見た目はほぼ同じ、なのにストレート系とつかまり系
注目のドライバー2モデルは「ST200」と「ST200X」。ミズノとして世界で販売するグローバルモデルだ。今回、ゴルフギアに造詣の深い伊丹大介プロが実際にドライバーを試打、そのインプレッションを元に、ミズノのマスターフィッター清水俊充氏が解説をしてくれた。
まず、打つ前にその見た目について話し始める伊丹プロ。
「両方ともヘッド体積は460cm3なんですよね。特徴が異なるのに見た目がほぼ同じというのは珍しいですね」(伊丹)
「基本設計はほとんど同じで、特徴としてはカーボンクラウンと高反発βチタンの採用。また、ウエーブテクノロジーソールでフェースをたわませて反発性能を上げています。ST200がライ角56.5度でフェースアングルはオープン、ST200Xはライ角59.5度でスクェアフェースです。ロフトもST200が9.5度なのに対し、ST200Xは10.5度。それぞれ±2度調整できます」(清水)
「ライ角がフラットなST200がストレート系、ライ角が大きくロフトも1度寝ているST200Xはつかまり系ということですね。冬場はロフトを多めにしてキャリーを、夏はロフトを立ててランを稼ぐことができますし、晴れた日は立てて、雨の日は多めにするなど、1本でロフトをいろいろ変えられるのはいいですね」(伊丹)
暴れない軽量シャフトとヘッドの相乗効果でインパクトが安定
まずはST200Xから打ってみる。ロフト10.5度、シャフトは「20 MFUSION」のS(49グラム)だ。
「ライ角が59.5度には見えないですね。日本人の平均身長が170センチだとすると、59.5度だとトウが上がって見えるんです。でもST200Xは、トウの落とし方が丸みを帯びているので違和感がない。トウが浮いて見えないし、座りもいいです。また、最近のドライバーは特徴あるデザインのものが多い中、これはシックで落ち着いたデザイン。ミズノ顔で、違和感なく構えられます」(伊丹)
「ミズノ顔、プラス、ミズノ打感。そこは譲れません」と清水氏。伊丹は、カーボンクラウンにも関わらず打感が良いことに驚きを隠さない。
「異素材を複合したコンポジットヘッドは、軽くて振りやすいんですが打感に難があることが多い。でもST200Xは打感が単に柔らかいだけじゃなくて、打音も金属音が入っていて心地いいですね。重心距離が短めなので、ダウンスウィングでフェースが開きにくく感じましたがこれは?」(伊丹)
「『スクエアストライクデザイン』の効果です。ヒール側にウェートを装着し、重心距離を短めにしてスクェアなインパクトを可能にしています」(清水)
その効果は大いに実感できたようで、「ダウンスウィングでフェースを返そうとしなくても、開きにくいのでそのままフェースの面が下りてくる」と伊丹プロ。さらにこう続ける。
「出球の安定性、高さの安定性につながります。フェースが一瞬開いて、急に戻るとコントロールしにくく、テクニックが必要ですが、ST200Xは自分で操作しなくても、オートマチックにフェースコントロールしてくれる。結果、曲がり幅が抑えられ、平均飛距離が伸びます。テークバックが上げやすいクラブはありましたが、ダウンスウィングが安定するのはあまりなかったですよ」(伊丹)
試打した伊丹プロにはもうひとつ気になることがあった。シャフトだ。ミズノのSTシリーズにはTOUR ADやSpeeder、Diamanaなど多くのシャフトがラインナップされているが、その中で今回伊丹プロが打ったのは新しくなった「MFUSION」。
もちろん試打によって合うシャフトは人それぞれだが、新しいMFUSIONのヘッドとの相性はぜひ一度打ってみて欲しいと清水さんも自信を持ってすすめる。
「シャフトがめちゃくちゃ振りやすいですね。シャフト的には軽くてしっかりしたカルカタ系。軽いシャフトは振りやすいけど柔らかすぎて、ヘッドがバラつくことが多いんですが、これはバラつかないので出球の高さも回転数も揃えやすく、平均飛距離が伸びる予感がします。また、非常に振りやすいので力みも出にくい」(伊丹)
「最初にそこに目をつけるとはさすがです。MFUSIONは”軽くて暴れにくい”を追求したシャフトなんです」(清水)
軽すぎると当たり負けする感じがある場合があるが、「MFUSIONは当たり負けしない」と伊丹プロは評価。トルクは5.6という表示だが、「3点台のようなしっかり感がある」と評価した。
【試打クラブスペック】
ST200X
ロフト角/10.5度
ライ角/59.5度
ヘッド体積/460cm3
長さ/45.75インチ
シャフト/20 MFUSION
フレックス/S
シャフト重さ/49g
クラブ重さ/292g
しなりが大きくタイミングを取りやすい「PLATINUM MFUSION」
伊丹プロがシャフトに興味を持ったところでさらに掘り下げてみよう。MFUSIONシャフトにはもう1種類ある。34グラムとさらに軽い「PLATINUM MFUSION」だ。伊丹プロには明らかにアンダースペックだが……。
「ダウンで振り遅れません。しなり戻りが早いですね。先がしなる感じ。HS35〜36m/sあたりが対象ですが、40m/sでも普通にタイミングが取れます。40m/sのときは早めに戻り、35〜36m/sだとゆっくり戻ります。また、振りやすさ重視のカルカタですが、思ったより当たり負けもない。しなり戻りが強い分、出球は高いけど吹き上がらずに飛んでいきます。ヘッドの重さも感じやすく、タイミングが取りやすい。とくにシニアは体が固くなるとスウィングがスリークォーターになるため、しなりが大きいほうがタイミングを取りやすい人が多いんです。ぜひ試してほしいですね」(伊丹)
「言いたいことをすべて言ってくださいました。ちなみに、女性に向けて、1インチ短い44.75インチもあります。試打の段階でも老若男女問わず打って頂けるように取り揃えています」(清水)
「ロフトを少なめに設定すると、女性アスリートは女子プロに近い球が打てそうですね」と伊丹プロ。小柄な男性にも短い設定はオススメだと付け加えてくれた。短いほうが平均飛距離が伸びる人もいるとのことなので、試打会では積極的にトライしたい。
【スペック】
ST200X
ロフト角/10.5度
ライ角/59.5度
ヘッド体積/460cm3
長さ/45.75インチ
シャフト/PLATINUM MFUSION
フレックス/R
シャフト重さ/34グラム
クラブ重さ/274グラム
ST200はロースピンの強弾道。もう左は怖くない!
