ゴルフの主にショートゲームでグリーンを狙っていくショットや、バンカーからの脱出などで活躍するのがウェッジというクラブ。ピッチングウェッジ、サンドウェッジなど種類によって様々な呼び方があるが、その違いは? バッグに何本入れて、ロフトの角度は何度のものを採用すればいい? ウェッジの基本からおすすめの選び方・使い分けまで、まとめて解説!

そもそもウェッジとはどんなクラブ?

ウェッジとアイアンに、たとえばルール上の明確な区分は存在しない。現代では、アイアンセットのピッチングウェッジ(PW)よりロフト(説明は後述)が寝たクラブのことをウェッジと慣例的に呼んでいるというのが実情に即した説明となるだろう。

画像: ウェッジの基本性能から選び方まで、まとめて解説

ウェッジの基本性能から選び方まで、まとめて解説

かつては、アイアンセットにはピッチングウェッジの下にアプローチウェッジ(AW)あるいはピッチングサンド(PS)、そしてサンドウェッジ(SW)の3本のウェッジが組み込まれている選び方がほとんどだった。大きく潮目が変わったのは1997年、タイガー・ウッズがクリーブランドの「TA588」ウェッジを使用してマスターズに勝利を収めたこと。タイガーはその後タイトリストと契約し、ボーケイウェッジを手に全盛期を迎えることになる(のちにナイキ、現在はテーラーメイドと契約)のだが、そのタイガーの活躍と足並みを揃えるように、アマチュアゴルファーでもプロと同じようにPWの下にいわゆる“単品ウェッジ”を入れるというケースが多くなる。

単品ウェッジ人気を受けて、アイアンの「SWまでのセット売り」は少しずつ減っていき、ご存知のように現在では「PWまで」のセットが主流となっているというわけだ。そのため、多くのゴルファーがアイアンとは別にウェッジを別途購入し、バッグに忍ばせるという選び方が生まれている。これは余談だが、最近ではセットのPWも抜いて同じロフト帯の単品ウェッジを入れるプロが増えているため、やがてはアイアンも9番までのセット販売が一般的、なんてことになるかもしれない。

ロフト角によって呼び方が変わる

さて、そんなウェッジとは、ロフトの角度帯の違いによってざっくりとした種類が存在する。

〜48度 ピッチングウェッジ
50〜52度 アプローチウェッジ(ギャップウェッジ)
54〜58度 サンドウェッジ
60度〜 ロブウェッジ

画像: 「P」、「A」、「S」など英字で分類されていたり、シンプルにロフト角が印字されていたりと番手表記は様々ある(撮影/渡部義一)

「P」、「A」、「S」など英字で分類されていたり、シンプルにロフト角が印字されていたりと番手表記は様々ある(撮影/渡部義一)

これも明確な定義があるわけではないが、だいたい上のような種類で分類がされる。このなかで、アプローチウェッジとサンドウェッジはほとんどのゴルファーがバッグに入れるマストな種類のアイテム。角度が48度以下のピッチングウェッジや、60度以上のロブウェッジは、必要な人だけが入れる種類のエクストラクラブというのが実情だ。

では、46度くらいから64度くらいまで、探せば違いが1度刻みで選べる単品ウェッジの中から多くのプロ、そしてアマチュアゴルファーはどのような選び方でウェッジを組み合わせているのだろうか。まず考えておきたいのが、パターを除いた13本のロフトの流れだ。

画像: クラブ全体のロフトの流れによって、最適なウェッジのロフトも変わってくる

クラブ全体のロフトの流れによって、最適なウェッジのロフトも変わってくる

改めてロフトとはなにかと言えば、それはクラブフェースにつけられた傾きのこと。その大きさには垂直から何度傾いているかを示す数字が用いられ、一般に番手間のロフトピッチは4度程度が適正とされる。それで計算すると、たとえばもっともロフトの立っているドライバー(1W)のロフト角度が9度だとすれば、パターを除いた13本の流れは下記のようになる。

1W 9
3W 13
5W 17
UT 21
UT 25
5I 29
6I 33
7I 37
8I 41
9I 45
PW 49
AW 53
SW 57

ドライバーからサンドウェッジまできれいに4度ピッチの選び方となり、それぞれの番手でフルショットすれば、自然に距離が打ち分けられるというわけだ。実際、多くのアマチュアゴルファーのキャディバッグを覗いて見ると、PもしくはPWと刻印されたアイアンセットのピッチングウェッジの下に、52度のアプローチウェッジ、58度のサンドウェッジを使い分けているといった選び方が多く見られる。

しかし、実際のところはこのようなクラブセッティングを組むのは非常に難しい。なぜなら、以前に比べてアイアンのロフトがストロング化(ロフトを立たせる)しているからで、市販品のアイアンでPWのロフト角度が49度前後のものを探すのは至難の業といえる。

