優勝したAIG全英女子オープンではみずからキャディを務めるなど、渋野日向子を大活躍に導いた青木翔コーチ。指導する選手も増えたこのオフには、コーチングのスキルアップと新しい試みにも余念がないようだ。オフの一日を取材した。

最新のパット解析機を試した

渋野日向子をブレークさせたコーチとして一躍時の人となった青木翔。自身の経験をもとに様々なプレーヤーのスウィングを研究し、独自のスウィング論を構築。それでいて選手を型にはめない指導が功を奏し、個性ある選手の育成に成功している。

今季は渋野日向子に加え、三ヶ島かなや野澤真央など選手も増えチーム青木としてタイ合宿などを精力的にこなしている。

その青木が、オフの1日を利用してパッティングを計測し分析する計測器「キャプト」とグリップ部にウェートを装着することでスウィングを整える「ツアーロック」の講習やフィッティングを受ける様子を取材した。

画像: オフを利用してパット解析機「キャプト」など話題の機器をテストした

オフを利用してパット解析機「キャプト」など話題の機器をテストした

まずは、パッティング解析機の「キャプト」。これはシャフトに装着した3Dセンサーで16項目にも及ぶデータを計測し解析するというもの。

たとえばストローク中のフェースの開閉度合いや、ロフトやライ角の変化、スウィングテンポなどだ。計測は青木自身が使うパターを持参し、約2メートルのストレートラインで10球打って実施。

その結果から「パッティング自体のレベルは非常に高い」と舌を巻くのはキャプトの専門家であるプロゴルファー・橋本真和。

画像: 16項目を計測しパッティングを分析できる「キャプト」の解析画面

16項目を計測しパッティングを分析できる「キャプト」の解析画面

「まず、青木コーチのパッティングはヘッドを振り子にした場合に支点となるポイントのズレがわずかに1.3センチとほぼズレがありません。支点も上のほうに位置しているので緩やかな軌道でストローク的には非常に安定していますし再現性も高いです」(橋本)

画像: パットの支点やパットのスウィングプレーンを表す「キャプト」の画面

パットの支点やパットのスウィングプレーンを表す「キャプト」の画面

ただ、青木自身は「左に引っかかることがある」といい、さらに解析を進めると、アドレスでフェースがやや左を向いていることが判明。イントゥアウトの軌道で、フェースがややオープンでインパクトしていることがわかった。

その状態でも結果としてパットが入っていれば計測結果に従わなくても問題はなく、ただ自分のクセとして知っていればいいと橋本。ただ、青木の場合はピン型のパターからマレット型に持ち替えて計測したところ、フェースの向きがカップ中央に向くようになり、クラブの軌道もゆるやかなイントゥインに改善された。

「コーチとしては、選手のクセや傾向を知るうえで必要なデータだと思います。必ずしも選手に伝える必要はないと思いますが、調子のいいときと悪くなったときの違いも見えるので役立ちそうです。それにしても最初からフェース向きが間違っていたとは(笑)」(青木)

画像: 構えた後にフェースの向きをチェックするとカップより左を向いていた

構えた後にフェースの向きをチェックするとカップより左を向いていた

自分のプレーの参考にしつつ、選手に教えるときのヒントも得たようだ。

グリップエンドにつけるウェートもテスト

続いては、グリップエンドから装着するウェートシステム「ツアーロック」。この製品は実際にPGAツアーでも使用されていて、いわゆるグリップ側の重量を増やすカウンターバランスにすることでクラブの振り感を整えるというもの。

その効果として、ドライバーやアプローチでミスの傾向を防いでくれたりヘッドスピードが上がるという。早速、サンドウェッジのグリップエンドに20グラムのウェートから装着してみると、クラブを持った瞬間からその違いを感じると青木。

「フルショットでの効果よりも、短いアプローチで効果を感じます。手元が重いからヘッドと同調して動き出しやすい。そのままオートマチックに打てる。こんなに変わるんですね」(青木)

画像: グリップエンドから穴をあけて装着し振り感を整えるツアーロック。重さや装着する位置によって形状は様々

グリップエンドから穴をあけて装着し振り感を整えるツアーロック。重さや装着する位置によって形状は様々

ウェッジに続いて7番アイアン、5番アイアンと重さを変えながらベストな振り心地をフィッティングしてくと、弾道が高くなり飛距離も3から5ヤードは確実に伸びるようになっていた。どうやら振りやすくなったことでヘッドスピードが上がったようだ。

そしてドライバーではフェードヒッターだという青木コーチの嫌うミスは意図せず左へ曲がっていく弾道。グリップエンドからウェートを置く位置をシャフト内部10センチ程度の位置からグリップエンドまで位置を試しながらフィッティングをしたところ、最終的にはグリップエンドに装着した際に思い通りの弾道が描かれるようになった。

画像: グリップエンドにつけるウェート「ツアーロック」をテストする青木

グリップエンドにつけるウェート「ツアーロック」をテストする青木

この器具をテストした背景には、指導するプロたちにとって有益かどうかに加え、別の目的もあったようだ。

「このオフの合宿のおかげで渋野日向子の仕上がりが良くて、フルバック以外のティだと勝負しても勝てなくなってきてるんです。それはコーチとしてはうれしいことなのですが、ゴルファーとしてはね、負けたくないじゃないですか、バカにされるし(笑)。パッティング解析やこのウェートシステムも自分で使ってみて選手にフィードバックできればいいですね」(青木)

コーチであってもオフの間にゴルファーとして進化することが大事だと青木。その姿勢があるからこそ、“しぶこ”を偉業に導けたのだと思うと同時に、新しい機器に触れてうれしそうにしている姿からは、ゴルフが大好きでまだまだ自分でも上達したい、いいスコアで回りたいという純粋さも感じる。

そして、もしかしたらこの熱心さは、渋野日向子に勝ちたい、負けたくないだけなのでは……と思わず“邪推”したくなる、青木翔のオフの1日だった。

取材協力/ヒルズゴルフアカデミー

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