空前の盛り上がりを見せた2019年の女子ツアー。その中心にいたのは渋野日向子……だったが、それは夏以降の話。その前半戦は、「ベテランVS黄金世代」という構図だった。ツアーを盛り上げた黄金世代の大活躍を、プロゴルファー・中村修が振り返った。

黄金世代の今季初優勝は河本結。勝みなみ、渋野日向子の2連勝で空気が変わった

2019年の女子ゴルフ界で話題になったのはなんといっても渋野日向子選手。しかし、渋野選手がAIG全英女子オープンを制するまでは、特定の選手というよりも「黄金世代」という世代に属する選手たちが総合的に取り上げられる機会が多かったように思います。しかも、彼女たちは最初から大活躍できたわけでは意外とありませんでした。

少しツアー前半戦を振り返ってみると、3月の開幕から4月までの8試合で勝利をつかんだのは、比嘉真美子、鈴木愛、上田桃子、成田美寿々、イ・チヒといった選手たちで、いずれ劣らぬ実力者ばかり。黄金世代で勝利をつかんだのは河本結選手だけで、序盤は強豪選手たちの壁に跳ね返されていました。

画像: 2019シーズンに初優勝を挙げた98年生まれの渋野日向子(右)、河本結(中)、99年2月生まれの原英莉花(左)の黄金世代

2019シーズンに初優勝を挙げた98年生まれの渋野日向子(右)、河本結(中)、99年2月生まれの原英莉花(左)の黄金世代

やはりベテラン勢は強い。黄金世代の勢いを持ってしても、勝利に至るのは難しいのでは? という空気を変えたのが、勝みなみ選手と渋野日向子選手の黄金世代2連勝でした。次の試合はイ・ミニョン選手が勝ちますが、その次の試合はまたも勝選手が制し、その翌週はやはり黄金世代の原英莉花選手が制します。

5月頃の女子ツアーは、ベテラン勢VS黄金世代という明確な構図があり、大いに盛り上がりました。
それにしても、黄金世代の選手たちはなぜこんなにも勝利を重ねられたのでしょうか。私は、黄金世代以降で変化したのは選手の意識ではないかと思います。

「レギュラーの壁」「ルーキーの壁」を黄金世代は壊した

ご存知のように、勝みなみ選手が15歳でアマチュア優勝。その後畑岡奈紗選手が同じくアマチュアで日本女子オープンに勝ち、世代としてプロとしてのルーキーイヤーを迎えた2018年には新垣比菜選手、大里桃子選手らが勝利を重ねてきました。

10代で勝つのは当たり前。ルーキーで勝つのも当たり前。できればアマチュアのうちに勝っておきたい。黄金世代以降のメンタリティは、それ以前と大きく変化していると思います。プロの舞台に臆さず、真っすぐに勝ちに来ている。

以前は、アマチュアとプロの間には高くて超えられない壁があり、プロ1年目ともなれば勝ち負けの前にまず勉強、ツアーに慣れるところから、という意識だったはずです。

陸上では2017年に桐生祥秀選手が100メートル「10秒の壁」を日本人として始めて突破、その後、サニブラウン・ハキーム選手、小池祐貴選手らが相次いで9秒台を記録しています。誰かが「できた」という認識があると、ときに周りの選手も「できる」ようになるということがあるように思いますし、それが「壁が壊れる」ということだと思います。アマチュアとレギュラーの壁、ハタチ前後でのツアー優勝の壁、ルーキー優勝の壁……黄金世代は、多くの壁を壊してきたように思います。渋野日向子選手は「海外メジャーの壁」も壊しましたよね。

2020年シーズンの注目選手は?

黄金世代が壁を壊したところにやってくるのが、来年ルーキーイヤーを迎える安田祐香、西村優菜、吉田優利らプラチナ世代と、そのさらに下の現高校3年生世代です。彼女たちの活躍もほぼ必至といってよく、年末には初シードを得る選手が複数現れると思います。そうなると、今賞金ランク50位以内にいるシード選手の誰かが、シード圏外に弾き出されることになります。2020年、女子ツアーのサバイバルレースは、さらに激しさを増すのは間違いありません。

そんな中、私が注目しているのはプラチナ世代のひとつ下の世代、2001年生まれの笹生優花選手です。今年プロ合格。予選会も上位でフィニッシュし、来季前半戦の出場権を得ています。フィリピンと日本、両方の国籍を持ち、2018年にはフィリピン代表としてアジア大会で金メダルも獲得しています。まだ荒削りですが、非常に飛ぶ選手で、ポテンシャルは渋野日向子選手クラスといっても過言ではないと思います。

画像: プロテスト、予選会をクリアし来季前半戦の出場権をつかんだ笹生優花

プロテスト、予選会をクリアし来季前半戦の出場権をつかんだ笹生優花

そしてほかにも、厳しいプロテスト、そして予選会を突破してきた選手たちすべてにチャンスがあると思います。開幕まではまだしばらく時間がありますが、今から楽しみでなりません。

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