画像: アイアンがストロングロフト化したことで、番手間のギャップが開きやすくなっている(撮影/野村知也)

アイアンがストロングロフト化したことで、番手間のギャップが開きやすくなっている(撮影/野村知也)

なぜストロングロフト化などという厄介な事態が起きたのかはここでは論じないが、最近のアイアンセットのPWは43度前後というのがほぼ一般的と言っていい状況で、40度を切るものもある。たとえばPWのロフト角度が41度だとしたら、その下に52度のウェッジを入れた場合、11度ものロフトピッチが生まれてしまう。それだと、正確に距離を打ち分けたい100ヤード以内のレンジでの距離の使い分けが難しくなってしまう。

そこで、最近の選び方ではPWの下にロフト角度46〜48度前後のウェッジを1本入れ、52度や50度のウェッジにつなげるというセッティングが微増傾向にある。そうすれば、番手間のロフト差がおおむね5度前後となり、距離の打ち分けもやりやすくなるというわけだ。

ウェッジの特徴その1:高重心

さて、続いてはウェッジを機能面から見ていこう。手元にアイアンとウェッジがそれぞれあれば見比べて見ると違いがわかるが、多くの場合ウェッジとはアイアンよりもシャフトを挿入するネック部分が長い。ネックが長いとどうなるかといえば、ネックには重量があるので、ヘッドの重心位置は高くなる。そして重心位置が高くなると、必然的に重心よりも下でボールをヒットしやすくなる。インパクトの瞬間、フェースとボールにはギア効果と呼ばれる現象が働くが、重心より下でボールをヒットした場合、その効果はボールのスピンを増やすように作用する。

スピンは少ないほど飛距離を伸ばすのに有利になるが、多いほどボールをコントロールしたり、止めたりすることがやりやすくなる。ウェッジとは飛ばすクラブではなく、ボールを飛ばさずに止めたいクラブなので、高重心のほうがおすすめというわけだ。

ウェッジの特徴その2:バウンス

もうひとつアイアンと違う点が、ソールのふくらみ、いわゆるバウンスの違いだ。ウェッジ類、とくにサンドウェッジには10度前後のバウンスがつけられているが、これは主にバンカーからの脱出を容易にするため。

画像: 赤線で示した角度が、バウンス角

赤線で示した角度が、バウンス角

バンカーショットでは、サンドウェッジの刃にあたるリーディングエッジではなく、ソールを先に砂に入れて砂ごとボールを運び出す必要がある。このとき、クラブにバウンスが適切につけられていると、バウンス角とそれによる“高さ”の分だけ、ソールを先に接地させやすくなり、なおかつ砂の中に潜りすぎず、クラブが抜けるのを手伝ってくれる。

画像: とくにバンカーショットでは、バウンスがあるとやさしく打てる(撮影/増田保雄)

とくにバンカーショットでは、バウンスがあるとやさしく打てる(撮影/増田保雄)

プロにとってはこのバウンスのふくらみが必要ないと感じ、ローバウンスと呼ばれるウェッジを好む場合も多いが、多くのアマチュアにとってはこのバウンスこそがサンドウェッジをサンドウェッジたらしめている機能のキモと言える部分。バンカーだけでなく、フェアウェイはもちろん、ラフやベアグラウンドなど様々なライからアプローチする際にも、ざっくりを防いでくれ、ボールをしっかりとつかまえるような作用をバウンスは果たしてくれる。好みにもよるが、サンドウェッジでいえばバウンス角が10度以上のものを選んでおくのがおすすめだ。

また、最近では同じモデル、同じロフト角度でもソール形状に違いをもたせているといったケースも多くある。

画像: 多くのゴルファーにマッチするようにソール形状を多数ラインナップしたタイトリスト「ボーケイSM8ウェッジ」のようなモデルも存在する

多くのゴルファーにマッチするようにソール形状を多数ラインナップしたタイトリスト「ボーケイSM8ウェッジ」のようなモデルも存在する

サンドウェッジのバウンスは基本的にあればあったほうがやさしいといえるが、一方でそれはソールの幅とも関係する。たとえばソールの幅が広いウェッジにはダフリにくく、オートマチックに打てるといったメリットがある。ただ、ソール幅の広いウェッジに大きなバウンス角をつけると、幅が広い分だけバウンスのふくらみの頂点がリーディングエッジから離れすぎてしまう(構えたときにリーディングエッジが浮きすぎてしまう)ことから、ワイドソールウェッジの場合はバウンス角は少なめに設定されている場合が多い。

バウンス角の多いウェッジがやさしいと感じるか、ワイドソールのウェッジがやさしいと感じるかは人によって考え方が異なる部分でどちらがおすすめという事でもない。その違いがあることを認識した上で、自分自身で吟味してみるといいだろう。

サンドウェッジは56度と58度、どっちがいい?

