年が明け、いよいよオリンピックイヤーとなる2020年が始まった。約半年後に迫った東京五輪での活躍が期待されるブルックス・ケプカのスウィングを、プロゴルファー・中村修が改めて分析した。

クラブをシャットに使って飛ばす

2020年7月末に開催される東京オリンピックのゴルフ競技。その中で活躍が期待される選手の一人が、ブルックス・ケプカです。

2018-19シーズンではマスターズ2位、全米オープン2位、全英オープン4位、そして全米プロゴルフ選手権の連覇と、4大メジャーで好成績を収め続けました。2019-20年シーズンは左ひざの負傷によりまだ2試合しか出場できていませんが、それでも世界ランク1位をキープ、オリンピックゴルフランキングも1位で現在東京五輪出場資格を有しています(2019年12/25時点)。

画像: 現在オリンピックゴルフランキング1位のブルックス・ケプカ(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

現在オリンピックゴルフランキング1位のブルックス・ケプカ(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

ケプカといえばフェース面をシャットに使うスウィングが特徴的です。バックスウィングではフェース面がずっとボールの方向を見たまま、ワイドにクラブを上げていきます。下半身の捻転は少なめで、とにかく右足が動かないようにがっちりと固めて上半身をねじっています。

画像: クラブをシャットにキープしたまま、ワイドにクラブを上げていく(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

クラブをシャットにキープしたまま、ワイドにクラブを上げていく(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

シャットにクラブを上げていくと、トップポジションではフェース面が空を向く形になります。トップでは左手首を手のひら側に折る「バウドリスト(掌屈)」という動きを取り入れており、これによってクラブ軌道に対してフェース向きがスクェアである時間が長くとれるので球筋の安定にもつながっています。

画像: トップ位置で左手首を手のひら側に折る「掌屈」という動きが入る(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

トップ位置で左手首を手のひら側に折る「掌屈」という動きが入る(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

ダウンスウィングでは、両肩を縦方向に回転させながらクラブを下ろしてきます。インパクトでは両肩のラインが地面とほぼ垂直になるほどです。これは地面反力も使いリリースも多くは使わないこともあり、右わき腹を縮める「サイドベント(側屈)」をかなり強めに入れボールとの距離をアジャストしています。この動きによって正確なインパクトを実現しています。

画像: 両肩を縦に使ってダウンスウィング(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

両肩を縦に使ってダウンスウィング(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

バックスウィングからフェースがシャットな状態をキープし続けているため、スウィング中意識的にフェースローテーションは行われません。すると通常は安定性が向上するぶん飛距離は落ちてしまいます。が、ケプカは持ち前の体の強さでカバーして、飛距離と方向性を両立しています。

思い切り振ってもインパクトの衝撃に耐えられるフィジカルの強さもそうですが、何より脚を伸ばしすことで得られる反力と肩を縦方向に回す回転力をプラスしてすごいスピードで振ることができる体の柔軟性。これが、ケプカの飛んで曲がらないスウィングを作っていると言えますね。

飛ばしにフォーカスされがちですが、戦略家な一面も持っているのがケプカです。ピッチング以上の番手ではフルショット、4分の3、MAXと3つの力加減。ピッチングよりも下の番手ではさらに細かく、5パターンで打った場合の飛距離をそれぞれ練習の段階でメモしておくことで、風やライ、ピンポジションによって適切な番手を選択しているようです。加えて、グリーン上での繊細なパッティングも流石の一言です。

左ひざの具合が気になるところですがそれさえクリアしてしまえば、メジャーという大舞台に滅法強いケプカですから、東京五輪でもその実力を大いに発揮してくれるでしょう。

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