週の予選落ちしたマスターズGCレディースの練習グリーンでも入念にパット練習をする姿が目につきました。

画像: マスターズGCレディースの最終日スタート直前まで練習器具を使ってパット練習をするシン・ジエ

マスターズGCレディースの最終日スタート直前まで練習器具を使ってパット練習をするシン・ジエ

一方で、2位になったシン・ジエ選手も月曜日の練習日に5時間練習グリーンにいいたとう記者仲間の話しを聞きましたし、最終日のスタート前までシャフトが柔らかい練習用パターでボールを転がしていました。膨大な時間の練習量に裏付けされた確かな技術だからこそ試合で結果を残せるのだと改めて感じます。

国内女子ツアーは残すところ4試合。シン・ジエ、渋野日向子、鈴木愛の3人に賞金女王争いは絞られてきました。シン・ジエ選手は日本の賞金女王は獲ったことがありませんのでなりふり構わず獲りに来るでしょう。この3人の争いから目が離せなくなりました。

撮影/大澤進二

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