続いてはもうひとつのモデル、ST200。試打スペックはロフト9.5度、純正シャフト「Tour AD GM-200」のSフレックスだ。
「超ストレートに見えますね。ヘッドの座り通りに構えるとオープンですが、パターのようにトップブレードやフェースで合わせるとストレート。トップブレードが直線的ではなく丸みを帯びていて、私はこちらのほうが構えやすいです。ミズノらしいですね。滑らかにトウが逃げているので、左に行きにくいイメージもあります。日本のシニアに多い、フェースを開いて閉じながら、ボールを包むようにとらえる方には使いやすそうです」(伊丹)
いざ実打といこう。数球打った伊丹はすぐさまST200Xとの違いを見抜く。
「上じゃなくて前に行く感じですね。直進性が高い。振りやすさ自体は一緒ですが、ST200Xはドロー、スライサーがストレートになるイメージです。対してST200は素直。ストレートにそのまま飛んでいきます。こちらのほうが球は強く感じますね。ロースピン、回転数が少なく感じます。叩いてもハイスピンにならない」
そして、ST200Xとの違いはボールの高さやスピン量にもある。
「ST200Xはロフトなりに飛んでいきますが、ST200はロフトよりちょっと低めの感じ。打感はどちらも同じです。振りやすい中でフェース面が安定している。若干閉じ気味に下りてくるので、安定してドロー、安定してストレートが打てます。左には行きません」(伊丹)
清水さんは「今回装着したシャフトTour AD GM-200の感想はいかがですか?」と質問。伊丹プロはこう答える。
「黒いのでシャフトとヘッドのカラーマッチングがよく、収縮色なので短く感じます。性能的にはつかまりがよく、振りやすい。カウンターバランスのように手元が重く感じるせいで、『20 MFUSION』の49グラムより5グラム重くても重量感を感じません。しなりは、ちょっと先が走って当たり負けせず、球離れは早いけど重い球が出ますね」(伊丹)
伊丹プロはあらためて試打の重要性を認識したという。
「どんなスウィングのタイプでも、ヘッドとシャフトの組み合わせ次第で平均飛距離が伸びると思います。ヘッドスピードも30m/s台ちょっとから50m/s近くまで対応できます。ただし、これだけ幅が広いと知識がないと自分では選べません。試打をしてフィッターさんのアドバイスを受けることが重要です」(伊丹)
あなたの飛びを変えるSTシリーズ。今すぐ、ホームページで開催スケジュールをチェックだ!
【スペック】
ST200
ロフト角/9.5度
ライ角/56.5度
ヘッド体積/460cm3
長さ/45.5インチ
シャフト/Tour AD GM-200
フレックス/S
シャフト重さ/54グラム
クラブ重さ/301グラム
JPX 200Xアイアンは飛び系なのに打感が柔らかい
番外編として、「ST」シリーズと合わせて試打会実施中の「JPX 200X」アイアンも打ってみることに。清水フィッター曰く「『JPX』のDNAを踏襲した飛び系アイアン」で、7番で26度のストロングロフト設計だ。だが、伊丹プロをまず驚かせたのは打感だった。
「サウンドリブを採用し、打感のよさを求めました」(清水)
「これは柔らかい! 誰が打ってもソフトな打感だとわかります。打感が軽いというか、ボールが軽く感じる。(通常の重さの半分の)20グラム台のボールを打っているみたいです。いかにも飛び系ではない、セミグースがいいですね。強いグースはつかまりはよくなるけど球が上がらず、飛びすぎる。JPX 200Xはセミグースのわりにはつかまり、球の高さもあります。きれいな球筋です。打感は、球離れは早いんですが、ちゃんと食いついてる、ちょっとつぶれてる感じもあります」
「アドレス時にバック側が見えない、正統派アイアン形状を意識しています。長さも0.5インチしか長くしていません。通常のスチール規格でもヒューマンデータによる飛距離は変わらない(落ちていない)んです」(清水)
「ほんとに顔がいい。バックフェースが見えないのがいい。ユーティリティっぽい飛び系アイアンは飛ぶけど顔が……というのが多いんですが、これは完全にアイアンですよ。ソールの削り方も上手でソールは厚いけど歯の部分を滑らかに落としてあるので、やや鋭角に入れても突っかからない
また、ヘッドが大きすぎないのでセミラフ、ラフからの抜けがいい。飛び系はトウからヒールが長く、ソールが厚すぎるので抜け感が悪いんですが、JPX 200Xならラフからうまく打てると思います。中型ヘッドで大型ヘッドのパフォーマンス。ミズノさんらしいアイアンです」(伊丹)
「ST」シリーズ同様、飛びと打感を両立した仕上がりを体感し、大満足の伊丹プロだった。
【スペック】
JPX200X
ロフト角/26度(7番)
ライ角/61度
長さ/37.25インチ
シャフト/20 MFUSION
フレックス/SR
シャフト重さ/58g
クラブ重さ/369g
協力/ザ・ゴルフガーデン高島平