さて、ウェッジのロフト角度はセットの流れで決めるのがいいと前述したが、サンドウェッジに関してはややエクストラクラブ的に、自分の使いやすいロフトを選ぶという選び方もある。56度を選ぶか、58度を選ぶかという論争がそれにあたる。

58度のサンドウェッジは、日本のプロが多く採用しているロフト角度。芝種の違いなどの理由からPGAツアーのプロは56度の下に60度を入れているという選び方が多く、58度の使用者はあまり多くない。扱いが難しく、日本のコースで普通にプレーする分には登場する機会が少ない60度は14本のなかに是非とも入れたいクラブとは言いがたく、実質56度か58度の“二択”と言っていいだろう(ちなみにロフト54度のサンドウェッジはボールが前に行く推進力が高いため、意外と使い勝手がいい。ただ、あまり一般的ではない)。

画像: サンドウェッジのロフトは56度、もしくは58度が主流(撮影/小林司)

サンドウェッジのロフトは56度、もしくは58度が主流(撮影/小林司)

では56度か58度、どちらを選ぶべきかだが、現時点では58度のほうがややポピュラー。以前みんなのゴルフダイジェストでアンケートを行なった際は、全体の42%が58度、39%が56度という回答で残りは「よくわかっていない」「その他」と回答した。微差ではあるが、印象としては58度を使っている人のほうが間違いなく多く感じる。

というわけで、おすすめは58度……というわけでは実はない。たったロフト2度の違いだが、この2度は大違い。同じモデルの56度と58度を比べた場合、ほとんどのゴルファーが明らかな使い勝手の違いを感じるはずだ。

58度ウェッジは、56度に比べてロフト角度が寝ているわけだから、当然のごとくスピンがかかりやすく、ボールも上がりやすい。それは=飛ばないということでもあり、左にいきやすいということでもあり、ロフトが多い分ボールの下をくぐりやすいということでもある。

バンカーなどで自分でボールを飛ばすことができ、左にいったり下をくぐらないようにクラブをコントロールできる人には58度は非常に強い武器になる一方、アマチュアにはときに58度ウェッジは意外と難しい、ミスを誘発するクラブにもなりかねないのだ。56度と58度、どちらがいいという明確な答えはないが、58度でミスが出る人は、一度56度ロフトを試してみると、意外な発見があるかもしれない。もちろん、54度でも問題ない。

ついでにアプローチウェッジのロフト角度の選び方についても記すと、前述したアイアンセットからのロフトの流れに沿ったロフトを選ぶのが基本だが、中上級者のなかにはアプローチウェッジを「100ヤードを打つクラブ」と定義し、100ヤードぴったりを打てるロフトを選んだりもする。人によってそれは52度だったり50度だったりマチマチだが、“100ちょうど”を打てるクラブがセッティングのなかに1本あると重宝するのは事実だ(もちろん、PWで“100ちょうど”ならば、アプローチウェッジにそれを求める必要はない)。

ちなみに、アンケート調査の結果では100ヤードちょうどを打つ番手としては「セットのPW」という回答が全体の25%でもっとも多く、52度、50度が22%で続き、その3つで全体の約7割を占めた。
まとめよう。最近では、アイアンセットのウェッジのPWは43度前後が一般的になってきた。仮に43度だとすれば、その下が52度だとちょっぴりロフト差が気になる。なので、46〜48度のウェッジを1本追加。その下に50〜52度のアプローチウェッジを1本入れ、56〜58度のサンドウェッジにつなげる。これが基本のウェッジを使い分ける選び方となるだろう。

もちろんそれは絶対にそうすべきということではない。アプローチウェッジでの距離の打ち分けに問題がなければ、46〜48度ウェッジは入れずにユーティリティを入れるなど“上を厚くする”選択肢もあるだろう。

一方、昨今流行りの超飛び系アイアンを使っている場合、PWのロフト角度は39度くらいになる。となると、その下には3〜4本のウェッジを入れる必要がある。3本はマストといえる。39度、46度、52度、56度といったイメージだ。そのようなモデルの場合、たいていPWの下にもういくつかロフト違いの寝た番手が設定されているケースが多いので、そちらを組み込んで使い分けるのもおすすめだ。

ドライバーのように最新の素材が使われたり最先端のテクノロジーが注入されたりはあまりされないかもしれないが、このようにウェッジ選びは意外と奥が深く、ああでもないこうでもないと凝りだすと楽しくなって止まらないもの。しかもスコアメークにも直結するので、なおさら探求しがいがある。

実は底が知れない“ウェッジ沼”に、あなたもハマってみてはいかがか。
以下の各記事でウェッジの種類ごとに紹介しているのでぜひご覧ください。

アプローチウェッジとは?詳しく解説

サンドウェッジとは?詳しく解説

ロブウェッジとは?詳しくはこちら

This article is a sponsored article by
''.