「大王製紙エリエールレディス」の最終日、7位タイからスタートした渋野日向子は66でプレーし今季4勝目を挙げた。激闘となったプレーの模様を、プロゴルファー・中村修がレポート!

今日の組合せは、目下賞金女王レーストップで史上初の4週連続優勝を狙う同スコア(13アンダー)の鈴木愛選手と12アンダーの岡山絵里選手。否が応でも鈴木愛選手を意識してしまう最終日の組み合わせになりました。

伸ばし合いとなるコースセッティングの中でどんな展開になるのでしょうか。後続には昨日伸ばした、シン・ジエ、勝みなみ、森田遥選手らが続きます。誰が勝ってもおかしくない、強者だらけのリーダーボードです。

画像: 逆転で今季4勝目を挙げた渋野日向子

逆転で今季4勝目を挙げた渋野日向子

スタートホールから渋野選手は2メートルくらいのバーディチャンスにつけます。しかしわずかにカップに蹴られてパー。鈴木愛、岡山絵里選手もパーでのスタートです。どちらが先にバーディを獲るのか、先手を打ったほうが有利になると思いました。

すると2番で鈴木、岡山の両選手がバーディ、しかし、渋野選手は3番で3.5メートルを入れ返して14アンダーで並びます。このホール、岡山選手は池ポチャのダブルボギーで後退します。

ここからは怒涛の“殴り合い”のはじまりです。4番パーのあと、5番のパー5では渋野、鈴木両選手とも2オンに成功し2パットのバーディ。6番パー4のパーを挟んで7番パー4でも両者バーディ。スコアを伸ばし合います。

一歩抜け出したのは鈴木選手。9番パー5で3打目をピタリと寄せバーディで。渋野選手はパーで、1打差をつけられて前半を終了します。一組前の古江彩佳選手が3連続バーディで15アンダーまでスコアを伸ばしますが、この時点で後続組で大きく伸ばす選手は誰もいません。

画像: 前半は渋野日向子を一打リードして折り返しす鈴木愛

前半は渋野日向子を一打リードして折り返しす鈴木愛

迎えたサンデーバックナイン、いきなり“しぶこチャージ”が炸裂します。10番パー4、11番パー5と連続バーディ。青木翔コーチに昨日話を聞いた際、「キーになるホールは折り返しの10番でバーディを獲れるかどうか。そこでバーディを獲れれば乗っていけるんです」と語っていましたが、その展開通りに、連続バーディで流れをつかみます。

ところがこの試合は本当にすごい試合で、鈴木選手も続く13番で奥から6メートルを入れて、18アンダーに並び返します。すさまじい伸ばし合い。この二人の独走かと思いきや、後続の森田遥選手も10、11番と連続バーディで19アンダーまでスコアを伸ばします。一体誰が勝つのか、見当もつきません。

鈴木、渋野両選手の明暗が分かれたのは15番パー4。渋野選手がピン手前4メートルくらいのバーディパットを決めると、鈴木選手は1.5メートルを決めきれません。渋野選手がまたしても1歩リードを奪います。残すは距離のある16番パー3、2オンも可能な17番パー5、そして18番パー4の3ホール。後続の森田遥選手は12番でボギーを打ち一歩後退18アンダーとしここで渋選手が首位に立ちます。

16番190ヤードパー3は渋野選手はわずかにグリーン左に外し、アプローチをすると明らかに強く出てしまいすが、ピンに当たって1メートルに留まります。これを入れてナイスパー。

余談ですが、ホールアウト後にキャディを務めた定由早織さんは「アプローチを打った瞬間に強いとわかって、でもピンに当たって止まったので心臓が止まるかと思いました」と、この1打を振り返っていました。

鈴木選手は手前からの5メートルがわずかにカップを反れてパー。1打差変わらずで、17番を迎えます。

画像: 本人もドキッとした17番ホールの2打目のあとのホッとした渋野日向子

本人もドキッとした17番ホールの2打目のあとのホッとした渋野日向子

そして17番パー5です。ここで鈴木選手は、まさかの右の池に入れてしまいます。渋野選手との差を詰めためにこの17番ホールは何としてもバーディが欲しいところで痛恨のミス。1ペナを払って3打目をレイアップし、4打目をパーを拾えるくらいの距離に寄せます。

渋野選手は軽いアゲンストのなかフェアウェイをキープすると、5Wで迷わずグリーンを狙います。しかしボールは左へ巻き、池の淵ギリギリに止まるラッキーなミスショットに。本人も「ドキッとしました」というショットから安全にグリーンに乗せてパーでホールアウト。鈴木選手はパーパットを決められず17アンダーに一歩後退します。

画像: 17番ホールのパーパットを外し悔しがる鈴木愛

17番ホールのパーパットを外し悔しがる鈴木愛

そして最終18番ホールです。ティショットを打ち終えると、16番あたりからポツポツ降り始めていた雨が強くなり、冷たい風が強く吹き始めます。2打目地点ではさらに強く吹き、まるで嵐のような天候に急変します。

風向きは強烈なフォロー。鈴木選手はこの突如変わった悪天候の中で2打目を2.5メートルに。渋野選手は右のラフから番手を2番手下げてPWで打ち5、6メートルにしっかりと乗せます。鈴木選手はこれを見事に決め18アンダーでホールアウト。

渋野選手は全英女子オープンの最終ホールではなく、帰国後のNEC軽井沢72ゴルフトーナメントで最終ホールのバーディパットをオーバーして3パットを喫し、プレーオフにも残れずに優勝を逃したことを教訓に2パットでパー。19アンダーでフィニッシュしました。

渋野、鈴木選手の組を襲った悪天候は、もちろん後続組も襲っています。強烈なアゲンストになった17番パー5で森田遥はボギー、最終18ホールでもボギーとし16アンダーでのフィニッシュに。渋野選手の4勝目が決まりました。

画像: 最終18番ホールでは急な悪天候も味方につけた

最終18番ホールでは急な悪天候も味方につけた

前回優勝したのデサントレディース東海クラシックで8打差を逆転したときにも、先行する渋野選手がホールアウトしたあとに天候が崩れ、最終組のシン・ジエ選手がスコアを伸ばせないということがありましたが、まさに天も味方につけるという印象です。

急遽、表彰式はクラブハウス内で執り行われることになりましたが、すべての選手がホールアウトすると先ほどまでの悪天候がウソのようにおさまり、予定通り18番グリーンで行われました。時に勝負とは運も大きく作用するものだと思い知らされました。

「先週の予選落ちで考える時間ができて、残り2戦はずっと応援してくれているファンの皆さんや、担いでくれているキャディさんやスタッフなどみんなために頑張ろうと思いました」(渋野)

画像: 左からキャディを務めた定由早織さん、渋野日向子、青木翔コーチ

左からキャディを務めた定由早織さん、渋野日向子、青木翔コーチ

自分のためだけでなく、支えてくれる人たちに感謝の気持ちを持って今週は試合に臨んでいたと話しました。過去に鈴木選手との優勝争いで惜敗してきたことを振り返り、「気持ちの面でも負けていた部分はあった。レベル、技量がまったく違う中で何が競えるかと切ったらそこは気持ちの問題。やっぱり気持ちで負けないようにと思ってやりました」(渋野)とも。

鈴木愛選手との競り合いに勝てたことは渋野選手をまた一回り成長させたことでしょう。来週の最終戦、一体どんなドラマが待っているのか。最後まで見届けたいと思います。

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