性格がガラリと違う、兄弟モデル
日米共同開発のT//WORLD TR20のドライバーは、440ccと小ぶりな「440」、460ccと大型の「460」という2モデルがラインナップ。中村は見た目の違いをこう分析した。
「『440』はディープバックで『460』はほどよいシャローバックと、兄弟モデルでも“性格”がガラッと違うことがわかります。それが構えたときの印象にもつながっていて、引き締まった顔つきの『440』は力強い弾道とコントロールしやすさが、投影面積が大きめで安心感がある『460』はストレートな高弾道がイメージできます。『440』は『460』を“ただ小さくしただけ”じゃありません。顔つきや特性の棲み分けができているんです」(以下、中村)
それでは実際はどうなのか。弾道測定器「トラックマン」で計測しながら「440」をテストした。
「今となってはクラシカルな雰囲気で、見るからに叩きたくなる『440』はイメージ通りの重い球で飛びます。インパクトでボールをグッと押して、スピンが増えずに打球が“上”じゃなくて“前”へ突っ込んでいく。球が吹き上がらないので思い切って叩けるし、向かい風に煽られない棒球ですね。ディープなヘッドだからフェースの上目(有効打点エリア)で球を捉えやすくて、風があってもスピンを抑えてライナー気味に飛ばせるんです」
さらに「440」は、フィーリング面も満足させてくれるという。
「インパクトでボールを潰してから弾くような打感がします。そういう球持ちのいいフィーリングと小回りが利くヘッドだからこそ、コースや風向きなどによってドロー・フェードや球の高さを打ち分けたり、スピン量をコントロールしやすいんです」
従来までは、大型ヘッドと小顔ヘッドの“兄弟モデル”というと、小顔ヘッドのほうは「ハードヒッター限定」「球を操る人向け」という位置づけにあり、アベレージゴルファーには手ごわくて使いこなせないモノが多かった。でも「TR20」のドライバーはそうじゃない。
「小ぶりな『440』もやさしくて、球を上げてくれるしほどよい弾き感もあります。シャフトやスペックを合わせれば大型ヘッドが苦手な一般アマチュアには激しくおススメします」
【弾道データ】[TR20 440(ドライバー)]※計測データは5球の平均値
ヘッドスピード:44.7m/s
ボール初速:66.3m/s
打ち出し角:12.8度
スピン量: 2465rpm
飛距離:261.9Y
続いて「460」を打つと、出球が高く上がって大きな放物線を描く“ビッグキャリー”を連発した。
「慣性モーメントの大きさ=スウィートエリアの広さや直進性の高さを感じるヘッドのデザインですね。打つと弾き感があって初速が出ているし、ボールが直線的に伸びていきます。インパクトのエネルギーがすべてボールに伝わっている感触。芯で捉えるとやわらかい打ち応えですが、打点がバラついても初速が落ちないし曲がりが抑えられます。シャローなヘッドで、球が上がりやすいですね」
【弾道データ】[TR20 460(ドライバー)※計測データは5球の平均値
ヘッドスピード:44.9m/s
ボール初速:66.8m/s
打ち出し角:13.6度
スピン量: 2259rpm
飛距離:263.1Y
ジャパンメイドならではのキメ細やかで血の通った作り込み
「440」「460」ともに、それぞれのヘッド特性を生かした“飛び弾道”が出た「TR20」のドライバー。その飛びを生み出したのは、ゴルフの最先端を行くアメリカの研究チームが構想したアイディアを、本間ゴルフの生産拠点・酒田工場が誇る熟練の職人たちがカタチにした、先進的なクラブ作りにある。
それが、ヘッドの骨格=フレームを最小限にして、カーボンの含有率を約60%(TR20 460表面積)まで多くした、大胆なコンポジット構造だ。インパクトではカーボンを用いたクラウンとソールの両方がたわんで、ヘッド全体の反発力=初速をUP。と同時に、クラウンがよりたわむことでギア効果が生じて、高打ち出し&低スピンの弾道を打ち出す。
フェースの裏側は“タテ型スリット”を施して、反発エリアを広げた。フェースの上下に打点をずらしてスピン量をコントロールしながら、反発力=初速がキープできる仕掛けだ。
ただし「TR20」のドライバーは、決して“テクノロジー偏重”のマシン的なギアではなく、ジャパンメイドならではのキメ細やかで血の通った作り込みがあるところが魅力だという。
「今までのカーボンコンポジットヘッドは、こもったような打球音や“空洞感”のある手ごたえがしがちでした。でも『TR20』のドライバーは、マイルドなフィーリングや球を乗せて運ぶような打ち味をしっかりと残しています。そして、スムーズな曲線で“途切れ感”がない洗練されたシルエット、フェースの見え方の美しさなど、本間ゴルフの伝統的なモノ作りのクオリティやスピリットが受け継がれています」
本間ゴルフというと、ヘッドだけでなくシャフトを自社で開発していることも、他社にはないアドバンテージ。だからこそ、より幅広いゴルファーが「TR20」のメリットを享受できるし、他にはない“自分だけのクラブ”として愛用できるという。
「『440』『460』のうち好みのヘッドを選んだら、そのヘッドにマッチするオリジナルシャフト(VIZARD TR20)はもちろん、その人のスウィングタイプやタイミングの取り方に合うカスタムシャフト(VIZARD FD/VIZARD FP)を選んで標準装着ができます。
しかも『TR20』のドライバーは、ソールの3ヵ所に配したウェートを入れ替えて、重心=弾道をコントロールできるようになっている(高弾道・つかまり弾道・低スピン弾道)。ネックのスリーブで、シャフトを抜き差ししたり回したりしないまま、ライ角やロフト角、フェースアングルをいじれます。そういった意味でも、自分だけのクラブに簡単にチューンしやすいんです」
ゴルファーそれぞれの技量や求めていること、その日のコースやコンディションなどに応じて、最も効率よく飛ばせるスペックや弾道にカスタマイズできる利点や楽しみ方があるということ。グローバルなインスピレーションと日本の技術力がコラボした“新生・本間”のドライバーが「TR20」なのだ。
軟鉄鍛造キャビティの「V」と鍛造ポケットキャビティの「P」
続いて「TR20」のアイアンをテストしていこう。ラインナップは軟鉄鍛造キャビティの「V」と鍛造ポケットキャビティの「P」だ。どちらも7Iをフェアウェイから試打した。
見た目がシンプルでオーソドックスな「V」。7Iで32度とロフト設定もクラシカルに近い。
「ヘッドがコンパクトだし、スコアラインがヒール寄りでホーゼルが太めなので、今どきアイアンの中では重心距離が短めでしょう。球を左右に曲げたり、上から打ち込んでスピンをかけたり、低めにラインを出したり、やりたいことが自由自在。打った感じそのままの球が飛ぶから安心です。それでいてトップラインにやや厚みがあるし、やさしさも味つけされています」
スマートな見た目の通り、マッスルバックを彷彿とさせるぶ厚いフィーリングだという。
「ダイレクトな打感だからこそ、硬めのボールなら硬め、軟らかいボールなら喰いつくような“ボールなりの手ごたえ”に。フェースのどこに当たったかが伝わるので、ミスヒットをしたらその原因をフィードバックして次のショットに生かせます。このアイアンでミスをしたら、クラブのせいではなく自分のせいということですね(笑)」
芝の上にあるボールに対して、ダウンブローに打ち込んでコンタクトするアイアンだからこそ、ソールの形状や作りはデリケートなものが求められる。
「ソールがターフを滑るように、深く潜らずスムーズに抜けていきます。ターフ跡が“長く・浅く”ついているのがその証。ソールのトレーリングエッジ側をうっすら落とすなど、絶妙な工夫がありますね。ソールの抜けが悪くて突っかかるとヘッドがブレるし、球離れが早くなってスピンがかかりづらくなるもの。このアイアンはそういうことがなくて、方向性もスピン量もしっかりと確保できます」
【弾道データ】[TR20 V(7番アイアン)※計測データは5球の平均値
ヘッドスピード:37.9m/s
ボール初速:53.6m/s
打ち出し角:16.5度
スピン量: 6095rpm
飛距離:163.4Y
「V」の“兄弟モデル”となるポケットキャビティこと「P」は、7Iのロフトが30度とややストロングだ。
「よくあるポケキャビのアイアンと違って顔が小づくりだし、構えたときにバックフェースが膨らんで見えません。しかも、飛び系アイアンにありがちなシャロー形状ではなく、フェースの高さが程よくある。この見た目なら、抵抗なく“7I”として構えて打てますね」
球を打つと「V」に比べれば、やや弾きのある打球音で初速が上がり、飛距離も出た。
「ドライバーのHSが40~42m/sくらいの人が、7Iで150~160ヤードを飛ばせるアイアンですね。それでも打感がカチンと硬くはないので、違和感はありません。地べたからのショットでフェースの“下っ面”に当たっても、ボールを拾ってくれてキャリーが出せます。純正カーボンシャフト(VIZARD TR20)がキックすることもあって、ロフトが立ち気味でも球が上がりやすいし、グリーンへの降下角がついて止まる。飛距離のメリットはあってもデメリットはほとんど感じません」
この「P」は、高反発素材をL字カップフェース構造にして、高初速エリアが広がった。とりわけ、悪いライコンディションでトップ気味に薄く当たっても、飛距離のロスが抑えられる。また、キャビティ下部のトウ側にタングステンウェートをインサートして、重心が“長め・深め”に。打ち出しが高くてブレにくいヘッドになった。
【弾道データ】[TR20 P(7番アイアン)※計測データは5球の平均値
ヘッドスピード:38.2m/s
ボール初速:54.7m/s
打ち出し角:15.6度
スピン量: 5434rpm
飛距離:170.6Y
1本1本の完成度が高い。それが本間クラブの「TR20」シリーズだ
「もしかしたら、本間のクラブを使うならフルセットでそろえなきゃいけない、というイメージがあるかもしれません。しかし『TR20』シリーズは、いま使っているセットの中に“ドライバーだけ”“アイアンだけ”を入れたとしても、高いパフォーマンスを発揮してくれる。それだけ1本1本の完成度が高いクラブと言えます」
なお、今シーズンから『TR20』シリーズを使って女子ツアーに参戦予定のイ・ボミが好むピンクを採用した限定モデル『LEE BO-MEE Limited Edition オリジナルデザイン』モデルも発売されている。
憧れのプロが使うモノを、われわれ一般アマチュアも使える「TR20」シリーズ。プロ気分に浸ってゴルフができるなんて……このクラブ、かなりエモいぞ!!